わずか7年間で出願者が数十倍に急増した品川女子学院。偏差値も上昇し、今では東京大学への現役合格者も輩出するようになった。大正時代からの歴史を持つ同校は、かつて生徒数の減少に悩まされた時期もあったが、都内有数の人気校へと変貌したのである。
なぜ、学校を再生できたのか。品川女子学院の生徒や教員が、生き生きと明るく、やる気に満ちているのはなぜか。
このコラムでは、創立者の曾孫として学校改革を主導した品川女子学院6代目校長・漆紫穂子(うるし・しほこ)さんに、改革や日々生徒と接する中で学んだ人の育て方、やる気の高め方のヒントについて、実際のエピソードを交えながら語っていただく。※参考記事はこちら
私は、1989年に品川女子学院に国語の教員として着任しました。今はこの学校の6代目校長として仕事をしています。毎日生徒や親御さん、そして学校の教員たちとコミュニケーションをしていくうちに、いくつかのことを学びました。今回はその中でも、大きな3つのことをお話したいと思います。それは、
1)人は変えられない
2)目標は伝わらない
3)人は管理できない
ということです。これを前提に、学校運営をするように心がけています。こう言うと、ちょっと驚かれるかもしれませんね。以下、その理由をお話ししたいと思います。

9月の学園祭前日。台風との予報に、生徒が大きなてるてる坊主をつくった(写真:筆者)
まず、人というのは変えられるものでしょうか? 例えば会社でも、上司にいろいろアドバイスされたり、「やれ」と命令されたりしたからといって部下の行動が変わるかというと、逆に反発してしまうこともありますよね。人は他人を変えたがったり、いつか変わるのではないかと勝手に期待したりしがちです。でも、自分を変えることでさえ難しいのに、人を変えようと思うことは、おこがましいことだと学びました。
品川女子学院では、いろいろな改革を現有勢力でやってきました。学校の中のソフトの部分、つまり人は入れ替わっていないのです。でも、結果的にパフォーマンスが上がってきました。「どう人を変えたのか」とよく質問されるのですが、人を「変えた」わけではないのです。では、その中でどうやって改革をしてきたのか。
それは、「モチベーションのスイッチが入った」ということだと感じています。
同じ人間でも、効率よく動ける時とそうでない時、何かに集中できる時とできない時がありますよね。好きなこと、楽しいことをしている時は一生懸命になれます。つまり、人にはもともとやる気が眠っていて、それぞれに「スイッチが入る瞬間」がある。そういうモチベーションのスイッチが入るような環境を整えていくことが、大切なのだと思っています。
研修だけでは人は変えられない
私自身は、研修が好きなんですよ。様々なセミナーに通ったり、自己啓発の本を読んだりしました。それで、学校でもそのような研修をすれば、みんなにとってもプラスになるのではないかと考えたのです。そこで、一般企業で実施するような研修も積極的に取り入れてみましたが、結果としてはうまくいきませんでした。
研修というのは、義務で参加していると話がなかなか耳に入ってきませんよね。これでは、双方にとって時間がもったいないことになってしまいます。また、研修を受講した直後に「自分が変わった、よかった」と思っても、1週間もたてば気持ちが冷めてしまうこともあります。
「(相手に対して)よかれと思うこと自体がよくない」と指摘してくれた教員もいました。「内発的な動機がない限り、人が変わることはない」ということを痛感しました。
それでは、どうしたらいいか。必要なのは研修ではなく、仕事のうえで「自分が参加した企画が成功した」という体験を積み重ねていくことだと気づきました。
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