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「Web2.0」から「社員2.0」そして「企業2.0」と「日経ビジネス2.0」

  • 谷島宣之

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2006年4月3日(月)

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 「そんな仕事のやり方では、2.0とは言えないね」「あの上司の応対は1.0以前だよ」…。IT(情報技術)の世界、とりわけインターネット関連の仕事をしている人々の間で、こうした言い方がされるようになった。1.0や2.0という数字は、第1世代、第2世代をそれぞれ意味している。

 例えば「社員2.0」という言い方がある。大手コンピューターメーカーの1社、サン・マイクロシステムズはWebサイトで、社員1.0と社員2.0の違いを対比した表を公開している。それによると、自分のミッションを超えて仕事をする社員が2.0、ミッション以外の仕事はやらない社員が1.0、イノベーティブな発見や出会いが1日最低1回ある社員が2.0、ミーティングが葬式のように暗い社員が1.0、などとなっている。とにかくたくさん本を読んでおりブログも読む社員が2.0、すべての情報源が日本経済新聞あたりだけだったりする社員が1.0、というくだりもある。

 物事を1.0と2.0に分ける表現は、「Web2.0」という流行語から来ている。Web2.0はこのところ取りざたされている言葉で、インターネットの利用方法が第2世代に入ったことを意味している。米国のメディア人、ティム・オライリー氏が発表した論文“What Is Web 2.0”が発端のようだ。同氏の論文を見ると、個人のWebサイト(日本で言うところのホームページ)は1.0、ブログは2.0といった新旧対照表がつけられている。

 Web2.0に関しては、いろいろな意見が交わされており、はっきりとした定義があるわけではない。そうした中、シリコンバレー在住のコンサルタント、梅田望夫氏は近著『ウェブ進化論』の中で、Web2.0の本質を次のようにまとめている。

・不特定多数の顧客がインターネット上のサービスを利用するだけでなく、新しい技術やサービスの開発に関わるようになる
・インターネット上のサービス提供者は、不特定多数の顧客の力を活用し、新たな価値を創造する
・顧客とサービス提供者の相互作用の結果、Webの世界の価値は自己増殖していく

 Web2.0に属するインターネット・サービスの代表例として語られるオンライン百科事典「Wikipedia」は、顧客とサービス提供者の連携作業の典型例である。Wikipediaはインターネット上に公開されており、誰でも自由に読め、項目を追加でき、解説文を書き換えられる。誤りを見つけたら当然、修正できる。不特定多数の顧客が集まって、Wikipediaを使い込んでいくと、そのつど新しい情報が付加され、間違いが減り、解説文は洗練されていく、というわけだ。

 インターネットの世界に限らず、サービスや商品を提供する側と、顧客との間には、ある種の相互作用が働いており、それをうまく利用できた企業がヒット商品、あるいは価値のあるサービスを提供できた。しかし、それはあくまでも目に見える特定顧客との関係に限られていた。これに対し、Web2.0の世界では、目に見えない顧客、しかもインターネットを利用している膨大な不特定多数を巻き込める。この点が今までとは大きく異なる。

 顧客とサービス提供者が双方向でコミュニケーションするための道具として、インターネットがあり、ブログやWebサービスなど、Web2.0として総称される技術がある。つまりWeb2.0とは、新しいWeb利用のあり方、サービスを提供している企業、それを支える技術、といった異なる要素を総称したものと言える。

コラボレーションできる企業が「2.0」

 Webや社員の2.0があるなら、企業や経営の2.0も考えられる。その場合は、「あの企業のビジネスモデルは2.0に近づいた」といった言い方になる。Web2.0の特徴をそのまま企業に当てはめてみると、「企業2.0」とは、いわゆるオープンな社風を持ち、社内外にいる不特定多数の人材が臨機応変にコラボレーションし、価値を創造していける企業を指す言葉になるだろう。コラボレーションに際しては、顧客と連携する場合もあれば、企業間で協業することもある。

 この企業像はさほど目新しいものではないかもしれない。そもそも、企業が必ず取り組まなければならないことの1つは、新しい事業モデルや商品の創出、すなわちイノベーションである。経営学やMOT(マネジメント・オブ・テクノロジー=技術経営)の世界において、イノベーションを起こすカギは異業種・異能者とのコラボレーションにある、とかねて指摘されてきた。

 米IBMが先頃発表した「The Global CEO Study 2006」という調査結果によると、インタビューに応じた世界のCEO(最高経営責任者)約800人の65%が「向こう2年以内に、根本的な改革(change radically)を計画している」と回答した。根本的な改革とは、すなわちイノベーションである。そして、76%のCEOがイノベーションの新しいアイデアを「顧客ないしはビジネスパートナー」、つまり社外から得る、と述べた。

 社外とのコラボレーションを加速するには、企業間・ビジネスパーソン間のコミュニケーションを変える必要が出てくる。そのための道具が、インターネットとそれを支える高速大容量ネットワーク、いわゆるブロードバンドネットワークであり、Web2.0で総称される新しい技術になる。このように見てくると、「社員2.0」や「企業2.0」を、単なる言葉遊びの産物とは捉えられないことが分かる。Web2.0によってようやく実現可能となる、社員の働き方や企業のイノベーションを象徴的に表現する言葉なのだ。

ITはアクセル?ブレーキ?

 ここまで読まれた読者の多くは「話は分かるが、簡単に社外と協業できないから問題なのだ」「有象無象が集まって、まともな百科事典を作れるのか」「ITによって、確かにコミュニケーションはやりやすくなったが、その半面、情報漏洩など新たな問題が発生している」などと思われたのではないか。

 その通りであって、インターネットで顧客と直接対話できるようになったからといって、直ちに新しい価値を生み出せるわけではない。価値を創造するより先に、ITそのものにつきまとう、いくつかの大きな問題がある。1つは、情報漏洩である。ファイル転送ソフトWinnyによる相次ぐ情報漏洩NTTデータの元社員による顧客情報の不正持ち出しなど、情報漏洩問題が連日のように報じられている。

 もう1つは、情報システムの障害である。昨年11月、12月に起きた東京証券取引所のトラブルをはじめ、社会の基盤となっている情報システムで不具合が散見されている。マスメディアはITの問題をひときわ大きく報道する傾向があり、そうした中で「ITによってコミュニケーションが密になり、新しい世界が開ける」と声高に言いづらい面がある。

 しかも、IT業界を中心に一種のブームになっている「内部統制」の強化は、オープンなコラボレーションと一見、逆行する流れである。会社法あるいは金融商品取引法といった新法の中で、企業は「リスクを回避できる仕組み(内部統制)」の確立が求められ、その準備のために新しい情報システムが必要になる、と言われている。内部統制は、経営の仕組みそのものであり、取り組むのは当然なのだが、とどのつまりは企業経営のブレーキを強化する話であって、内部統制だけしっかりやれば、優れた企業になれるわけではない。

 企業が前に進むにはアクセルが必要である。アクセルとは、イノベーションへの取り組みであり、それを支えるITの前向きな利活用である。今、企業に課されているのは、アクセルとブレーキを同時に踏み、巧みにコントロールしながら、どの競争相手よりも速く市場を駆け抜けることである。

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