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なぜ愛は急に失われるのか?

人間組織が持つ「不確実」の多面性と非対称性

2014年11月19日(水)

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今回取り上げるのはこの論文――
Cameron, K.S. 2008. Paradox in positive organizational change. The Journal of Applied Behavioral Science, 44: 7-24.

 前回、10月に野村元監督の著書をご紹介したときに、9月をお休みしたのは2学期に新しいクラスを開講する(Uncertainty and Managementという英語が主言語のクラスです)ためという言い訳をしました。今回は、そのクラスの最後に私自身の書いた「Sushi Zushi」というケースとともに取り上げたミシガン大学のキム・キャメロン教授の論文を通じて、ここ数年、地道ですが少しずつ注目されてきているPositive Organizational Scholarship (POS)をご紹介したいと思います。聞きなれないコンセプトですが、中身は読者の皆さんが普段よく「実感」されているはずです。

 POSを単純に言うと、社員・組織のポジティブな面の研究です(あとで少し触れますが「ポジティブ」というのは、きわめて広い意味があり、本文ではそのまま「ポジティブ」で通します)。この分野の第一人者であるキャメロン教授のもともとの専門は企業変革でした(少なくとも私がTexas A&M大学の博士課程にいるときはそうでした)。そこでは、なぜ企業変革は難しいのか、どのように人や組織を動かしていけばよいのかという議論をされていたわけですが、本文を読んでいただくとなぜ彼が力点をPOSに移したかが推察できるのではないかと思います。

 「ポジティブはいいけど、なぜパラドックスなの」というのが、当然出てくるご質問です。それに対しては、私が得意とする「超訳」でパラドックスの中身をまとめると次のようになります。

人間はもともとポジティブなことが好きだし、物事をポジティブにとらえる傾向がある。しかし、だからこそ、数少ないネガティブなことがいったん起こるとそれに引っ張られることが多い。

 例えば、大変評判の良い企業が、ある1つの事件をきっかけに「ブラック企業」の烙印を押されるようになってしまったり、大好きだったはずのあの人のちょっとしたしぐさを見て一気に熱が冷めてしまったり…というようなことです。それはなぜなのか? どんなメカニズムが私たちのそうした意思決定の背景にあるのか? 私たちは何か見落としていないのか? 失った愛は戻ってこないかもしれませんが、POSは組織の変革や成長に関していくつか重要な示唆を提供してくれます。

 なぜこの論文をUncertainty and Managementというクラスで取り上げたかは、私の私見とともに最後の部分で述べます。ちなみに、このクラスは、慶應ビジネススクール(KBS)の提携校から2学期に交換留学で来ている20人のうちの16人(アメリカはもちろん、スペイン、スイス、フランス、ベルギー、スウェーデン、シンガポール、中国などなど)と、KBSおよび他の大学院に在籍する日本人および留学生13人の大混成クラスです。

 英語の得意な2年生は逆に交換留学で海外に行っていたりしますから、クラスを取ったKBS学生の多くは「彼女の英語を話すスピードが速すぎる」「内容は理解できているけれど、口をはさめない」といった「リアルな経験」を毎回しています。そうした学生に私が言うのは、自分の語学力の低さを嘆いているばかりでなく、次のステップへの道を見つけろということです。

 そして、「次のステップ」とは必ずしも「英語力を上げる」ことではなく、「英語が下手でもめげずにコミュニケーションする」「『英語で言われていて、なんとなく違うのではないかと思うけれど、とりあえずイエスという』ことをやめる」「わからなければ、わからないといって恥ずかしいけれど何度でも聞き直す」といったことであると思います。実際、早口で皆から恐れられている(?)あるアメリカ人学生は「日本人の学生は、自分は英語が下手であまり喋れないとか言っているけど、ちゃんと喋ってんじゃないの。自信持ちなさいよ」なんていうことを、飲み会の場で言っていました。

 KBSは世界の一流校約50校と提携しており、KBSの学費でウォートンとかロンドンビジネススクール(LBS)に行けたりするのですが、この良さが意外に知られてなく、そうした国際的な側面を知っていただくために「国際プログラム重視入試」なんていうのを今年からわざわざ設けたほどです。

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「なぜ愛は急に失われるのか?」の著者

清水 勝彦

清水 勝彦(しみず・かつひこ)

慶應義塾大学大学院教授

東京大学法学部卒業。ダートマス大学エイモス・タックスクール経営学修士(MBA)、テキサスA&M大学経営学博士(Ph.D)。戦略系コンサルティング会社のコーポレィトディレクションを経て研究者に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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