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変革のリーダー、天坊昭彦・出光興産相談役が発揮した先見性

外柔内剛、2手先を読む

2014年11月10日(月)

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 注目企業の経営トップや各分野の専門家が登壇し、翌年の政治経済や産業の動向を大胆に占う「徹底予測フォーラム」。今年は12月16日に開催する同フォーラム(プログラムはこちら)に先立って、登壇する企業トップのリーダーシップや陣頭指揮する新たな取り組みを紹介する。

 今回は、フォーラムで基調講演に行う天坊昭彦・出光興産相談役の「先見性」に裏打ちされたリーダーシップを描いた2008年の記事を再掲する。時代の先をじっくりと読み、チャンスと見るや果敢に打って出る。周到な準備も忘れない。だが、声を張り上げて部下を鼓舞することもなければ、泥臭く先頭に立って物事を動かすことも好まない。重視するのはコンセンサスだ。

 今年10月から11月にかけて日経ビジネスに連載された経営教室で、天坊氏も自ら語った独特のリーダーシップ。そこに変化の激しい時代に対処する姿勢のあり方を見いだせるだろう。

(注)記事中の役職、略歴は掲載当時のものです。

2008年9月1日号より

天坊 昭彦(てんぼう・あきひこ)
1939年生まれ、68歳。64年東京大学経済学部卒業後、出光興産に入社。石油開発部門、米国駐在などを経て、88年出光ヨーロッパ社長。91年6月取締役経理部長、98年6月常務、2000年6月専務。2002年6月に社長に就任。2008年5月から石油連盟会長。(写真:菅野 勝男)

孤高の経営を続けてきた出光興産を上場させ、経営危機から救った。経営理念「人間尊重」を後世に残すため、変わり続けることを求める。日本企業初の海外での製油所建設を決断。攻めの社風を復活させる。

 「情けない。何でもかんでも聞きたがるのではなく、自分で考えてほしい。社長が言っているからといって、鵜呑みにしないように」

 7月28日、出光興産の本社会議室は、1 人の声を除いて静まりかえっていた。声の主は社長、天坊昭彦(68歳)。中堅幹部の研修に先立って質問を募集したところ、その内容に覇気がないことに危機感を募らせていた。だが、口調は優しい。親が子供を鍛えるかのように、あえて厳しい言葉を使う。そんな空気が会議室を覆っていた。

 「明治維新が成功したのは、日本人が武士道の精神という中核を持っていたから。これから出光が変わっていくためには原点を忘れてはならない」

群を抜く度胸と先見性

 天坊の言う原点とは、創業者・出光佐三が掲げた理念「人間尊重」。事業を通じて社員一人ひとりが世の中で信頼され、尊敬される人間になれば、会社も社会に貢献できるという意味だ。石油業界を取り巻く環境は厳しい。生き残るためには、もう一度原点を問い直す必要があると痛感していた。

 天坊は2002年に創業家以外から25年ぶりに社長に就任し、株式を公開することで出光の同族経営に終止符を打った。経営不安の淵から出光を救い、成長への道筋を作った男だ。「天坊がいなかったら、出光という会社は今頃、存在していなかったかもしれない」。副社長の中野和久はこう述懐する。

 このような部分だけを取り上げると「豪腕経営者」のようにも映るが、外見からそんなオーラは感じられない。

ガソリンの需要減に、原油高が追い打ちをかける(写真:PANA通信社)

 長身かつ痩身で、文学者のような風貌。喜怒哀楽を表に出さず、常にソフトな物腰を保ち続ける。6 年半の間、秘書として天坊を支えてきた片柳信子は「とにかく人の話をよく聞く。これまで一度も怒鳴っている姿を見たことがない」と証言する。

 声を張り上げて部下を鼓舞することもなければ、泥臭く先頭に立って物事を動かすことも好まない。重視するのはコンセンサス。多くの人が描く強いリーダー像とは程遠いだろう。天坊自身も「皆が納得した結論に“ふわっと”乗っかっていくタイプ」と語る。

 だが、天坊の目を一度でも見れば、並の人間でないことはすぐ分かる。

 感情を表に出さない分、目は雄弁に天坊を語る。相手から目をそらさないのは、物事に動じない「度胸」がある証拠。時折心の内を見透かすような視線を投げるのは、「先見性」の裏返しだ。そして視線の奥には決してぶれない芯がある。

 穏やかな外見からのぞかせる度胸と先見性。この2つを武器に、天坊は過去10 年以上にわたり、出光を変え続けてきた。その歩みを丹念に分析すると、新たなリーダー像が見えてくる。

「徹底予測フォーラム2015プレビュー」のバックナンバー

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「変革のリーダー、天坊昭彦・出光興産相談役が発揮した先見性」の著者

小笠原 啓

小笠原 啓(おがさわら・さとし)

日経ビジネス記者

早稲田大学政治経済学部卒業後、1998年に日経BP社入社。「日経ネットナビ」「日経ビジネス」「日経コンピュータ」の各編集部を経て、2014年9月から現職。製造業を軸に取材活動中

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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