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ダイバーシティーマネジメントに取り組む女たち

【38】第一生命

一般職の女性が部長に
「孫誕生休暇」など独自の支援制度も


 第一生命保険相互会社(以下、第一生命)では、「職員が個性と能力を発揮できる活力と魅力ある会社」を目指して、2003年から全社員を対象とした「職員満足度(ES)調査」を実施している。これは職場風土や労働環境、仕事などに対する満足度を調査するものだが、2005年のES調査では、総体的に前年を下回る結果になった。

 第一生命人事部ダイバーシティ推進室室長の吉田久子さんは、こう話す。「その中でも大きな課題の1つだったのが、女性職員の活躍推進でした。この課題に取り組むために、2005年7月、人事部内にダイバーシティ推進室の前身となる『イコールパートナーシップ推進室』を設置しました」。室長には、当時人事部課長だった吉田さんが就任した。

仕事と家庭の両立支援制度の拡充に取り組む

第一生命保険相互会社人事部ダイバーシティ推進室室長の吉田久子さん

第一生命保険相互会社人事部ダイバーシティ推進室室長の吉田久子さん(写真:山田 愼二、以下同)

 最初に取り組んだのは、仕事と家庭の両立支援制度の拡充だった。「従来から当社には、法定基準を上回る両立支援制度はありました。しかし、入社9年目の女性一般職の離職率が5割に達したことが分かったのです。入社9年目は、結婚や出産などのライフイベントを迎える時期と重なります」と吉田さんは言う。そこで、両立支援制度のさらなる拡充を検討することになった。

 次世代育成支援対策法に基づく認定を受けている、いわゆる「ファミリー・フレンドリー企業」における支援策のベンチマーキングのほか、育児中の女性社員20人からなるワーキンググループを立ち上げ、ヒアリングも実施。それらの結果を踏まえて、2006年10月に両立支援制度の大幅改定を行った。

 「ワーキンググループでのヒアリングでは、職場復帰してからの支援を望む声が多く聞かれました。中でも特に要望が高かったのが、短時間勤務制度と保育園など育児サービスの経費補助でした」と吉田さんは言う。

 第一生命では、女性一般職の3分の1が「支部内勤」という職種に就いている。支部内勤の女性社員は、営業担当者が顧客先に向かう朝と帰社した夕方に書類の準備や処理などの業務を行うため、短時間勤務制度の導入は難しいとされていた。だが、ローテーションを設けたり人員の補充を行うなどで短時間勤務制度導入を実現させることができた。

 育児サービス経費補助については、それまでにも割引クーポンを発行していたが、使える施設が限られていた。そこで、子供が満3歳になった最初の3月末日まで、各自が利用した育児サービスにかかった費用の30%(子供1人につき月額2万円を上限)を補助するように改めた。

 このほか、第一生命独自の支援制度「孫誕生休暇」も新設された。「当社では、子育てを終えてから再就職した40〜50代の女性営業職員が多く活躍しています。そこで、職員に孫が誕生した際(職員の子供またはその配偶者が出産した場合)、公休とは別に3日間の特別休暇を取得できるようにしました。公休2日と土曜・日曜を合わせれば、最長で9日間の休暇になります」。

 孫の誕生を祝うだけでなく、上の子供の面倒を見るといった出産直後の母親のサポートができることから、吉田さんはこの孫誕生休暇を、広義の育児支援と位置づけている。社員からの反響も大きく、導入後2カ月で100人以上の申請があったそうだ。こうした取り組みが評価され、2007年5月には、同社も「ファミリー・フレンドリー企業」に認定された。

 現在、最も注力しているのが女性社員のキャリアアップ・能力開発支援だ。特に、一般職の管理職(課長)登用を見据えた研修体系の整備に重点を置いた。「第一生命では、一般職でも総合職への職種転換をすることなく管理職に登用されます。しかし一般職を対象とした研修の機会が少なかったこともあり、能力はあっても、管理職になることに不安を持つ人も多くいました。そこで、2006年に『一般職リーダー養成塾』、2007年には『女性キャリアアップ講座』『一般職リーダー養成塾』『女性管理職塾』と、一般職のための体系的な能力開発プログラムを構築しました」と吉田さんは話す。

 「一般職リーダー養成塾」では、アシタントマネジャークラスから人事部が選抜した女性職員を対象に、管理職登用を視野に入れたキャリアアップ意識を醸成し、リーダーシップ、コミュニケーション力、マネジメントスキルなど総合的な能力を高める。また「女性キャリアアップ講座」では、所属長の推薦があったアシスタントマネジャーと業務主任クラスの女性社員を対象に、職場のリーダーとしての意識の醸成を図る。

