前回に引き続き、経済産業研究所に勤める山田正人さんの事例を基に、男性の育児参加について考えていきたい。
キャリア官僚の男性として初めて育児休業を取得した山田さんだが、その事例は、ある意味で特殊だったと言えよう。山田さん自身、「自分は恵まれていたのかもしれない」と語っている。理由は、山田さん夫妻の勤務先が同じだったことだ。職場にとっては、どちらも身内のようなもの。お互いの上司から、夫妻の状況が見通せたことで、理解が得られやすかったことは事実だ。
しかし、夫婦の勤務先が違う場合は事情が異なってくる。実際、育児休業を取得した男性の多くは、主に職場の上司や同僚から「自分たちは(妻の職場に比べて)軽く見られているのではないか。それでいいのか」といった不満を漏らされたという。
こうした、会社への忠誠心を問われるかのようなプレッシャーに打ち勝つことは難しい。育休制度が整い、3人に1人は育児休業を取得したいと思う男性がいると言われているにもかかわらず、実際の取得者数が増えずにいるのは、こうした背景もあるからだろう。
しかしこうした考え方は、裏を返せば「育児」を軽んじると同時に、「“そんなこと”は女性に任せておけばいい」というおごりの心情を感じさせ、女性からの反発を生むだけだ。
「育児は女性のもの」「働き手としては、男性の方が上のはず」という思いにとらわれている限り、少子化・女性活用の遅れといった、現代社会が抱える問題の解決は遠のくばかりだろう。
育児休業がもたらした好影響
「男性でも、育児は全く問題なくできます」。“育児は母親にしかできないのか”という疑問に、山田さんは自ら体験することで答えを見つけた。さらに「育休取得は仕事にマイナスだと思われていますが、少なくとも自分にとっては、多くのことがプラスに働いたと思っています」と断言する。
その一例が、視線の変化だ。仕事を離れた育休期間に“生活者”として過ごしたことで、消費者の視点を身につけ、自分の仕事を客観視・相対視できるようになったメリットは大きい、と山田さんは言う。
「例えば、自分は行政の人間ですが、サービスを受ける側になって、行政サービスのあり方を改めて考えさせられました。こうした視点は、机に張りついて仕事をしているだけでは決して持てないし、気づかなかったと思います」
さらに、部下に対する見方も大きく変わったという。それまでの山田さんは、結果しか見えず「100点を取ることが大事、それまで頑張れ」と努力を強要する上司だった。しかし、育休を通じて「何もできなかった子供が、小さなことを一つひとつできるようになっていく過程」を目の当たりにし、成長を見守る喜びを知った。
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