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「農民工」という言葉は過去のものに

  • 田中 信彦

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2012年4月26日(木)

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 中国ではここ数年、人材をめぐる状況が急転換している。ホワイトカラー層、ワーカー層を問わず、「雇用する側」と「働く側」の力関係は大きく変わり、「働く側」の力が急速に強まりつつある。この大転換は中国での人材をめぐる事情に大きな影響を与えている。日系企業を含む外資系企業の人事マネジメントは大きく変わらざるを得ない。

成功した「労働力安売り政策」

 歴史を振り返ってみると、中国の改革開放が成功した最も大きな要因は「労働力の安売り政策」にあった。1970年代末、中国政府が改革開放に踏み切った時、外国に売れるものはほとんど何もなかった。あるのは「人」と土地だけである。中国政府は低廉な「人」を労働力として、豊富な土地を「開発区」として世界に向けて売り出した。この戦略がグローバル化、ボーダーレス化の進む世界経済の流れと合致し、短期間に大量の資金や技術が中国に流れ込んだ。これが中国経済の奇跡的なまでの急成長の基本的な理由である。

 経済成長のカギが、この2つの価格競争力にあったのだから、当然ながら「安売り」が終われば成長の条件は変わる。中国で事業を行うゲームのルールは変わったのである。

安い労働力を支えた「二元統治システム」

 この「労働力の安売り」戦略を根底から支えてきたのが、中国社会を農村部と都市部に分けて、あたかも2つの国であるかのように統治する「二元統治システム」である。

 「二元統治システム」とは簡単に言えば農村を都市が経済的に支配し、農村を踏み台に都市を発展させる政策である。中国国民を農業戸籍(農民)と非農業戸籍(都市住民)の2つに分け、その間の移動の自由を制限し、農民を農村に縛りつける。その上で政府が計画経済に基づいて穀物の統一買い付け・統一販売を行う一方、都市部で生産された工業製品や副食品などは相応の利益を乗せて農村に販売する。その間のサヤを国家が抜いて、その収益を重工業投資に充てるという仕組みである。

 つまり、割り切って言えば、中国の都市部と農村部の間に事実上の「国境」を設け、「都市国」が「農村国」を植民地として支配し、搾取することで国家建設の資金を得る。これが中国の二元統治システムだった。中国8億の農村住民は数十年間にわたって都市住民のために奉仕させられ続け、感謝されるどころか「二等国民」として差別され、教育や社会保障、土地の財産権などといった基本的な権利において大いに不利益をこうむってきた。

 要するに世界の先進国がかつて帝国主義の時代、資本主義経済発展の原資蓄積のために海外植民地に対してとった行動を、中国は国内で行ったのである。現在の中国で大きな社会問題となっている巨大な地域格差、都市と農村の間に存在する諸矛盾の原点はここにある。そしてこの壮大な差別の構造は、中国の安くて豊富な労働力を生み出すもとにもなってきた。

 ご承知のように、改革開放政策の下、沿海部の工場で働いてきた労働者の多くは農村から出てきた、いわゆる「農民工」である。この人々は農業戸籍の保持者で、原則的には都市部で働くことができない。しかしそれでは人手が足りないから、臨時に都市部で働いてもよいという「暫住証」というものを発行する。これはいわば労働力不足になった先進国が、発展途上国の労働者を様々な便法で招き寄せ、期限付きの就労ビザを発行するのと同じ構造である。そこには「本当は来てほしくないが、労働力が足りないから仕方ない」という姿勢がある。

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