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意思決定の本質はリーダーではなく組織力

スタンフォード大学 アイゼンハート教授の論文を読む【2】

2013年4月25日(木)

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前回に続いて取り上げるのは――Making fast strategic decisions in high-velocity environments(変化の激しい業界でスピーディーな戦略意思決定を行う)
Katheleen M. Eisenhardt(1989年 Academy of Management Journal)

  1. 対立意見がないほうが早い意思決定が行うことができると思われているが、実際は対立意見を出し、それをうまく解決する企業ほど意思決定が早い。

 アイゼンハート教授の論文には組織内のポリティクスを扱ったものもあり、その意味で同じ組織といえども、いろいろな利害の対立、駆け引きがあることは百も承知です。当然ですが、そうした対立があればあるほど、意思決定のスピードは遅れそうです。

 ここでXとX’の違いは何でしょうか? そうです、「対立がない」ということと「対立意見を言わない」ということはXとX’どころかXとZくらい全く違うということです。「対立意見が出ない」ということは、「対立がない」からかもしれませんが、おそらく世界中の企業の99%は「対立意見を言わない」「対立を隠す」からではないでしょうか?

 したがって、「対立があるかどうか」は、実は意思決定のスピードとはほとんど関係ないのです。時々「意見の対立があるから決まらない」と嘆く経営者の方がいらっしゃいますが、それは「顧客がわがままだ」と言って嘆くのと同じです。組織には対立が必ずありますし、顧客はわがままなものに決まっています。それを言い訳にするのは、手が使えないからサッカーの試合に負けたというのと同じです。

 話が少しそれましたが、意思決定の早い企業はほとんど次のステップを取っているとアイゼンハート教授は指摘します。(1)すべての関係者の意見を出したうえでコンセンサスを得ようとする、(2)もし得られない場合は、すべての人々の意見を踏まえたうえでCEOあるいは担当役員が決定する。柴田昌治氏の名作『会社はなぜ変われないか』で、「衆知を集めて1人で決める」という言葉があったことを思い出します。

 一方で、意思決定の遅い企業はコンセンサスが「生まれるのを待っている」ケースが多いのです。そもそも意見が違うからコンセンサスが得られないのに、待っていても何も起こらないのが普通です。結果として、多くの場合「締め切り」、例えば決算発表だとか、社長交代だとか、に押されて「仕方なく」決めているのです。

 面白いことに、私が博士課程で調べた「意思変更」については、この「締め切り」「関係ない外部的イベント」が大きな役割を果たしていることが分かっています。例えば、買収した企業の業績が悪いから失敗だとして売却する、というのは一見もっともなのですが、1回赤字になったらすぐ売却するという企業はほとんどありません。「今期は特殊だ」「統合が進んだら黒字になる」などと考えるからです。その赤字が、2期、3期と続いた場合、いったい「いつ」売却を決めるか? 私の研究では「CEOの交代」「新任外部取締役の参加」「業績悪化のスピード」などが買収企業の業績悪化とあいまった時に、売却の比率が大きく上昇することが統計的に証明できています(注3)。

(注3)Shimizu, K, & Hitt, M.A. 2005. What constraints or facilitates divestitures of formerly acquired firms? The effects of organizational inertia. Journal of Management, 31: 50-72.

 すべての関係者を巻き込んだら、意見が対立して収拾がつかなくならないのでしょうか? これに対するアイゼンハート教授の考えは次の2つです。そもそも、「締め切り」を待っていたら意思決定が遅れるのは当然である。そして、もう1つ面白いのは、「役員連中は自分で決めないでいいのならいろいろな意見を言う」ということです。つまり意思決定には参加したい、でも自分が本当に関係あること自体は自分が決定するのはいやだという思いを、アメリカでも役員は思っているのです。

 いろいろな意見を言わせ、そのうえでCEOなり担当役員が決定をすることは、さまざまな角度から論点を議論できるだけでなく、役員の「参加感」を十分満たすこともできるのです。実際、心理学の研究では「自分の意見が通らなくても、意思決定に参加をしたという意識がある社員は、決定の実行により積極的に関与する」ことが明らかになっています。

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「意思決定の本質はリーダーではなく組織力」の著者

清水 勝彦

清水 勝彦(しみず・かつひこ)

慶應義塾大学大学院教授

東京大学法学部卒業。ダートマス大学エイモス・タックスクール経営学修士(MBA)、テキサスA&M大学経営学博士(Ph.D)。戦略系コンサルティング会社のコーポレィトディレクションを経て研究者に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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