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「正しい」からではなく「interesting」だから心に残る

大学教授必読の論文「That's interesting!」を読む【1】

2012年10月18日(木)

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取り上げるのは――“That's interesting!”
(Davis, M. S. 1971. That's Interesting! Philosophy of Social Science, 1:309-344.)

 『ビジョナリー・カンパニー4 自分の意志で偉大になる』の紹介をした第1回目では、欧米の社会科学系の博士課程の学生がほぼ必ず読まされる(つまり、Ph.D.を持った大学教授必読の) “That’s interesting!”(Murray Davis)という1971年の古典的な論文の話から始めました。

 このポイントは、論文、理論の良しあしは「理論が正しいかどうか」では必ずしもなく、「interestingかどうか」で決まる。そして、interestingであるとは、とりもなおさず人が「なんとなく」思っている前提を否定することにある、言い換えれば「直感と違う(counter-intuitive)ことを言う」ことだと申し上げました。

 今回と次回はこの論文と研究者の仕事の関係から始め、さらに経営にかかわる皆さんへの示唆を考えてみたいと思います。

経営学とデータ

 経営学も含め、社会科学系の研究者がしている(したいと思っている)ことは、「世の中をもっとよくわかる」ことです。経営学で言えば、企業がどのように行動するのか、業績の高い企業と低い企業は何が違うのかというメカニズムを理解することにほかなりません。

 もちろん「業績を上げるにはどうしたらいいか」といった質問に答えること(prescription=処方箋などと呼ばれます)も役割ですが、その前に、そもそも企業とはどのようなメカニズムで動いているのか(べき論はありますが、さまざまなギャップがあります)という現状把握をしなくてはなりません(description)。「コンサルタントは問題を解決しようとするが、研究者は問題の体系を明らかにしようとする」と言われるゆえんです。

 通常、それは多くのデータを集め、統計的に分析をし、ジャーナル(学会誌)に論文を投稿、審査、掲載/却下される通じて行われ、また研究業績として評価されることになります。私も4誌の編集委員を務め、年間20本くらいのブラインドレビュー(誰の論文かもわからないし、レビューをされたほうも誰にされているかわからない)をしますが、論文に常に求められるのはcontribution、つまりどのような新しい重要な発見をしたかという点です(ちなみに、そうした一流誌の編集委員に選ばれることが学会内でのステータスなため、レビューはすべてボランティア、何時間もかけ読んで、コメントを書いても経済的リターンはゼロです)。

 そのcontributionの中核をなすのが、なぜ〇〇が起こるかという因果関係についての理論です。一般にAがBを引き起こすという因果関係を証明するには、

(1)AがBよりも前に起こっていること
(2)AとBには相関関係があること(Aが起こればBが起こる)
(3)A以外にBに影響するものがないこと

 の3つが必要です。例えば薬の効果があるかどうかを見る時、投与前と投与後の比較をすればよい(通常さらにコントロールグループといって、プラシーボを投与したグループの効果とも比較をします)ですが、社会科学、特に実際の企業のデータを集めて分析する経営学ではそんな実験はできません。多変量解析とか、重回帰分析とかさまざまな統計手法によって(1)と(2)は説明できますが、(3)は決してできません(博士課程ではこの話だけで1~2クラスを費やします)。

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「「正しい」からではなく「interesting」だから心に残る」の著者

清水 勝彦

清水 勝彦(しみず・かつひこ)

慶應義塾大学大学院教授

東京大学法学部卒業。ダートマス大学エイモス・タックスクール経営学修士(MBA)、テキサスA&M大学経営学博士(Ph.D)。戦略系コンサルティング会社のコーポレィトディレクションを経て研究者に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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