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ロジカル思考を「好き嫌い」から身につける

2013年12月3日(火)

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 IT、語学などを中心にビジネスパーソンのスキルは、全体として大きく向上してきた。では、そうした中で、個人の評価や仕事の成果を上げていくには何が必要か。その1つの答えが、「正確な事実を基に物事を論理的に分析、説明する能力」である。

 と言うと、何やら難しそうに聞こえるかもしれないが、基本的な考え方さえ理解すれば、日々の仕事に応用するハードルはそれほど高くない。その基礎の習得に大いに役立つのが、MBAコースで学ぶ論理思考、統計学、マーケティング、企業財務などのエッセンスだ。

 この連載では、拙著『ビジネスプロフェッショナルの教科書』(日経BP社)の内容をベースに、「明日から使えるMBAスキル」を面白く、わかりやすく解説する。スタートとなる今回は、今後ビジネスの世界で重要なキーワードになるであろう「アービトラージ」の概念と、それを実現するための思考術を取り上げる。

 ノウハウやケイパビリティー(固有の強み)をテコに情報や能力の不均衡を生み出す。こうした歪みを利用してビジネス上の優位性を獲得するのが「アービトラージ」の考え方だ。

 自動車会社から車を買うのも、弁護士に仕事を依頼するのも、ミュージシャンのコンサートに行くのも、私たちが特定のモノや人を選ぶのは、そこに能力の不均衡が存在するから。自分にはできないことを誰かにお願いすることで、ビジネスは生まれる。極論すれば、ビジネスはすべてアービトラージと言える。

 アービトラージの根底には、「情報の非対称性」が存在する。すべての人が均等かつ平等に情報を持っているわけではない。ビジネスではその傾向がより顕著。知っている人、経験したことがある人は強い。情報の非対称性とは、つまりはそういうことだ。

 ここで、ちょっとした実験の結果を見ながら、アービトラージの力を感じてみたい。

「つながる」欲求を遠ざける

 人間に欲求に関して、米シカゴ大学のウィルヘルム・ホフマン准教授が実験を行った。示唆に富んだ研究結果が出ている。

 たとえば、中毒性がある酒やタバコへの欲求はどの程度強いのだろうか。嗜好品への欲求は強烈に思えるが、ホフマン氏の実験によると、結果はその反対で一番弱い部類だった。

 一方で、「社会とつながる」「性行為」「睡眠」という3つの欲求は最も強かった。自分を律しないと、フェイスブックやツイッターへアクセスしたくなり、もやもやと性欲が湧き、眠くなるということだ。

 ネットサーフィン、テレビの視聴、メールのチェックなども、こうした欲求に結びついている。特に「社会とつながりたい欲求」はなかなか充足されない。気が進まない仕事の最中にスマホを触って時間を浪費するのは、本能的な行動と言える。ニュースをチェックするのも、SNSを見るのも、バラエティー番組を観るのも社会とつながる行動だし、確かに暇つぶしには最適の方法だ。

 仕事で成功する人は、こうした欲求をコントロールできる。従来はそう考えられてきた。しかし現実は少々違っていたようだ。実験結果から、次のような結論が引き出されている。

欲求との接点を避けられる人が、仕事に打ち込める――。

 なるほど、理にかなっている。人間のセルフコントロールの能力はそれほど高くない。欲求にアクセスできる道具を触らないのは至難の業。目の前にある食べ物と一緒で、我慢するのが本当に難しい。

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「ロジカル思考を「好き嫌い」から身につける」の著者

斎藤 広達

斎藤 広達(さいとう・こうたつ)

事業再生コンサルタント/理論社社長

1968年生まれ。シカゴ大学経営大学院修士(MBA)取得後、ボストン・コンサルティング・グループ、シティバンク、ローランドベルガーなどを経て独立。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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