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単身赴任が「新型うつ」の引き金に

「栄転だ。出世街道まっしぐら」が一転…

  • 太田 由紀子,日本産業カウンセラー協会(監修)

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2011年12月1日(木)

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 日本でもメンタルヘルスケアの必要性が、少しづつ理解され始めています。しかし、実際にはどれだけ日々の生活や仕事の中で生かされているでしょうか。日本の労働者の自殺率は世界一で、毎年3万人以上の方が自ら命を絶っているのです。

 「がんばれ!」。そんな言葉で、心が痛んだ人を勇気づけているつもりになっていませんか。管理職の皆さん、「あの社員は精神的に弱いから仕方がない」などの諦めの言葉を口にしていませんか。その言葉が、さらにその人を追いつめて壊してしまうかもしれません。反対に「がんばれ!」と言っている、あなた自身こそ、がんばり過ぎていませんか。

 産業カウンセラーという仕事をご存じでしょうか。その団体である社団法人日本産業カウンセラー協会から、現場で活躍する産業カウンセラーの体験を基に、このコラム「メンタルリスク最前線」をお届けします。

 これからのメンタルヘルスケアの在り方、キャリアカウンセリング、そして、実際に行われてる日本企業のストレス対処の取り組みなど、様々なアプローチでコラムを展開していく予定です。その中で、私たち産業カウンセラーの仕事の中身についても少し理解を深めていただければ幸いです。なお、各事例はプライバシー保護のため、人物像や場面などを変更してあります。

 「12月には職場に復帰できそうです」

 Aさんは、こう笑顔で話してくれた。クリスマスソングが街中にあふれる季節。10年間1人で苦しみ続けたAさんがもらったサンタクロースからのプレゼントは、彼自身の努力による「気づき」と、少しの間、同じ人生を一緒に歩いたカウンセラーからの言葉だったようだ。

「もしや会社のリストラ対策だったのか」

 半年前、Aさんはカウンセリングルームのドアを開けて入ってきた。顔面は蒼白、髪はボサボサ、常にイライラと怒りっぽく、寝たり起きたりの毎日を過ごしていた。

 50歳、会社員、既婚(妻、長女、長男)、近くに住む一人暮らしの姉がいる。

 大手企業に勤務しており、同期入社の中では比較的早く昇進した。社内での“本籍”が地方の支社だったため、周囲には転勤もなく定年まで勤めを終える人も多かったが、A氏には本社へ異動する異例の辞令が出た。

 「栄転だ。出世街道まっしぐら」
 そう、ほくそえんだ。輝かしい未来が約束されたと思った。

 単身赴任で、新しい職場に向かった。ただ、家族のことで後ろ髪引かれる思いもあった。なぜなら、一人暮らしをする姉は統合失調症。息子は引きこもりがちだったからだ。

 「しかし、大きなプロジェクトを任されての栄転。私が行かなければ! これは家族のためにもなるのだから」
 そう考え、思いを振り切った。

 しかし、将来を約束された輝かしい新天地のはずだった勤務先では誤算の連続だった。職場に溶け込めない。任されたプロジェクトなのに仕事のやり方が分からない。知らない街。知らない人間。知らない言葉――。

 同僚は助けてくれない。いや、自分にとっては敵だから簡単に聞くわけにはいかない。

 自分が、なぜそんなことを思ってしまうかも理解できない。すべてがかみ合わず、ちぐはぐ。自分の納得がいかないことばかりになってしまった。

 「もしや会社のリストラ対策だったのか」
 思いつめて、そんな被害妄想にまでさいなまれた。

10年以上、入退院を繰り返した

 勇気を出して会社内で産業医による診察を受けてみると、病院の受診を勧められた。「入院の必要があるうつ状態」という診断だった。いったん、家族が待つ自宅に戻って地元の病院に入院。抗うつ剤、睡眠導入剤などを摂取しながら治療に専念した。

 幸い、間もなく症状は改善し、再び単身赴任で所属先に戻った。ところが勤務先で、うつ状態が再発し、また入院。ほどなく復帰するも、また再発。入院、復帰、入院、復帰…。何度も入退院を繰り返すうちに、10年以上の月日が流れていた。

 「この状態の自分は、いったい何なんだ」

コメント17件コメント/レビュー

日本が世界一自殺(率)の多い国とは知りませんでした。 そういえば、過日テレビの番組で『日本人はよく泣く』事に関して日本在住の外国人がどう考えるのか討論していた。 韓国や中国等の日本に近い国の人達は泣く事自体に否定的ではなかったが、それでも『日本人はよく泣く』と発言していた。 自殺の多い事と考え合わせると両者には関連があるのではないだろうか。 『泣く』事は他人の前ではいわば『パーフォーマンス』で、泣く事を見せる事によって同情を得るといった様な期待が無意識に作用しているのではないか。 外国人は泣く事は『恥ずかしい』とか『みっともない』と考える人が多く、特に人前で涙を見せる事を嫌う。 日本で自殺の多くが発見され易い場所で行われている事は自殺した事を特定或は不特定の人に分かって欲しいと希望しているからなのではないでしょうか。 こういった事は心理学者に分析して欲しいのですが、少子化が益々進む日本で無為に自らの生命を絶つ行為が決して美しくも同情的でもない事を親や社会が知らしめるべきだ。 いじめ等の許し難い原因があるにしても、その結果自殺した行為を美化する様な事は別の志願者に切欠を与えかねない。 自殺は行為そのものが『悪』です。(2012/04/08)

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日本が世界一自殺(率)の多い国とは知りませんでした。 そういえば、過日テレビの番組で『日本人はよく泣く』事に関して日本在住の外国人がどう考えるのか討論していた。 韓国や中国等の日本に近い国の人達は泣く事自体に否定的ではなかったが、それでも『日本人はよく泣く』と発言していた。 自殺の多い事と考え合わせると両者には関連があるのではないだろうか。 『泣く』事は他人の前ではいわば『パーフォーマンス』で、泣く事を見せる事によって同情を得るといった様な期待が無意識に作用しているのではないか。 外国人は泣く事は『恥ずかしい』とか『みっともない』と考える人が多く、特に人前で涙を見せる事を嫌う。 日本で自殺の多くが発見され易い場所で行われている事は自殺した事を特定或は不特定の人に分かって欲しいと希望しているからなのではないでしょうか。 こういった事は心理学者に分析して欲しいのですが、少子化が益々進む日本で無為に自らの生命を絶つ行為が決して美しくも同情的でもない事を親や社会が知らしめるべきだ。 いじめ等の許し難い原因があるにしても、その結果自殺した行為を美化する様な事は別の志願者に切欠を与えかねない。 自殺は行為そのものが『悪』です。(2012/04/08)

最高のカウンセラーは、会社の上司(2段階上でもよい)と思う。メンタルな病気は周りを気にして恥ずかしがっても快方に向かわないから、上司に相談して、会社を少し休んで、同僚が事実を察し、それから直して行くものと思う。 私は医者ではないが、自分のうつ病の感覚は、「発熱のない風邪」という感じだった。風邪状態ではからだを動かすのも億劫だし、元気に活動することもできない。風邪とちがうもう一つの点は、数日で直るわけはなく、治療にどのくらいかかるのか分からない点だ。しかし、自分でいつか治すという気持ちはある時点では必用とおもう。(2011/12/08)

関心の高い記事でした。うつは「明日はわが身」というか誰でもなりうる身近なものと感じており、カウンセラーなどの必要性が再認識される時代になったと思います。(2011/12/06)

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