アガリクス製品販売停止、発がん促進作用を確認−−。新聞各紙にこんな見出しが躍ったのは今年2月のこと。
国立医薬品食品衛生研究所が行った3つのアガリクス製品の安全性試験の結果、「キリン細胞壁破壊アガリクス顆粒」という1製品に発がんを促進する作用が認められた。このため、厚生労働省が販売元のキリンウェルフーズ社に対し、自主的な販売停止と回収を要請した。同社はこれを受けて製品を回収したが、その他のアガリクス製品に関しても、今回の報道の影響で売り上げが激減してしまったという。
抗がんサプリメントが一転、“アガリクスショック”
アガリクスはカワリハラタケと呼ばれるキノコの一種を利用した健康食品で、“抗がんサプリメント”として人気を博していた。今回、発がん促進作用が確認された製品は1種類のみだが、これまでがんに効くと思って飲んでいたものに、がんを促進する作用という正反対の作用があっただけに、消費者に与えたショックは大きい。
しかしながら、そもそもアガリクス製品のがんに対する効果を証明したデータがどれだけあるのかといえば、甚だ心許ないというのが本当のところだ。
人に対する医薬品やサプリメントの効果を証明する実験方法として最も客観的とされているのが、無作為割り付け比較対照試験(randomized controlled trial、RCT)と呼ばれる手法だ。
これは新薬などの薬効を調べる時などに、同じような患者集団を2つの群、すなわち新薬を投与する群(実薬群)と新薬に似せて作った偽薬群(対照群、プラシセボ群とも呼ばれる)に無作為に分けて、投与後の一定期間の効果を判定するもの。
新薬群と対照群の効果に統計学的に意味のある差が認められ、問題となる副作用も発現しなければ、科学的妥当性の高い根拠(エビデンス)として、新薬を広く患者に使うことが認められる。
なぜこのような厳密な手法が必要かというと、人間には元々自然回復力が備わっており、対照を置かずに単に薬を投与して治ったとしても、それが薬の効果なのか、自然回復力のせいなのか、はたまた薬とは関係のない医師の指導で効いたのか、全く分からないからだ。
これまでに、このRCTの手法でアガリクスの抗がん作用を証明した報告は1つもない。あるのは、動物に投与して抗がん作用が認められたとする報告と、対照群を置かずに幾人かに投与してがんの進行が抑制されたという報告だけだ。
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