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そもそも「取締役」ってなんだろう?

ガバナンス論議を見直してみる

2014年8月11日(月)

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今回取り上げるのは――
Withers, M.C., Hillman, A.J., & Cannella, A.A. 2012. A multidisciplinary review of the director selection literature. Journal of Management, 38: 243-277.ほか

 最近、「日本企業にも社外取締役が必要だ」「義務付けよう」「そこまでする必要はない」なんていう話をよく聞きます。ちなみに、日経テレコンで調べてみると、日本経済新聞朝刊に「社外取締役」という言葉が使われた記事が過去1カ月で38件、過去半年では170件ありました。

 少し前(2013年9月22日)の「日曜に考える」という記事で「社外取締役、義務付け必要か」について経営共創基盤の冨山和彦CEOと新日鉄住金の佐久間総一郎副社長(当時常務)が意見を戦わせていました。冨山氏は「空気を読み合う村型統治の打破のために必要だ」と指摘し、一方で佐久間氏は「監査役制度が十分機能しており、個別企業の判断にゆだねるべきだ」という意見でした。このお2人はいずれも私の親しい先輩で(冨山氏はコーポレイトディレクション=CDI時代の、佐久間氏は大学スキー部の)、奇遇なものだと思ったものでした。

 こうした議論が繰り返される要因として、日本企業のガバナンスが弱く、社長の暴走に歯止めがきかなかったり、経営の透明性が今一つだったりという点が指摘されます。オリンパスや大王製紙がその「よい(悪い?)例」として挙げられます。実際、アメリカの上場企業では、例えば取締役10人のうち、内部者はCEOとCFOだけという企業がたくさんあり、そうした意味で日本企業は「世界標準」ではないと、識者や投資家は指摘するのです。ただ、一方で多くの社外取締役を入れて「世界標準」だったソニーのような会社が泥沼の赤字にあえいでいたりすることも事実です。今回はアカデミックな研究の視点を入れて、この「取締役」について考えてみたいと思います。

 取締役、あるいはガバナンスに関しては経営学だけでなく、ファイナンス、会計学、経済学、あるいは社会学と幅広い研究がなされてきています(それが、今回取り上げた論文のタイトルにmultidisciplinaryと入っている理由です)。そして、そうした膨大な研究の現段階での結論は「社外取締役の比率と企業の業績の間には、何らシステマティックな関係はみられない(つまり、論文によって正の相関だったり、負の相関だったり、相関がみられなかったりとバラバラ)」というものです。これについてはもう一度後で詳しく触れます。

コーポレートガバナンス

 コーポレートガバナンス(企業統治)について、そもそも、という話にさかのぼると、いわゆる資本(株主)と経営(経営者)の分離という話になり、資本主義の発達の中で組織が大規模化し、かつ所有者が多数分散するところから始まります。その根底にあるのはエージェンシー理論(Agency theory)、つまり所有者からやとわれている立場の経営者は(1)合理的でかつ(2)利己的、そして(3)(自分の富や将来が会社の存続に全てかかっているため)リスク回避的であり、その結果プリンシプルと呼ばれる所有者と利害対立が起きるのだという考え方です(注1)。

 その利害対立をなくし、エージェント(経営者)が自己の利益の最大化ではなく、プリンシプル(株主)の利益の最大化を図るようにするのがガバナンスの役割です。一般には「対立する可能性のあるステークホルダーの利害を調整し、企業価値の持続的向上を目指す仕組み」(Hitt, Ireland, & Hoskisson “Strategic Management”2010)全てを指します。具体的には株主を代表した取締役会による戦略意思決定の監視、承認はもちろん、例えば経営者の報酬制度もそうですし、株式市場の圧力も広い意味でのガバナンスです。

(注1) 例えばJensen, M.C., & Meckling, W. 1976. Theory of firm: Managerial behavior, agency costs, and ownership structure. Journal of Financial Economics, 3: 305-360.

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「そもそも「取締役」ってなんだろう?」の著者

清水 勝彦

清水 勝彦(しみず・かつひこ)

慶應義塾大学大学院教授

東京大学法学部卒業。ダートマス大学エイモス・タックスクール経営学修士(MBA)、テキサスA&M大学経営学博士(Ph.D)。戦略系コンサルティング会社のコーポレィトディレクションを経て研究者に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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