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学校教育、女性の生き方に思うこと

皆様のご質問にお答えします(最終回)

  • 漆 紫穂子

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2009年1月15日(木)

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 ご質問にお答えするのも、これが最後になりました。今回は学校教育、女子教育、品川女子学院に関すること、私個人の考え方へのご質問などにお答えします。

質問1 事業会社が学校と違うのは、チャレンジすることが必ずしも評価につながるとは限らないということです。自分は乗せられやすい人間で、啓蒙的な話を聞いては必死にチャレンジしてきましたが、会社では常に潰されてきました。社会では、無防備にチャレンジする者は、利用されて捨てられます。力を尽くす前に、社内の力関係をクリアしておかなければ「燃え尽き」が待っているだけです。

 チャレンジして果実を得たとしても、横取りを狙う人はたくさんいます。利用される人ではなく、成功する人、社会を引っ張っていく人を育てるためには、まずはその点から教えるべきなのではないかと思うのですが、漆さんは教育者という立場からこの点についてどう考えておられますか?

 まず、ご質問の「チャレンジしても潰される」ということについて。

 本校でも、すべてのチャレンジが認められるわけではありません。学校の将来や全体像を俯瞰し、新しい提案にストップをかけることもあります。そんな時、チャレンジが奨励される校風への期待値が高い分、生徒たちはがっかりし、不満を持つこともあります。

 しかしそのことで、「権限には責任が伴うこと」「自分にとっていいことが、ほかの人にとっていいとは限らないこと」を知り、世の中には自分の思い通りにならないことがあることを学んでいきます。そのうえで、時にはそれを超えた工夫が生まれ、思った通りの成果を得ることもあります。

 次に、「力関係、人間関係」について。

 このコラムでも以前、「本当はリーダーになりたかった、副リーダーの話」をしたことがあります。ご質問にあるような、大人の社会で起きるような人間関係の問題は、子供の社会でも起きます。先日も生徒から「校長先生が生徒だったら、こんな時どうしますか?」と相談がありました。

 「ある行事のリーダーになった。みんなで協力するのは当たり前のはずなのに、『どうしても自分はやりたくない』と反対する人がいる。その人たちを放っておいて、協力してくれる人たちと一緒により高い目標にチャレンジするか、それとも最後の一人まで協力してくれるように説得するか、限られた時間の中でどちらを優先すべきか?」という内容でした。

 チャレンジャーがいる一方で、反対する人がいるのは、子供の社会も同じです。自分が正しいと思っても、相手には相手の正しさがあり、反発を招けば事は進みません。学校生活の中に、生徒がチームで取り組む機会を多く設けることで、生徒たちはぶつかり合い、時には傷つきながら、人間関係を学んでいます。この苦しみやストレスが、将来、社会で出合うであろう問題を乗り越えるための、糧になると考えています。

 とは言っても、私立学校は、家庭環境や価値観の似通った人が集まる“温室”とも言える場所です。在学中になるべく社会との接点を多く持つような仕組みをつくり、また、折に触れ「挑戦する人」が社会の中で実際はどういう立場になりがちなのか(こちらの記事をご覧ください)をも、伝えています。

 最後に「横取りされ、利用され、燃え尽きる」について。

 生徒たちには、「何の為にチャレンジするのか」、その根本的な軸を持った人に育ってほしいと思います。そしてできることなら、その軸が「人の役に立つかどうか」「人の幸せにつながるかどうか」となることを願っています。

 その人にとっての「チャレンジの果実」が、もし「人の幸せ」であったなら、手柄が誰のものになったとしても、人に評価されなくても、自分の心は満足し、心穏やかでいられるのではないでしょうか。そして、そういう人に周りの力も集まってくるのだと思います。

 とはいえ、おっしゃるように社会に出れば、想像もつかないほど厳しいことも待っていることでしょう。卒業生が疲れた時は、いつでも羽を休めに戻ってこられる母校として学校を存続させ、さらに、卒業生が互いにサポートし合えるようなネットワークも充実させていきたいと思っています。

