「コンサルティング会社に入れば経営者になれる、と思っている学生がけっこういます。この考え方を倉重さんはどう思われますか?」
10月1日からスタートした、シグマクシスの2010年度新卒採用活動が本格化するのに伴い、ある学生向け就職媒体の取材を受けた。やってきた編集者は最近の大学生の就職環境を一通り説明してくれた後、冒頭の問いを発した。
最終的には起業したい、あるいは会社の経営者になりたい、それにはまずコンサルティング会社に入社するのが近道だ、と考える学生が多い。これが編集者の見方だった。それに対して私は「根本的に疑問がある」とストレートに答えた。確かに、コンサルタントを経て起業したり、経営者を務めている人は多い。だが、彼ら彼女らが成功しているのはコンサルティング会社で仕事をしたから、とは言い切れないと思うのだ。
経営者に近づくためにまず必要なのは、とにかくビジネスそのものに触れること。つまり、モノやサービスを生み出し、各種の仕組みの上に載せて相手に届け、利益を生み出す、というビジネスの大きな流れに、何らかの形で関わるという経験だ。コンサルティング会社の場合、全く無経験の新卒であっても一通りの教育を受けた後は、先輩コンサルタントとともにお客様のビジネスの現場に入っていける。したがって、経営者になるために必要なビジネスに触れる経験に、若い頃から恵まれると言ってもよいのかもしれない。
これに対し、伝統を持ち、仕事のやり方が確立された大企業に入ると、若い頃は組織の一部の機能を果たすことを求められるので、ビジネスの大局を把握できるまで時間がかかる。場合によっては、定年を迎えてもそこにたどり着けないこともあるだろう。学生たちはこうした違いを見聞きしていて、ビジネスの大きな流れに触れられるコンサルティング会社に期待しているのかもしれない。
だが、ビジネスの全体像に触れる機会に恵まれたからといって経営者に必ずなれるかというと、そんなことはない。経営者になるために、もっと大切なことがあるはずだ。
私が会社を選んだのは「友人の一言」がきっかけ
私なりに考えた「もっと大切なこと」を説明する前に、私の経歴を簡単にご紹介する。40年以上前に日本IBMで営業としてキャリアをスタートしたが、将来の計画を綿密に立てていたわけではない。ただ自分は理系でもないし、モノを作ることが得意ではない、だったらとことん「営業」というものを突き詰めてみたい、と思っていた。自分ではっきり決めていたのは正直、その程度だった。
IBMという企業自体、自分で見つけたわけではなかった。世の中の就職活動のスピードについていけず、なかなか就職先が定まらない私を見て心配した友人が「お前に合っている会社がある。営業職が活躍できるし、成長性もあるみたいだ。試験が来週あるらしいから受けてみたら」と勧めてくれた。これがIBMという会社の存在を知ったきっかけだった。
コンピューターが何たるかなど、世の中のほとんどの人が分からない時代で、私も理解していたわけではなかったが、いろいろ情報を集めてみたら面白そうだったので、とにかく日本IBMの就職窓口を訪ねた。
受付の女性が「あなたは理系ですか」と尋ねた。政治経済学部に在籍していた私は「文系です」と答えた。すると彼女は「それでは試験は1カ月先です」と言う。友人に教えてもらった試験日は理系の学生が受ける日だったのだ。はて、1カ月も先ではちょっと困ったな、と思った私は、思い切って「文系と理系の試験内容は違うのですか」と聞いてみた。彼女はちょっと困惑した顔で「いや、違いませんけれど…」と口ごもる。
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