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「F1」技術の最適化は企業経営に通ず

  • 宮田 秀明

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2006年4月21日(金)

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 3年ほど前から「理系の経営学」という言葉を使い始めた。同名の書籍を出版し、メディアでも取り上げられたので、この言葉を耳にしたことのある読者もいるかもしれない。

 ただし、言葉の印象からか「理系出身者のための経営学か」と誤解する方も少なくない。「私は理系出身じゃないから関係ないよ」と思われてしまうことは本意ではないので、本来の意味をお伝えしたい。そこで、連載第3回はこれまでとは少し趣向を変えて、「理系の経営学とは何か」について説明してみたい(第1回の記事第2回の記事)。

 「理系の経営学」は、決して理系出身者のための経営学ではない。本来の意味は、科学的論理性を尊重した経営学のことである。「直感」とは対極の位置にある「科学的論理性の重視」を「理系」という言葉で代表させたのだ。科学的論理性が、今や経営の重要な要素であることは言うまでもないだろう。その背景には、時代とともに企業経営が「複雑化・非線形化」していることがある。

 実は、私が長年研究してきたものづくりにおける設計分野でも、経営と同じように「複雑化・非線形化」が重要なキーワードになっている。設計分野と、企業経営にはアナロジーがあるのだ。それを理解していただくには、まずは「複雑化・非線形化」とは何かを説明する必要があるだろう。ここでは、1970年の乗用車と2006年の乗用車のエンジンルームの比較によって説明してみよう。

35年で複雑になったエンジンルーム

 1970年の乗用車のエンジンは非常に単純だった。当時の乗用車のボンネットを開けてみれば一目瞭然である。エンジン本体や気化器や冷却器など、エンジンルームの内部に各部品は独立して存在しており、それぞれがどの部品かを判別することはそう難しくなかった。これは、エンジンを構成するそれぞれの要素がしっかり機能すれば車として成立するということでもあった。少し極端に言えば、部分最適の足し合わせで乗用車を設計できたということだ。

 これに対して、2006年の乗用車では、ボンネットを開けるとその複雑さに驚く。どれがエンジン本体で、それが冷却器で…、と一つひとつの要素を判別するのは難しいし、目に見えない所に電子制御用のマイコンが30個ばかり搭載されていて、大切な働きをしている。35年の歳月で乗用車のエンジンは非常に複雑なシステムに変化し、全体最適の結果として高い性能や安全性を実現しなければならなくなっている。

 自動車レースの最高峰「F1」のレース車になると「複雑化・非線形化」の度合いはさらに高まる。F1では、平均速度が1%遅いと勝利する可能性がほとんどなくなると言われているのだが、この1%の違いは車を構成する「エンジン」「車体」「タイヤ」などの各要素の性能差を単純に足し合わせて算出できるものではない。システム全体として、非常に複雑な要素を組み合わせた総合力で1%の差が生じる。

 2006年の乗用車やF1のレース車のように、解が要素の単純な足し合わせで説明できない時、これを「非線形」なシステムと言う。この35年で技術だけでなく、経営を構成する要素も「複雑化・非線形化」が進んだ。例えば、性能が良くて安全性が高くて燃費のいい車が設計できたとしても、これがよく売れるかどうかは分からないだろう。マーケティングも非線形なシステムであることが多いからである。

経営を「システム」の観点でとらえる

 エレクトロニクス産業を例に、経営における「複雑化・非線形化」についてもう少し説明してみよう。高度成長期以前は、右肩上がりの経済成長の中、国内で製品を生産し、国内で売るビジネスが中心で、製品のモデルチェンジは1年ごとでいいという比較的単純な経営だった。しかし、現在では、それが大きく変わった。部品の調達も生産も物流も販売も、完全にグローバルを念頭に置くことが当たり前になり、製品の寿命は3カ月ほどと格段に短くなった。

 かつては「調達」「生産」「物流」「販売」といった経営の各要素がそれぞれ独立して最適化されていれば、企業経営はうまくいっていたが、もはやそれで済む世界でなくなっていることは明らかである。各要素を組み合わせた企業全体の経営システムを最適化しなければ、激化する競争に勝つことはできない。製品寿命の短縮は、「複雑化」「非線形化」に拍車をかけている。

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