「倉重英樹のCEO日記「新会社を創る!」」

【17】ネゴシエーションは楽しくないが、コラボレーションは楽しい

一枚の「絵」に描いた新会社のビジョン

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2008年11月28日(金)

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 まず、1枚の絵をご覧になっていただきたい。これは第5回に掲載した手描きの絵と同じ内容である。お客様と、お客様に商品やサービスを提供する企業との関係をまとめたものだ。

絵

 絵の縦軸は「顧客緊密度」、すなわちお客様を知っている度合いを示し、横軸はお客様と共有する「リスクとリワード(報酬)」のレベルを示す。ぜひ、ご自分の所属する企業が絵のどこに位置するか、考えてみていただきたい。

 絵について説明する前に、長年の間、私がずっと考えてきた問題を提起したい。それは次の通りである。

 「ネゴシエーションではなく、真のコラボレーションを通じて、共に価値を創造してくれるパートナーが必要だ。しかし、なかなか見つけられない」

 他の企業と一切取引せずに、ビジネスを展開できる企業はまず存在しない。他の企業とつき合うのであれば、お互いがハッピーになることが望ましい。理想は、企業と企業が同じ目的を共有するパートナーの関係になって、同じ仕事の進め方をし、成果を目指すことだ。成果が出たら、両社はそれを分かち合う。これが、コラボレーションで価値を創造する関係と思う。

現実には存在しない、真のコラボレーション

 ところが現実には、企業と企業の関係はコラボレーションというより、もっぱらネゴシエーションが中心になってしまう。ある企業が別の企業からサービスを買うことにしたとしよう。所定のコストの中で、できるだけ良いものを手に入れたい顧客側の企業はサービス提供企業にあれこれ注文をつける。一方、サービスを提供する企業から見れば、売り上げた金額の中から、できるだけ多くの利益を得たいから、顧客の注文に対し「それはできません」「追加料金が必要になります」と交渉することになる。ネゴシエーションが繰り返されると、両社の関係はぎすぎすし、サービス提供企業は本来目指すべき、「顧客企業の成功を支援する」ことに集中できなくなる。

 私はコンピューターメーカーの営業担当者からスタートし、メーカーの副社長を経て、コンサルティング会社の社長に転じ、さらに通信事業会社の社長を経験し、現在は投資ファンドの会長と新しいコンサルティング会社のCEO(最高経営責任者)を務めている。情報通信技術(ICT)を「提供する側」と、ICTを利用して企業価値を高めようとする「お客様側」の両方を経験してきたわけだが、どちらの立場にいても「ネゴシエーションばかり、コラボレーションが少なすぎる」とずっと思ってきた。

 ICTの提供側にいた時、コラボレーションをやりたかったし、自分が客側に立った時には共に価値創造に取り組める相手を強く求めていた。同じように多くの企業もコラボレーションができる相手を欲しているはずだ。求められているものが世の中にないのなら、自分たちで創ろう。これが5月に設立したシグマクシスという企業を創った理由である。

 本連載の第1回目に、新会社を発表する記者会見で伝えることは「コラボレーションで価値と喜びを創造する会社を創ります」に尽きると書いた。なぜ「喜び」が出てくるかと言うと、コラボレーションで価値を創造する活動は無限の可能性を追いかける楽しさであふれているはずだからだ。シグマクシスと仕事をすると楽しい、また一緒に仕事をしたい、と言っていただける会社になりたいと思っている。これに対し、ネゴシエーションは時には必要であるものの、ともすれば腹の探り合いや価格の叩き合いになってしまい、楽しいとは言い難い。

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著者プロフィール

倉重 英樹(くらしげ ひでき)

1942年生まれ、山口県出身。1966年早稲田大学政治経済学部卒業、同年日本IBM入社。1993年取締役副社長。同年、プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント(PwCコンサルティング)代表取締役会長に転身。2002年、IBMのPwCコンサルティング買収に伴い、IBMビジネスコンサルティングサービス代表取締役会長に。2004年日本テレコム代表取締役社長。2006年RHJIインダストリアル・パートナーズ・アジア代表取締役社長。2007年RHJインターナショナル・ジャパン代表取締役会長(現職)。2008年5月シグマクシス代表取締役CEOに就任。



このコラムについて

倉重英樹のCEO日記「新会社を創る!」

新しい会社を創っていく時、創業者は何を考え、どのような行動を取るのか。会社のビジョンや社名の決定、資本金の準備、社員採用、ビジネスモデルや管理体制の確立、オフィスと情報システムの整備など、やるべきことは多い。「ビジネスとテクノロジーのアグリゲーター」という新コンセプトの企業、シグマクシスを2008年5月に設立、10月から本格始業した倉重英樹氏が日々の活動を綴る。

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