「「跡取り娘」の経営戦略」

タクシー乗務員が、仕事に誇りを持てるように

湯江タクシー3代目社長 内田輝美さん(後編)

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2009年3月18日(水)

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 どうしたら社員が乗務員という仕事に誇りを持ち、私自身、タクシー会社の経営に前向きな気持ちで取り組めるのか――。湯江タクシー社長に就任してから10年間、内田輝美は考え続けた。その結果、内田の頭に浮かんだのが「子育てタクシー」だった。

湯江タクシーの内田輝美社長

湯江タクシーの内田輝美社長
(写真:山田 愼二)

 「急用が入った時、子供の送迎を頼める人がいない」「子供を狙った犯罪が増え、塾から1人で帰宅させるのが心配」といった友人の声がヒントになった。内田自身、2人の子供の母親であり、子育ての途中で同じような思いしたことが何度もあった。

 「忙しい母親に代わって、子供を送り迎えするサービスを打ち出したらどうだろう。小さな子供がいる家庭には、間違いなく喜ばれるはずだ。人は誰かに必要とされれば、やりがいを感じるというから、これが乗務員のやる気につながるかもしれない。小さなことかもしれないけれど、会社が変わるきっかけになるかもしれない」

 内田が長い間抱えてきた悩みに、光が差してきた瞬間だった。

 子供の送迎のみならず、赤ちゃん連れの客のためベビーカーの積み下ろしを率先して手伝うなど、タクシー会社として地域の子育て家庭を様々な角度から支援する。そんな「子育てタクシー」サービスを形にするべく、内田は早速動き出した。

乗務員も保育園も、最初は「子育てタクシー」に懐疑的だった

 まず、一番の難題は乗務員の理解を得ることだった。

湯江タクシーには、チャイルドシートの準備もある

湯江タクシーには、チャイルドシートの準備もある(写真:山田 愼二)

 内田が話を持ちかけた時、乗務員はいい顔をしなかった。子育てタクシーは、子供を玄関先まで迎えに行ったりするため、当然のことながら、通常の乗車より手間がかかる。しかし内田は、経済的に豊かとは言えない家庭にもサービスを利用してもらおうと、特別な追加料金は取らないことに決めた。乗務員の中には、「納得できない」という空気が広がった。

 さらに、子供の1人客を円滑に送迎するため、乗務員が2時間の保育園実習を受けてはどうか、と内田が提案すると、一部のドライバーは「そんなことまでするのか」と絶句したという。それでも内田はあきらめず、乗務員を粘り強く説得した。

 子育てを済ませた中高年乗務員の多くは普段、小さい子供と接する機会が少ない。それだけに実習の当日、多くの乗務員は渋い表情で保育園を訪れた。しかし、時間が経つに連れ、次第に子供たちと楽しそうに遊び始めるようになる。

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著者プロフィール

荻島 央江(おぎしま・ひさえ)

ライター、エディター。埼玉県生まれ。食品販売会社在職中に、映画紹介・評論記事の執筆活動を始める。2002年からフリーランスとなり、情報誌や女性誌などで取材・執筆を手掛ける。現在はビジネス誌を中心に活動しており、「日経トップリーダー」や「日経メディカルオンライン」などで執筆。主に、著名経営者の密着ルポや中小企業の経営分析に携わる。



このコラムについて

「跡取り娘」の経営戦略

 以前は、長男や娘の婿が家業を継ぐのが常識だった。しかし最近では、娘が自ら家業を継ぐケースが増えている。このコラムでは、こうした「跡取り娘」たちの経営戦略をインタビューする。 女性リーダーのための記事は「NBonline Women at Work」へ。

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