「大澤弘治の「シリコンバレー見聞録」」

大澤弘治の「シリコンバレー見聞録」

2006年4月18日(火)

ハイテク投資、カネさえあればできるほど甘くない

1/2ページ

印刷ページ

 先日、某機関投資家に、「あるトップクラスのベンチャーキャピタル(VC)に出資をしたいので仲介して欲しい」と依頼された。この投資家は世界レベルでも有数の機関投資家であり不思議に思って詳しい話を聞くと、以前にそのVCに出資をしていたが、1980年代後半のハイテク景気低迷時に資金を大幅に引き上げたのだと言う。

 確かに80年代後半は「シリコンバレーは死んだ」とまで言われた時期であり、多くの人が90年代に起こるインターネットを中心としたIT産業の活況を予見できずにいた。その結果、多くの投資家がハイテク・IT分野から資金を引き上げた。この機関投資家もそうした撤退組みの1社だった。
 
 早速そのファンドに可能性を打診してみたところ、80年代後半に、そのファンドのメンバーに加わって間もなかった人物が、現在ではパートナーの中でも中心的な存在となっており、当時のことをしっかりと覚えていた。「その機関投資家には、我が社が厳しい時にサポートしてもらえなかった。残念ながら、当時もサポートしてくれた他の投資家を優先したい」と断られてしまった。

 現在では、新規ファンド募集開始当日に調達予定額の5〜6倍の申し込みがあるようなトップクラスのVCも、当時は資金調達に四苦八苦をしていた時代がある。業界全体が苦しい時期に、どのような投資姿勢を取っていたかどうかが、後になって効いてくる。資金さえあれば、誰でも優良なVCの出資者になれるわけではない。

 プライス・ウォーターハウス・クーパーズの調査によると、米国のVCが2005年に調達した資金は252億ドルにのぼり、バブル期以来の高水準を記録した。プライベート・イクイティ(未公開株)投資の中でも、企業の株式を買収し価値を高めて転売するバイアウト投資と並び、VC投資は人気がある。多額の資金がVCに流入したことにより「バブルの再燃」が懸念されるが、前回のITバブル時とは多くの点で異なっている。

次ページ以降は「日経ビジネスオンライン会員」(無料)の方および「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみお読みいただけます。ご登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。





Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)


Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
この記事を…
内容は…
コメント0件受付中
トラックバック

著者プロフィール

大澤 弘治(おおさわ・こうじ)

大澤 弘治

1961年東京都生まれ。慶応義塾大学理工学部卒業。東北大学工学研究科博士課程終了。
85年、三菱商事に入社。93年から6年間、同社シリコンバレー事務所でベンチャー企業への出資・事業開発を担当。99年に三菱商事を退社後、シリコンバレーにベンチャーキャピタルであるグローバル・カタリスト・パートナーズを設立。米国およびアジアのシードステージ(創業段階)のIT関連ベンチャー企業に積極的な投資をしている。また、グローバルな仕事をするシリコンバレー在籍者によって結成されたJapanese Technology Professionals Association、シリコンバレーの日本人起業家を支援するSilicon Valley Japanese Entrepreneurs NetworkなどのNPOの役員を務めるとともに、東京大学関連のベンチャーに対して投資する東京大学エッジキャピタルのインキュベーションパートナーも兼務する。
グローバル・カタリスト・パートナーズ:http://www.gc-partners.com


このコラムについて

大澤弘治の「シリコンバレー見聞録」

ITベンチャー企業に投資するファンドの立場から、米国の最先端の動きを言及していく。

⇒ 記事一覧

ページトップへ日経ビジネスオンライントップページへ

記事を探す

  • 全文検索
  • コラム名で探す
  • 記事タイトルで探す

編集部よりお知らせ

日経ビジネスからのご案内