──1995年のバブルが崩壊して就職難になったあたりからここ十数年、「若い男子がどうもイケてないんじゃないか」という話をよく耳にするようになりました。それも、企業の人事の方、あるいは男子を部下に持つ上司の方、同世代の女性など年代性別問わず。これはどういう現象かとずっと疑問に思っていたときに、深澤真紀さんから、「それは男子がダメになったのではなく、今の男子はキャラクターも働き方も考え方も前の世代の男の人とまったく違っているから」という話を伺いました。
その「男子」──25歳から35歳ぐらいのいわゆる団塊ジュニアと言われている人たち──の正体をきっちり取材をしながらコラムの形で解き明かしていこうじゃないかという形で、当サイトで連載を始め、単行本にまとめました。
本日から3回にわたって、『平成男子図鑑』の著者で編集者でコラムニストの深澤真紀さん(タクト・プランニング社長)と、『だめんず・うぉ〜か〜』の著者で「くらたま」の愛称でもお馴染みの漫画家・倉田真由美さんに「男子とおやじを語る」というタイトルでお話しいただきます。
「男子」の弁護者であり、日本でおそらく一番男子について詳しい深澤さんと、『だめんず・うぉ〜か〜』で同じ男子を別の角度から、こちらも多数取材されている倉田さんですが、男子、おやじ、女子、そしてそれぞれのお考えを展開していただきましょう。
(日経BP社出版局:柳瀬 博一 構成:橋中 佐和)
「男子」を面白がって見るには
深澤 『平成男子図鑑』が出たとき、倉田さんに本を送ったら、「こういう男子いる。でも、私はこういう男子は苦手」というメールがきて。以前から倉田さんはおやじが好きで、私はおやじが嫌い、という話でよく盛り上がっていましたよね。
改めて伺いますが、倉田さんから見て「男子」ってどうですか。25歳から35歳ぐらいのいわゆる団塊ジュニア。セックスが嫌いで、おやじが嫌いで、物事にこだわらなくて、家族が大好きで、自分が大好きというのが、私が書いた『平成男子』の姿なんですが。

倉田真由美氏
倉田 もともと、自分の小さい世界の中で満足しちゃってる男の人ってすごく嫌いですね。さらに、『だめんず・うぉ〜か〜』でいろいろ取材をするようになってから嫌いになったこともいくつかあって。例えば、夢を追う男が好きじゃなくなった。
深澤 それは、好きじゃない方が正しいと思う(笑)。
倉田 でも女の人って、「夢がある男って素敵!」って思いがちじゃない? 私は逆に「俺には夢があるんだ」って言われた時点で鳥肌が立つ感じなんです。あとは、「俺(自身)が好き」とか、「家族が好き」とか、「友達が言うことを何でも信じる」とかもダメ。
深澤 「あいつが何をやっても俺だけは信じる」みたいな、底の浅い信頼関係ですね。
倉田 そういう人に対する嫌悪感がすごく強くなっちゃった。アレルギーって食べ過ぎると出るでしょ?
深澤 倉田さんは「だめんず」を食べ過ぎです(笑)。
私は編集者として、倉田さんとも何冊か一緒に本を作ったりしてますが、女性作家専門というか“女屋”だったんです。むしろ男性は苦手な分野で、男子をテーマにした本を書くことになるとは思ってもいませんでした。
男子についてちょっと面白いなと思ったきっかけは、もう6年前のこと。中村うさぎさんと倉田さんと私の3人で、日本中のホストクラブを回ったときですね。
倉田 つらかったね、あれ。
深澤 つらかった。あれを思えばどんな仕事も耐えられる(笑)。だいたい3時に新宿集合なんですよ。
倉田 「夜中の3時」ですよ。
深澤 そう。深夜3時に歌舞伎町の、発砲事件があったりしたパリジェンヌという喫茶店で打ち合わせしてから匿名取材するんです。当時はうさぎさんも倉田さんも、まだあまり顔が知られてなかったですからね。
それで一応、設定を決めるんですよ。「今日は有閑マダム3人ってことにしましょう」とか。「うさぎさんはお金を持ってて、倉田さんはお金を持ってない設定です」みたいな。
ホストクラブは水商売の女の子が仕事終わりで来るので、5時、6時からようやく客が入ってくるんですが、私たちが4時ぐらい、まだ客がまばらな時間帯に行くでしょ。すると新人のホストがやってきて、「血液型何なの?」「犬と猫どっちが好き?」「ジャニーズだったら誰が好き?」とか、つまらない会話を始めるの。倉田さんは全然話を聞かずに、ずっと食べ物のメニューを見たりしてましたけど。
倉田 ホストクラブって、銀座のクラブと同じで食べ物が高いんですよね。
深澤 そう。ピラフが3000円とかなのに、倉田さんはお腹が空いたって、「ピラフとサンドイッチと唐揚げくださ〜い」って1万円ぐらい食べちゃうんです。しかも「ここの店は珍しくおいしい。ちょっとシェフを呼んでください」とか言って(笑)。
そんなふうにして1年近く、北はすすきのから、南は那覇。途中、名古屋、大阪、福岡、東京近郊も千葉、川崎……何十店と、とにかくすごい数のホストクラブに行ったんです。
倉田 もう思い出せないぐらい。
深澤 ホステスなら銀座がNO.1が当たり前ですし、ホストは歌舞伎町なんです。ところが、千葉や名古屋みたいな地方都市に行くとほぼ100%、「マジでうちの代表はカリスマホストだから〜」と自慢するホストがすごく多かった。すごいしょぼい店なんですよ? で、案の定、ますますしょぼいカリスマが「どうも、西川口のカリスマです」って登場する。
最初、「カリスマ」と言ってるのは営業トークだと思っていたけれど、彼らはすごい純粋で、心の底から「西川口のうちの代表」が世界一のホストだと思っているって気づいたんです。
倉田 そうそう。
深澤 私がイメージする地方のホスト像は「東京には負けませんよ」とか「いつかは歌舞伎町に店を持ちたい」とか、そういう感じだったんです。でも、彼らは「歌舞伎町、行ってみてぇ〜」と憧れているし、「流星さん(有名なホスト)会ったことあるの?! すげえ」とは言うんだけれど、「東京を倒したい」「東京で一旗揚げたい」という野心がない。私はでも、こういう肯定感って悪くないなと、そのときある意味で感動したんです。
それから、今の男の子たちって面白い!と興味を持つようになって、ITベンチャーの若い社長とか、ジャニーズ事務所のタレントのブログを見ていくうちに、どうも団塊ジュニア世代には今までにいないタイプの男子が増えてきてるな、と気づき始めたんです。
だから、男子を弁護しようというより、彼らの生態は客観的に面白いんじゃないか?と思ったのが、「平成男子」についてリサーチを始めたきっかけのひとつでした。
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