コメント4件コメント/レビュー

「子供を持つ、持たない」の選択については、正確には「持たない」選択だけが可能なのだと、是非、若いお嬢さんたちに伝えていただきたいと思います。健康であれば子供を生めると思うのは、人間の思い上がりです。不妊には、何か原因があると思いがちですが、実際には夫婦ともに原因が見当たらず、なぜ妊娠できないのか医者も首をひねるばかり、というケースが実に多くあります。決して特別なことではありません。出産というのは、出来てはじめて生めることが分かるのです。キャリア官僚から政治家になったある女性は、38歳の時に不妊治療を決意し、医者に「あなたが妊娠する可能性は約5%(だったと思う)です」と言われて、すぐに子供をあきらめたそうです。彼女ほどのキャリアの持ち主ならば、意思決定というのは何かを選びとり、何かを失うことだというのが分かっているので、ぐずぐず後悔することなく、それまでの選択も、これからの人生にも肯定的に生きておられますが、一般人には「生めない自分」に対する覚悟はなかなか難しいです。健康である自覚があればあるほど、難しいです。「生まないコントロール」は、ほぼ可能です。しかし「生むコントロール」は出来ないこともある、そして出来るか出来ないかは誰にも分からない、ということを、お嬢さんたちが未来を考える上で是非、心に留めておいていただきたいと思います。従って、キャリアを、生める前提で考えている「生みどき」などというものは存在しませんし、生命に対する高慢な考えそのものが人生のリスクでもあると思います(生めないと分かった時のダメージが大きい)。(2009/01/18)

「品川女子学院・漆 紫穂子校長の やる気を高め、人を育てる(秘)メソッド」のバックナンバー

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「子供を持つ、持たない」の選択については、正確には「持たない」選択だけが可能なのだと、是非、若いお嬢さんたちに伝えていただきたいと思います。健康であれば子供を生めると思うのは、人間の思い上がりです。不妊には、何か原因があると思いがちですが、実際には夫婦ともに原因が見当たらず、なぜ妊娠できないのか医者も首をひねるばかり、というケースが実に多くあります。決して特別なことではありません。出産というのは、出来てはじめて生めることが分かるのです。キャリア官僚から政治家になったある女性は、38歳の時に不妊治療を決意し、医者に「あなたが妊娠する可能性は約5%(だったと思う)です」と言われて、すぐに子供をあきらめたそうです。彼女ほどのキャリアの持ち主ならば、意思決定というのは何かを選びとり、何かを失うことだというのが分かっているので、ぐずぐず後悔することなく、それまでの選択も、これからの人生にも肯定的に生きておられますが、一般人には「生めない自分」に対する覚悟はなかなか難しいです。健康である自覚があればあるほど、難しいです。「生まないコントロール」は、ほぼ可能です。しかし「生むコントロール」は出来ないこともある、そして出来るか出来ないかは誰にも分からない、ということを、お嬢さんたちが未来を考える上で是非、心に留めておいていただきたいと思います。従って、キャリアを、生める前提で考えている「生みどき」などというものは存在しませんし、生命に対する高慢な考えそのものが人生のリスクでもあると思います(生めないと分かった時のダメージが大きい)。(2009/01/18)

連載お疲れ様でした。と同時にありがとうございました。教育に対する考え方、大変共感するものが多かったです。私は若者(主に18歳~29歳まで)を中心とした、若者のキャリア教育・就職支援を行っているのですが、今回の連載を生かしてより良いプログラム作りが出来るように邁進する所存です。最後に重ねて御礼申し上げます。(2009/01/15)

人として常識を伝えています。現在日本が敗戦後なくした家庭の暖かさ,社会の恩と感謝,人としての温もりを感じました。ぜひ引き続き社会に思いを発信してください。(2009/01/15)

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三品 和広 神戸大学教授