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逆差別ではないのか、「子育てで残業免除」

女性も制度に甘えているだけではダメ

  • 田澤 由利

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2008年12月9日(火)

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 先日、「厚労省、『子育てで残業免除』を正式提示」といった内容のニュースがインターネットや新聞、テレビで報道されました(参考記事はこちら)。  

 28日の厚生労働省の労働政策審議会雇用均等分科会で提示された育児・介護休業法改正の原案に、「3歳未満の子供を持つ従業員が希望すれば残業が免除されたり、短時間勤務ができたりするようにする」ということが盛り込まれていたためです。  

 厚生労働省がこの法改正を進めてきた背景は、以下の通りです(2008年8月27日、第82回労働政策審議会雇用均等分科会議事録からの要約)。  

 「平成3年に育児・介護休業法が制定され、女性の育児休業取得率は上昇。しかし、女性の就業におけるM字型カーブは依然として残っており、第1子の出産を契機に約7割の女性が離職するという状況はほとんど変わっていない。合計特殊出生率も、平成19年の数字で1.34と、低い水準にとどまっている状況。この状況を一刻も早く打開するための政策として、保育など子育て支援サービス基盤の整備と、仕事と家庭の両立支援が重要である」

手放しに喜べない少子化対策

 つまり、少子化対策としての「仕事と家庭の両立支援」の具体案がこの法改正案です。しかし私はこの方針に対し、どうしても手放しに喜ぶことができません。「子育て中の女性(※注1)」に対してだけメリットのある政策は、実施すればするほど、社会や職場における「不公平感」を高め、結果として「子育てしながら働きにくい」状況を作り出す危険性があるからです。  

※注1
育児休業法の対象は男女両方ですが、育児休業取得比率が女性が97.2%(厚生労働省「平成18年度女性雇用管理基本調査」より)である現実を踏まえ、ここではあえて「女性」とした。  

 私がこういう考えに至ったのは、今年の9月にインターネットによる調査を行って女性の声を集め、「女性が働きやすい社会」をつくるためのアンケート調査報告書をつくっていたからです。この報告書は「政府への提言」として、当時の内閣総理大臣であった福田康夫氏に手渡ししました。    

 ここには、「育児休業制度は形だけ。実際には使えない」「女性の子育てとキャリアは両立しない」「女性だけでなく男性も働きやすい社会にしないとダメ」など、まさに「仕事と家庭の両立」で悩み、乗り越え、あるいは挫折した女性たちの声と強い思いが込められています。  

 この中で私が注目したのは、「女性の敵は女性」という発言が何件もあったという事実です。社会や職場において「不公平だ」「逆差別ではないか」といった意識が芽生えると「敵」を作ってしまい、結果として本来の目的が達成できなくなっているのかもしれません。

「制度があっても利用できていない」現実を直視すべき

 まず、今回の育児・介護休業法改正案の内容は現実に即しているのでしょうか。前述の背景でも述べられていたように、育児休業制度の取得率は確かに向上しています。厚生労働省「平成18年度女性雇用管理基本調査」によれば、育児休業取得者は女性が88.5%(平成15年度は73.1%)、男性が0.57%(同0.44%)となっています。   

 ただし注意しなければいけないのは、この「取得率」の定義が以下のようになっているということです。   

 「平成17年4月1日から平成18年3月31日までの1年間に出産した者又は配偶者が出産した者に占める、平成18年10月1日までの間に育児休業を開始した者(育児休業開始予定の申出をしている者を含む。以下同じ)の割合」  

 重要なのは、この調査対象が企業であり、ここにおける数字はすべて「出産時点で会社に在籍していた人」を対象にしていることです。   

 つまり「出産を理由に退職した女性」は含まれていません。育児休業という制度はあるものの、実際には取得しにくい雰囲気の中で退職さぜるを得なかった女性や、正社員ではないために育児休業制度の対象外とされ、退職した女性もいるでしょうが、これらの数字は含まれていないのです。   

 実際、前述の「背景」の中で「第1子の出産を契機に約7割の女性が離職する」という事実にも触れています。にもかかわらず、「育児休業制度があっても利用できていない」という事実を直視しておらず、その対策が実施されていないように思います。  

 今回の法案は「(育児休業を取得して)働き続けている人」への優遇施策となっています。もちろん、これによって7割という離職率が下がるのなら、施行する意味があります。しかしもし、この7割の女性たちに次のように問いかけたら、どんな答えが返ってくるでしょうか。  

 「あなたは育児休業から復帰後に残業が免除されるなら、仕事を続けましたか?」  

 私は、多くの人が「NO」と答えるのではと想像しています。次は、その理由についてお話しします。

コメント58件コメント/レビュー

私は小さなTI会社を経営しておりますが、まさにその通りです。私自身が女なので、やる気のある女性に活躍して欲しいのですが、他の社員の負担を考えると結婚、出産の危険(?)のある女性を雇うのは躊躇してしまいます。(2009/01/01)

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私は小さなTI会社を経営しておりますが、まさにその通りです。私自身が女なので、やる気のある女性に活躍して欲しいのですが、他の社員の負担を考えると結婚、出産の危険(?)のある女性を雇うのは躊躇してしまいます。(2009/01/01)

基本的に、残業しないとまわらない業務ってのがそもそもおかしいと思う。それに、残業しない=制度に甘える ではなくて、残業以外のやり方で業務のフォローはいくらでもできると感じる。(2008/12/16)

アメリカに住んで5年ですが、「残業しなくては会社が回らない」と考えるのは日本人の抱く幻想に過ぎないと感じます。アメリカ人の長所は非常に合理的なところで無駄なことは一切やりません。サービスだって非常に割り切ったものです。担当者が対応できない場合、そう伝えられて終わり、と言うケースも多いです。日本人がそこまで割り切った働き方ができるかは疑問ですが、無駄な仕事を徹底して省ことはできると思います。日本ではやるのが当たり前なことの多くを省いていてもこちらの会社は十分回っていますし、残業しなくても労働時間あたりのGDPはアメリカの方が日本より上であり、効率的に働いていることが分かります。日本でもワークライフバランスを達成するには、ただ制度を整えるだけでは十分ではないと思います。それも必要ですが、時間重視の働き方を根本的に変えて、成果重視の働き方にしなければ、いつまでも制度を有効活用できずにワークライフバランスも思うように進まない、と言う状態に陥ると思います。成果重視の働き方は日本でなかなか浸透しにくいようですが、そこを追及して課題を克服していく必要があると思います。(2008/12/14)

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