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【第7回】ネット進出より“おいしい”
キー局と地方局の関係

コンテンツ再利用にも系列をフル活用

2006年5月15日(月)

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 テレビ業界は5社のテレビ局によって統治されている。いずれも東京に拠点を置く、日本テレビ放送網、TBS、フジテレビジョン、テレビ朝日、テレビ東京の5社だ。これらの在京テレビ局は全国の地方局を束ねて「系列」という組織を築き上げている。

 自らの番組をお膝元である首都圏で放送するほかに、系列に参加する各地の地方局に放送してもらうための組織である。そして新作の番組のみならず、放送済みの番組までも系列を通じて再放送して、うま味をしゃぶり尽くしている。

 系列で番組を流通させる仕組みは極めて有効に機能しており、多額の収入を東京のテレビ各局にもたらす。それ故ネットがいかに普及しようとも、系列以外で番組を流通させることには後ろ向きとなる。東京のテレビ各局からすれば、これは当然の判断なのである。

 在京テレビ局の首脳は、「ネット事業に本格的に取り組んでいきたい」などと強調するが、実のところネットにはさほど興味がないわけだ。系列の仕組みを解剖すれば、テレビ業界の裏事情が見えてくる。

 

10億円で地方局を支配する

 東京のテレビ局は系列内で「キー局」と呼ばれ、その頂点に君臨している。キー局が地方局を支配する体制を作れたのには訳がある。

 実は、キー局は「ネットワーク費」などと呼ぶカネを系列に参加する地方局にばらまいている。これはキー局の番組を放送してくれた実績に応じて毎月払っており、年間にすると地方局1社当たり平均で10億円にもなる。全国を見渡すと、ほとんどの地方局は経常利益が数億円程度といった規模である。この規模の企業にとって、10億円といえば大金だ。

 いつしかネットワーク費が麻薬のようになり、それなしでは地方局の経営が成り立たないほど依存するようになる。地方局経営者の立場になって考えてほしい。普通であれば番組を手に入れるために、なにがしかの金額を支払うどころか、番組と一緒に大金までもらえてしまう。通常では考えられないような取り引きが成立してしまう。

 地方局とて、キー局から独立したテレビ局だ。地方局の経営者ともなれば、地元の名士である。そして地域社会のためにローカル情報を発信することが期待されている。

 しかし、今や地方局が地元向けにローカル番組を放送している時間は、全放送時間の平均15%程度にとどまる。半数以上の地方局は10%以下にすぎない。残りのほとんどの放送時間をキー局に差し出し、与えられた東京発の番組を右から左に流している。

 しかも、ネットワーク費には明確な基準などない。これが、キー局に絶大な裁量権をもたらす。キー局の幹部は「地方局が勝手なことをやったら、ネットワーク費を減らすだけですよ」などと、地方局の経営者が聞いたら背筋が凍るようなことを平然と口にする。

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「ネット狂騒時代、テレビ局の憂鬱」のバックナンバー

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「【第7回】ネット進出より“おいしい”
キー局と地方局の関係」の著者

吉野 次郎

吉野 次郎(よしの・じろう)

日本経済新聞社記者

1996年、日経BPに入社。2007年から日経ビジネス編集部で電機業界や自動車業界、企業の不祥事を担当。2015年4月から日本経済新聞社電子編集部に出向中。産業、経済事件を中心に取材・執筆する。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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