この連載で取材している女性経営者について、「どうやって、跡取り娘を探しているのですか」と聞かれることが多い。「跡取り娘さんを紹介してくれそうな人には必ず、この連載をやっていますのでよろしく、とお願いするんですよ」と答えている。
今回の、三重県津市の跡取り娘との出会いも、新丸ビルから始まった。新丸ビル7階の「丸の内ハウス」では、三菱地所とテナントが共同でフロア全体を巻き込んだイベントを開催している。
「三重県食材フェア」に参加した時のことだ。三重県は、農水商工部のマーケティング室でパンフレットなどを作り、三重県の特産物をブランド化して発信している。マーケティング室の担当者に推薦してもらったのが、今回の跡取り娘、横山食品横山史子代表取締役(43歳)である。

担当者によれば、三重県の横山食品では豆腐、油揚げ、がんもどきなどの大豆製品を製造しており、社長は横山史子さん。横山さんの祖母の横山かね子さんが自宅で豆腐屋を始め、母の横山教子さんが婿を取った。現在はその娘が社長をしているという、女系の会社だ。年商12億円の横山食品は100%自社で生産・販売する会社で、この業種で「仲間卸(製造メーカー同士で商品の売り買いをすること)」をやっていないのは珍しいということだ。
品質、コスト競争力とも高い優良な食品企業と三重県庁の農水商工部でも高く評価されている。現在は母と娘が新商品の開発を行っているという。
この連載の取材では、「女系家族」に出会う確率が多い。女ばかりで代々婿を取る家では、なぜか女性がとても強いのだ。創業者から女系の会社とは面白い。興味をそそられて津市への取材を決めた。人との出会いがさらに出会いを生むのが、この連載の醍醐味でもある。
横山食品の2つある工場の1つ、安濃工場を訪ねた。工業団地の中にあり、シャープの液晶テレビで有名な亀山に近い。工業団地の中も家電メーカーが多く、最近は減産で「派遣切り」も多い業界である。
「最近は、パートさんの募集をすると、すぐに人が集まります。雇用が少なくなった地元の人が、近くで働きたいと応募してくれるのです」と、横山食品3代目の横山史子さんは言う。
現在の従業員数はパートを含めて約110人。2交代制で、1日100俵(1俵が60キロ)の大豆を加工している。日生産能力は豆腐5万丁、油揚げ18万枚、がんもどき5万個。主要取引先は関西と中部のイオンなどのスーパーで、創業時から右肩上がりの業績。不況に強いのは食品だったのだ。
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