前回までは、ブランド名で成功するために必要なネーミングの考え方について書いてきた。例えば、「ネーミングには、9つの誤った通念があること」(連載第2回の記事、連載第3回の記事)、「関係者全員がブランド名について共通理解を持つこと」「消費者の連想を広げるストーリー性が大切であること」(連載第4回の記事)、「時には市場イメージの逆張りも有効であること」(連載第5回の記事)などである。
今回は、企業トップの姿勢について考えてみよう。ブランド名を選択する作業に、企業の最高経営責任者(CEO)は参加すべきだろうか。
CEOが名前を選択せよ
答えは無条件で「イエス」である。
現在のような競争の激しいグローバル市場では、ブランド名は「出荷の直前に決めればいい」「ただの気の利いたマーケティングの一要素でしかない」と言える存在ではない。企業トップがブランド名の決定に参加することで、そのブランド名は単なる商品やサービスの名称ではなくなる。経営革新や企業の若返りのための戦略的プラットホームとして進化するのだ。そうした例を、我々は繰り返し見てきた。
企業のトップは、最高の水準のブランド名を要求できる立場にあるし、要求すべきである。ブランド名は、消費者にとって商品やサービスを選ぶために指針となるばかりでなく、その企業の従業員にとってもビジネスの判断のよりどころになる。うまく活用すれば、企業トップの経営方針とリーダーシップを伝えることができるはずだ。
これまでの連載で紹介してきたブランド名の実例も、ほとんどが企業トップの参加で決まったものだ。
米アップルコンピュータのノートパソコン「パワーブック」は、当時の社長だったジョン・スカリー氏が直接かかわって開発された。米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)の「ファブリーズ」と「スウィッファー」でも、同社の社長が直に関与した。
第1回で紹介したように、米インテルのパソコン用MPU(超小型演算処理装置)「ペンティアム」もそうだ(連載第1回の記事)。当時の会長だったアンディ・グローブ氏が深くかかわった。同氏は、現在ノートパソコン用の主力CPU(中央演算処理装置)となっている「セントリーノ」でも、ブランド名の選択に深くかかわっていた。
日本でも卓越した事例がある。ソニーだ。
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