「20代半ば〜30代の“即戦力となる人材”は、採用したくても採れない。知名度の低い中堅・中小企業では転職者に求人をかけても応募が少ないし、“この人”と思う人材は、他社に取られてしまう。中小企業にとっては、“就職氷河期”ならぬ“採用氷河期”ですね」
企業の採用担当者がこう言いながら天を仰ぐほど、転職者にとってチャンスが広がっていたのは、今からわずか1年前のこと。はるか昔のバブル期のことではない。
「日経WOMAN」で転職特集を掲載した1年前は、女性に人気の高い銀行や保険、証券など金融各社が個人向けサービスの強化に力を入れていた時期。各社は窓口販売の要員を中心に競うように採用し、金融業界未経験者にも転職のチャンスは広がっていた。
転職者にとっては「売り手市場」だった1年前
当時の取材メモには、転職エージェント担当者の「これまで大手銀行は、銀行業界以外からの転職者には門戸が狭かったが、最近では業界以外からの採用に意欲的。未経験で銀行志望の人には、千載一遇のチャンスだ」とのコメントが記されている。金融以外の業界でも、積極的な採用を実施していた企業が目立った。
また激しい人材争奪戦の中で、優秀な派遣スタッフが、正社員採用するという他社に流れるケースが続出。現場の貴重な戦力流出を防ぐため、パートや派遣社員を正社員に転換する制度を導入する企業も相次いだ。
もともと、バブル崩壊後の1990年代半ば〜2000年代前半に新卒採用を手控えた企業では、20代半ば〜30代前半の世代の人材が不足していた。業績も比較的順調な時期に、この層を採用したいという企業は業界を問わず多く、その結果2006〜2007年にかけて「転職バブル」とも言うべき現象が起こっていた。
新卒時に就職氷河期で不本意な就職活動を余儀なくされた、25〜34歳くらいの「日経WOMAN」読者世代にとっては、かつて憧れていた業界や仕事に再度チャレンジする「リベンジ転職」のチャンスでもあった。
それが1年経って、2008年の転職市場の動きは劇的に変わってしまった。20〜30代の女性を積極的に採用してきた金融機関を、サブプライムローン(米国の信用力の低い個人向け住宅融資)問題が直撃。さらに原油高などの影響で企業の業績は悪化。転職者をあれほど積極的に採用していたのが、ウソのような変化だ。
とはいえ、求人がなくなったわけではない。比較的人件費が安く、職業意識が明確で即戦力となる、社会人経験3〜10年目程度の20代半ば〜30代前半の層は、依然として企業の採用ターゲットとなっている。変わったのは、採用選考のハードルの高さだ。
大手転職エージェント担当者は、「昨年まで企業ではまず人数を確保することを最優先しており、採否のボーダーライン上にいる人は採用するというところが多かった。しかし今年に入ってからは、ボーダーライン上の人は採らないという傾向が強まっています」と言う。
こと中途採用に関しては企業はポテンシャルに着目、お金と時間をかけて才能を開花させるという余裕はない。その結果、これまで以上に実務スキルとキャリアが重視される傾向が強まっている。
「日経WOMAN」の読者アンケートによれば、「転職するなら職種を変えたいか?」という問いに56%がイエスと回答。WOMAN読者世代女性のキャリアチェンジ願望は高い。しかし、未経験の仕事への転職は非常に難しい。未経験者はもちろん、経験者といえども転職のハードルは極めて高い。「とにかく転職」では、“天職”に出会ってハッピーになれる可能性は非常に低い。
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