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「解決策」としての取締役論議

でも、「問題」は分かっているのだろうか?

2014年8月18日(月)

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今回取り上げるのは――
Withers, M.C., Hillman, A.J., & Cannella, A.A. 2012. A multidisciplinary Review of the director selection literature. Journal of Management, 38: 243-277.ほか

膨大なガバナンス研究の背景

 前回申し上げたように、アメリカを中心に取締役(board of directors)に関する研究は、幅広い分野(経営学、ファイナンス、会計、経済学、社会学など)で大量にあります。経営陣(Officer とかTop Management Team=TMTなどと呼ばれます)に関する研究もそうです。それには共通する大きな理由があります。アクセスできるパブリックデータの豊富さです。

 日本でも、例えば有価証券報告書に社長、あるいは取締役の経歴などが簡単に載っていますが、アメリカの場合それが半端ではありません。有価証券報告書に当たるAnnual Reportにも相当載っていますが、一番はProxy Statementといわれる、株主総会用の資料です。これは、もしかしたらなじみのない方もいらっしゃるかもしれませんが、一度是非ご覧になったらいいと思います。膨大ですので、全部を注意深く読む必要はありません。Board of directorsのところだけでも十分です。

 例としてGEの2013年のProxy Statementを見てみましょう 。年齢、経歴、いつから取締役になったかが事細かに記述されています。全体として人種や性別もうまくばらけていますよね。一流会社として大変大事なポイントです。ちなみに、以前サムスンの取締役を調べたことがありましたが(今回は見つかりませんでした)全員男性、しかも7割くらいはSeoul National Universityの卒業生でした。

 さらに注目していただきたいのは「independent」という言葉です。実は、取締役を「社外か、社内か」だけで分けるのは、あまりにも単純すぎるというのはアメリカでは実業界でも、アカデミアでも定説なのです。「社外取締役」の価値とは社内の出世競争とか、CEOの覚えめでたさという「社内要因」にとらわれずに客観的な意見を言うことができることです。しかし、「社外」だからといって、必ず「第三者=independent」かといえば、そうではありません。例えば、その会社の大きな取引先だったり、あるいはその会社のコンサルティングや弁護士業務などをして「利害」が絡んでいるかもしれないからです。

 実際、もうずいぶん昔になりますが、ディズニーの「中興の祖」、マイケル・アイズナーの時代にはそういうことがありました。ディズニーの取締役には、アイズナーの子供が通っている学校の校長先生だとか、アイズナーの家を設計した建築士だとか、いわゆる「お友達」がたくさんいたのです。しかし、飛ぶ鳥を落とす勢いでディズニーの業績を上げていたアイズナーは、前回示した通り(CEOの強い影響力で)自分の思い通りの取締役会を作り上げていました。「社外」と「第三者」は必ずしも同じではないのです。

 そして、極めつけは報酬額の開示です。まず、社外取締役の報酬、そしてその後はジェフ・イメルトから始まるトップ4人の報酬が、その中身及び根拠とともに詳細に示されます(この根拠については例えば他社比較などあり、どの会社を比較先として選んだかなど研究者とすれば突っ込みどころ満載なのですが今回は飛ばします)。社用機を使ったとか、車が貸与されているかなんてところまで入っています。よく、アメリカ企業の経営者の報酬が高すぎるのではないかと議論になりますが、その前提として、そもそも報酬が開示されているというところにも目を向ける必要があるのではないでしょうか。

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「「解決策」としての取締役論議」の著者

清水 勝彦

清水 勝彦(しみず・かつひこ)

慶應義塾大学大学院教授

東京大学法学部卒業。ダートマス大学エイモス・タックスクール経営学修士(MBA)、テキサスA&M大学経営学博士(Ph.D)。戦略系コンサルティング会社のコーポレィトディレクションを経て研究者に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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