 「女性管理職塾」は、一般職・総合職のすべての女性管理職を対象に、女性の活躍推進が経営課題であることを認識すると同時に、女性の活躍推進を考える場としての役割も果たしているという。

一般職だからこそ、指導できることがあるはず

 2008年4月には、ダイバーシティーの取り組みをさらに強化し、多様な「人財」が個性と能力を発揮できる会社作りを推進するため、「イコール・パートナーシップ推進室」から「ダイバーシティ推進室」に改称した。2008年4月の時点で、経営管理職(部長・支店長)の女性は4人、管理職(課長・営業部長)の女性は142人。全管理職に対する女性管理職の割合は5.6%を超えた。管理職候補となる役職者(支部長・支部長補佐・アシスタントマネジャー・業務主任)では、全役職者に占める女性役職者の割合は6割超と、女性職員の積極的な登用が進んでいる。

 入社以来、一般職のまま役職者、管理職とキャリアを築いてきた渡邉寿美恵さんは、今年4月、FP営業部マネジャーから財産コンサルティング営業室長(部長)に登用された。一般職から経営管理職となったのは、渡邉さんが初めてだ。

第一生命保険相互会社財産コンサルティング営業室部長の渡邉寿美恵さん

第一生命保険相互会社財産コンサルティング営業室部長の渡邉寿美恵さん

 一般職から初めて部長になった心境を、渡邉さんはこう話す。「仕事をしていくうえでは、常に目標を持ち、それをやり遂げてきました。誰にでもキャリアアップや新しいことにチャレンジするチャンスがあると思いますが、私はそのチャンスを逃さずつかんできたと思います。ただ、そこにはいつも支えてくれる人がいました。会社の制度と上司や同僚の支援があったからこそ、今の私があると思っています」。

 さらに渡邉さんは、「よく『女性は視野が狭い』と言われることがありますが、それはこれまで、男性とはそもそものキャリアステップが異なっていたからでしょう。しかし、足りない部分は周囲の協力を得ながら、自分の持ち味を生かしていくことが大切なのではないでしょうか。私はずっと一般職でしたが、だからこそ分かることもあると思いますし、私ならではの指導ができるのでは、と考えています」と気負わすに言う。

 「私は結婚して子育てもしてきましたが、家庭も仕事も自分1人で背負おうとは思いませんでした。男性に負けないように、と肩に力を入れるのではなく、女性であることを生かしてできることをやっていきたい、と思って仕事をしています」。

 今年8月、渡邉さんに続く活躍が期待される「女性管理職塾」(内勤職員)のメンバー95人全員が東京本社に集まり、来年1月の提言に向けてのキックオフミーティングを開催した。今後は10グループ程度に分かれ、女性の活躍をさらに推進する具体的な施策を検討していく。

 「『女性管理職塾』を開始した当初は、女性管理職だけを集めることに、異議を唱える声も聞かれました。しかし、ロールモデル(お手本となる人)として後輩の育成に力を貸してほしいと訴え、理解を求めてきました」と、吉田さんは言う。渡邉さんも、「『女性管理職塾』のメンバーには、経営管理職を目指してほしいと思っています。意識を高く持ち、今の自分の能力を最大限に引き出す努力をする一方で、部下の育成にも力を入れてほしいですね」と期待している。

 第一生命では、2年後の株式会社化に向けて、全社一丸となってダイバーシティを推進していく考えだという。今後は、ダイバーシティーマネジメントに対する社内周知の徹底が、重要な課題となりそうだ。

このコラムについて

ダイバーシティーマネジメントに取り組む女たち

 企業の女性活用推進室などで、ダイバーシティー(多様性)マネジメントに取り組む女性管理職たち。このコラムでは、彼女たちへのインタビューを通じ、活用推進の実態や課題、現場の声などを聞いていく。 女性リーダーのための記事は「NBonline Women at Work」へ。

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著者プロフィール

田村 知子(たむら・ともこ)

田村 知子

1992年、杉野女子(現杉野服飾)大学卒業。出版社勤務を経て、フリーランスエディターになる。現在は「日経ビジネス」で「心と体」欄の企画・編集を担当するほか、主に健康、環境、育児分野の書籍・雑誌制作に携わる。最近の編書は『グッド・ニュース−持続可能な社会はもう始まっている』『セドナ 聖なる大地』(ナチュラルスピリット)。(写真:厚川 千恵子)