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新しいことにチャレンジして、失敗することもある。

「後輩のためにこの失敗を生かしてください」と生徒が言いました

  • 漆 紫穂子

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2008年11月20日(木)

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 前々回にお話ししたように、品川女子学院では「新しいことにチャレンジする」ことを大切に考えています。挑戦には失敗がつきものです。初めてやることで、すべてがうまくいくことはまずありません。しかし、その失敗から私たち教員も生徒たちも多くのことを学んでいます。

 中には、思い出すと心が痛くなることもあります。失敗したことを外に向かって話すなんて、という批判もあるかもしれませんが、本校は「うまくいったこともそうでないこともオープンにする」という姿勢を大切にしているので、お話しします。

 それは文化祭での出来事でした。本校の文化祭「白バラ祭」では数年前から、高等部の生徒が「起業体験プログラム」に取り組んでいるのですが、その初年度に大きな失敗をしてしまったのです。

 起業体験プログラムとは、学園祭の模擬店を1つの会社に見立て、設立から解散までを体験するというものです。生徒が将来社会に出る時のことを視野に置き、「資本主義とは何か」「会社とはどんな仕組みで動いているのか」などを学び、「アントレプレナーシップ」や「チームワーク」を身につけるために、実施しています。

 会社ですから事業計画の作成、登記、決算といったことが必要になります。そのため、司法書士、税理士、公認会計士、弁護士などの専門家、ベンチャーキャピタリスト、企業経営者など実際のビジネスの世界で活躍なさっている方々にご指導いただいています。店舗数をしぼるための企画コンペを実施したり、ベンチャーキャピタリストから投資を引き出すためのプレゼンテーションをしたりと、本格的な内容です。

 起業体験プログラムを導入した初めの年、なぜ失敗してしまったのか。その原因は、情報共有がうまくいっていなかったことにありました。

屋上でのランチタイム(写真:筆者、以下同)

屋上でのランチタイム(写真:筆者、以下同)

 このプログラムのベースは、実際のベンチャーキャピタル会社がボランティアで作成し、運営のサポートもしてくださいます。また、ベンチャーキャピタル役で生徒をサポートしてくれるのは、大学生のボランティアです。初年度は本校の卒業生だけでは間に合わず、他校出身の学生さんにもお願いしました。そこに本校の教員と生徒が加わり、準備をしていきました。

 学校としての初めての取り組みを、初めて出会う方々と一緒にしていく中で、「こんなことまで確認したら失礼なのでは?」「役割分担があるのに、口を出すのは…」などと、相手の善意に対する遠慮が生じた結果、ボタンを掛け違ってしまったのです。

 生徒たちは資本主義の勉強から始め、半年間をかけて一歩一歩このプログラムの趣旨を理解していく予定でした。後で分かったことですが、すでにこの時点から、教える大人側の認識に微妙なずれができていました。その結果、グループによって企業の存在意義や、配当についての受け取り方がバラバラになっていたのです。

 資本主義について強調されたグループの生徒たちは、「儲けが出るのはお客様に喜ばれた証し。仕事をして対価を得ることは貴いこと」「出資してリスクを取る人に対して、より多く配当できるよう頑張らなければいけない」と考えていました。その一方で、企業倫理や社会貢献に重きを置いて話をされたグループには、「儲けに走りすぎるのはよくないから、配当金はすべて寄付に回そう」という生徒も出てきました。

 生徒たちが力を合わせ、一生懸命頑張っている目的が、実はグループごとにそれぞれ異なっているということに私が気づいたのは、プログラム最後の締めくくりとして、株主総会を開催する前日の夜だったのです。

 それから深夜まで担当者と会議をしましたが、対応が決められず、翌朝、全教員で相談しました。すると、さらに様々な立場の意見が集まってきたのです。

コメント6件コメント/レビュー

この失敗の本当の意味での辛させつなさを理解できる人間だけが社会を変革することができます。漆さんに脱帽です。ひるがえって日本の教育現場、特に公教育の現場に、この意味がわかる教員がどれほどいるものやらと考えると、暗澹とした気持ちになります。99%の教師が寄付を当然と考え、配当をなにやら汚いものと扱うのではないでしょうか。配当の意味が理解できない人間には、労働の価値もお金の価値も理解できないのですがね。(2008/11/21)

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この失敗の本当の意味での辛させつなさを理解できる人間だけが社会を変革することができます。漆さんに脱帽です。ひるがえって日本の教育現場、特に公教育の現場に、この意味がわかる教員がどれほどいるものやらと考えると、暗澹とした気持ちになります。99%の教師が寄付を当然と考え、配当をなにやら汚いものと扱うのではないでしょうか。配当の意味が理解できない人間には、労働の価値もお金の価値も理解できないのですがね。(2008/11/21)

教員はおおよそ「失敗」を極端に嫌がります。「失敗を恐れずに」といっている著者さえ「失敗を恐れ」最悪の決断をしています。誰しも「平等」に能力を付与されているわけではありませんし、「平等」に意欲付けされているわけでもありません。結果、果実に不平等が生じます。しかし、教育の現場においてはこの「不平等」を無くそうと悪戦苦闘されます。その信念はよいのですが、善意が必ずよい結果に結びつくわけではありません。仮に「不平等」が解消され「平等」に果実を得たとして、社会はそのような人材にどのような評価を下すのでしょうか。きっと「金太郎飴」などと陰口をたたくでしょう。何が正しいのか、それは生徒が死ぬ前に自らが判断を下すのです。(2008/11/20)

いつも大変楽しく拝読させていただいております。読めば読むほど「日本の未来は大変明るいものになるのではないか」とワクワクしております。このビジネスに結びつけた学園祭は、大学の授業にも使えそうです。私が卒業した大学には1年生の時に基礎クラスのみんなと模擬店を出すという学園祭があります。そこでこの授業は使えるのではないでしょうか?この試みが外にも広がっていくことを切に願っております。(2008/11/20)

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