「野々村人事部長の歳時記」

「降格人事」で見透かされる
上司・人事部・経営者の本音

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2007年8月20日(月)

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 8月は、年中行事のようになってきた人の採用以外は、人事部の仕事も比較的落ち着いた時期と言われている。もっとも、人事制度の見直しなど制度面で問題を抱えている企業は別。多くの企業が成果主義を導入してからは、人事制度で起きた問題解決のために、頭を悩ますのがこの暑い季節だ。

 日本企業では、成果主義と併せて、降格制度の導入が進んでいる。

 労務行政研究所の調査「昇進・昇格・降格に関する実態調査」(2005年9月実施)によると、「降格」を制度化している会社は調査対象企業全体の6割に達しており、実際に降格を行っている会社は約4割。調査企業全体の6割以上が、降格制度と成果主義を同時期に導入しており、それは2000年から2004年に集中している。降格制度導入の狙いは、成果主義の徹底にあるようだ。

 ちなみに、ここでいう降格とは、個人の業績や能力の落ち込みを理由として「降職」(役職の低下)、「降格」(職能資格制度による資格の低下)、「降級」(職務等級制度や役割等級制度におけるグレードの低下)のすべてを含んでいる。成果主義制度の運用で問題が出ている中、降格制度について、実際うまくいっているのか?」考えてみよう。

野々村人事部長

野々村人事部長

 日本企業の人事部門の代弁者、野々村さん。彼が勤めるマルコーでは、2000年に大黒社長が就任し、停滞気味の組織風土一新のため、成果主義の評価制度を取り入れた。

 しかし、結果数値の個人業績だけが重んじられ、社員からの評判はすこぶる悪いのが実態だ。最近になって、組織体制の変更に合わせて、人事制度の見直しも検討した結果、来春には業績だけでなく能力、コンピテンシー(業績が優秀な人の行動特性)も加味した評価制度に変える予定だ。複数の判断基準を設けて、画一的な評価になることを防ぐのが狙いだ。

 先日、組織風土改革プロジェクトの中間報告の席上で、大黒社長から、「評価を見ると、とくに管理職で、職務上の役割に業績や能力が見合わないケースが目立っているね。成長意欲が低い人が管理職に留まり、意欲のある若手にも影響が出てるんじゃないかな」という指摘があった。野々村さんも最近同じような印象をもっているところだった。組織の新陳代謝を促すために、降格制度を含め、仕組みを考える時期がきているのかもしれない。

 しかし、降格は社員のやる気を削ぐおそれもあるので、慎重に考えなければいけない。野々村さんは、他社の事例を調べてみることにした。

導入のねらいは役割と成果の格差是正

 前出の調査では、降格制度採用の目的で最も多いのが、「職務・資格と成果の格差を是正して、納得性のある処遇を実現する」ことだ。その他に、多いのは以下のとおりだ。

・人事考課の納得性・公平性をより高める
・従業員に、仕事に対する責任をより自覚させる
・従業員に、業務に対する緊張感を持たせる

降格者のモチベーション低下が表面化

 一方、導入後の問題点として最も多いのは、野々村さんが危惧したとおり、「降格者のモチベーションの低下」だ。モチベーション低下以外にも、いろいろ問題が指摘されている。
・降格者のモチベーション低下が、職場の同僚や部下へも悪影響を及ぼす
・降格させた後の配置が難しい
・降格者と上司の関係が悪化する
・降格を避けるために、評価が歪む
・評価者の判断基準や判断材料がまちまちなので、評価の信頼性が低い
・減点評価を恐れて、従業員がチャレンジしなくなる

 予想したとおり、降格制度は組織に悪影響も与えるようだ。「降格制度は、はたして導入する意味があるのかな」と、不安を感じている野々村さんである。

降格を見せしめに使うのはダメ

 野々村さんは、もう少し生の声を聞こうと、以前人事の集まりで降格制度を導入していると言っていた情報システム会社の山田人事部長に会うことにした。

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著者プロフィール

野々村人事部長

野々村人事部長

年齢は48歳。
大学卒業後、電機メーカーに入社。営業の仕事に従事し、10年目に人事部へ異動。採用から研修、人事考課の取りまとめまで、3年でひととおり人事の実務を経験した。人事部在籍4年目の人事課主任の時に、中堅の半導体用機械メーカーに転職し、採用マネジャー、教育研修マネジャー、人事課長と、人事畑で着実に経験を積む。人事部部長代理になって2年目の43歳の秋、大学時代のラクビー部の先輩で、中堅の流通チェーン・マルコーの2代目社長・大黒氏から乞われて、人事部長に。現在は、同社で人事・教育全般の統括と、組織風土改革プロジェクトの事務局長を務めている。

永禮 弘之(ながれ ひろゆき)

永禮 弘之

株式会社エレクセ・パートナーズ代表取締役
これまで、化学会社の経営企画、外資系コンサルティング会社のコンサルタント、衛星放送会社の経営企画部長・事業開発部長、組織変革コンサルティング会社の取締役などを経て現在に至る。建設、化学、医薬品、食品、自動車、電機、情報通信、小売、外食、ホテル、教育出版、文具など幅広い業界の企業に対して、7000人以上の経営幹部、若手リーダーの育成を支援。ASTD(アメリカに本部がある、世界最大の人材開発・組織開発の非営利団体)日本支部理事、リーダーシップ開発委員会委員長。

著書・雑誌寄稿:『強い会社は社員が偉い』日経BP社、『問題発見力と解決力』日経ビジネス人文庫(共著)、『グループ経営の実際』日本経済新聞社(共著)、『日経ビジネスオンライン』連載「野々村人事部長の歳時記」、『日経ビジネスアソシエ』連載「MBA講座」、最近の著書に『強い会社は社員が偉い 社員様第一経営のススメ』(NB Online book)がある。

 

瀬川 明秀(せがわ・あきひで)

日経ビジネス副編集長。日経BPビジョナリー経営研究所 研究員。




このコラムについて

野々村人事部長の歳時記

昨今、日本企業に取り入れられている人材育成や人事の仕組みや考え方について、研修やコンサルティングをする中で、我々が聞いてきた疑問の声を取り上げながら、人事のあるべき姿について皆さんと考えていく。

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