「ネット狂騒時代、テレビ局の憂鬱」

【第4回】新東京タワー建設を急げ
  ネットとのインフラ大競争待ったなし(後編)

電波塔建設を惜しんだ米国TVは視聴率が低下

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2006年4月24日(月)

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番組配信を他人に任せるな

 日本のテレビ局の場合、これまで地上アナログ放送のために1社当たり数十〜百数十カ所に電波塔を建設して、広い範囲を電波でカバーしてきた。対して米国のテレビ局は1社当たりで電波塔を3〜4カ所ぐらいにしか建てなかった。当然のごとく、米国では地上アナログ放送の電波が届かない所がたくさん残った。

 米国のテレビ局が頼ったのがCATV(ケーブルテレビ)会社である。CATVを通じて地上アナログ放送を流してもらった。そうしたらCATVが勢いよく普及。同時にCATV会社が提供する多チャンネル放送の加入者が一気に増えていった。今や米国の多チャンネル放送の世帯普及率は9割に上る。そして多チャンネル放送に押されて、テレビ局の視聴率は下降の一途をたどっている。

 米国のテレビ局が電波塔の建設費を惜しんだばかりの結末だ。

 日本でもCATVを通じて地上アナログ放送を見ることができる。だが同時に日本のテレビ局は、熱心に地上アナログ放送の電波塔を各地に建設した。このことで、CATVなどの多チャンネル放送の普及を押さえ込むことができた。世帯普及率は米国の9割に対してわずか2割にとどまる。

 米国との比較において、日本の民放テレビ局はインフラ面でCATVに頼らないことで、放送市場における自らの地位を確固たるものに育てたと言える。

 電波を通じてテレビ番組を家庭に届ける−−。地上デジタル放送が始まっても、テレビ業界はこの大原則を変えるはずがない。

 地上アナログ放送時代からの流れで、CATV会社には引き続き地上デジタル放送を配信することを容認している。これは仕方がない。

 しかし、ブロードバンド回線経由でも地上デジタル放送が見られるようになれば、テレビ業界にとって大きな脅威だ。ブロードバンド回線を整備する通信会社の巨大な事業規模、既に半数近くの世帯に行き渡ったその普及ペースからいって、CATVよりはるかに大きな潜在的脅威に映る。テレビ各局はいまもって地上デジタル放送をブロードバンド回線で流すことを容認しない。

インフラ整備に残された時間

 だが通信業界が風向きを強引に変えた。通信・放送行政を担う総務省は2005年7月に、地上デジタル放送をブロードバンド回線でも見られるようにする新政策を発表。この政策を打ち出させるために水面下で動いたのがNTTだった。

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著者プロフィール

吉野 次郎(よしの・じろう)

日経ビジネス記者。1期生として慶応義塾大学環境情報学部を卒業。1996年に日経BPに入社し、通信業界の専門誌「日経コミュニケーション」で2001年までNTTと新電電の競争や業界再編成を取材。2007年まで通信と放送の専門誌「日経ニューメディア」で、通信と放送の融合やデジタル化をテーマに放送業界を取材。現在は「日経ビジネス」で電機やIT(情報技術)業界をカバーする。好きな季節は真夏。暑ければ暑いほどよい。お腹の出っ張りが気になる年齢にさしかかり、ダイエット中。間もなく大型バイク免許を取得する予定。著書に『テレビはインターネットがなぜ嫌いなのか』(日経BP)。



このコラムについて

ネット狂騒時代、テレビ局の憂鬱

「ネット」と「テレビ」。通信と放送の融合が進み、新しいメディアの秩序が生まれようとしている。強烈な熱意を持つIT・ネット業界に対して、テレビ業界側の反応は煮え切らない。行くも地獄、残るも地獄−−。ネットとテレビという新旧メディアの間で、テレビ関係者はジレンマに陥っている。この特集ではネットへの対応に頭を抱えるテレビ業界の実像に迫っていく。

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