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チーム力を高める言葉

2013年9月24日(火)

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「みんなを平等に扱うとは限らないからね」

 早大ラグビー部に在籍する選手たちは、レギュラーポジションを目指して切磋琢磨する。1軍の選手だけが着られる栄光の赤いジャージ。それを着て、秩父宮ラグビー場で疾走する夢を見るからこそ、大学時代の貴重な時間をラグビーの練習に費やすのだ。

 彼らにとって、次の試合に出られるかどうかは重大な関心事である。誰を起用するかを決めるのは基本的には監督だが、どう決めても、メンバーから外れた選手からは文句や不満が出る。「自分は絶対に××よりもうまいのに、なぜ出られないんですか」と、私に詰め寄る選手もいた。

 そんなとき私は、「だから言っておいたじゃないか。選手の起用は、監督の独断で決めるって」と言う。本当に私はシーズンの始まりから何度も繰り返し伝えるのだ。「先に言っておくけど、みんなを平等に扱うとは限らないからね」と。選手たちはその言葉を思い出し、口をつぐむしかない。

部下は上司のウソを見抜いている

 すべて監督の独断で決めるというのは、ひどいことのように聞こえるかもしれない。しかし、実際にはそうするしかない。理由はいくつかある。

 選手それぞれのスキルは、すべて定量化しようと思っても難しい。足の速さ一つを取っても、体力が消耗してくる後半ではどうか、雨が降ったときにはどうかといった点では評価が難しい。

 もちろん、選手同士の相性、敵チームとの相性という問題もある。相性が悪ければ、優れたプレーヤーでも、試合によっては起用できない場合もある。戦略とその選手のプレーが合致しない場合も同様だ。

 そんななかで、選手の起用を論理的に説明し、平等に扱えと言われても無理だ。また、説明したところですべての人が納得するはずもない。最初に「みんなを平等に扱うわけではない」と宣言しておくのはそういう理由からだ。平等ではないと伝えたほうが、モチベーションを下げる人は少なくて済む。

 組織にはルールがある。そして、それは組織のメンバーにとって、喜ばしいものばかりとは限らない。時に、組織が持つ文化と対極の内容であることすらある。「みんなを平等に扱うとは限らない」とは、まさにそういう例だ。

 平等に扱ったほうが、選手のやる気は増すだろう。それは私もわかっている。しかし、ラグビーのポジションは15しかない。リザーブという控え選手を含めても20人余りにしか役割を与えることができない。それを、「頑張った人はすべて平等に扱う」と言ったらウソになる。ウソが招くものは、「頑張ってもムダ」というしらけたムードである。

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「チーム力を高める言葉」の著者

中竹竜二

中竹竜二(なかたけ・りゅうじ)

2006年早稲田大学ラグビー蹴球部監督に就任し、2007年度から2年連続で全国大学選手権を制覇。2010年2月退任。同年4月日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクターに就任。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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