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膨大な経営データを「未来予測」につなげるIT手法とは

経営に「シミュレーション」は導入できるか(その2)

  • 宮田 秀明

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2006年6月9日(金)

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 前回は、これからの経営の世界で重要性を増す新しいIT(情報技術)ツールである「シミュレーション技術」を紹介した(前回の記事)。コンピューターを使ったシミュレーションは、私が長年携わってきた設計などの工学系の分野では、今や当たり前の技術である。「離散化モデル」という手法を使うのだが、この手法では物理的な事象を何十万、何百万に細かく区分けして、それぞれについてコンピューターで模擬的に実験し、全体像を把握する。

 自然科学の世界では、この離散化モデルによるシミュレーション技術の導入で、これまで手を出すことが難しかった問題がたくさん解けるようになった。結果、製品開発や科学技術の進歩に大きな貢献をしている。

 身近なところでは、前回紹介した自動車の衝突安全ボディーが代表例である。そのほかにも、天気予報や地球環境問題の研究などでシミュレーション技術が予測精度の向上に大きな力を発揮している。地球環境全体をシミュレーションするスーパーコンピューターがメディアで紹介されるなど、科学技術におけるシミュレーション技術の活躍を耳にしたことのある読者は少なくないだろう。

数%の変化が何倍もの変動を引き起こす

 科学技術の分野では、シミュレーション技術の進歩によって、実際の事象を近似的に考えて簡略化した単純なモデルによる問題の解決が、今では昔話になってしまった。だが、経済や経営の学問分野に目を転じると、いまだにこの単純なモデルを基本にして議論されていることが多い。価格と需給バランスの関係などはその最たる例だろう。

 あるサービスで価格を5%値上げしたら、利用者はどれだけ減るか。あるいは10%値上げしたらどうか。その解を導き出すためのモデルは「5%の値上げで利用者が10%減り、10%の値上げで20%減る」というような単純な関係の上には成り立っていない。現実の経済活動は、連載の第3回で紹介したように「非線形」な事象である(第3回の記事)。複数の要素を規定する条件が互いに複雑に絡み合っており、それぞれの要素を単に足し合わせただけでは最適な解が出てこないのだ。

 「需要と供給が均衡することで価格が決まる」という説明はとてもスッキリしており、分かりやすい。だが、現実の経済活動で需要と供給が均衡することはほとんどなく、時間発展的に変化するのが本質である。しかも、経済活動における時間変動は、為替や株価を見れば分かるように自然科学における時間変動よりも急激なのだ。数%の需給バランスの変化が、突如として2倍、3倍の価格変動を引き起こすことが当たり前の「非線形」な事象である。

現実社会は単純モデルでは動かない

 それにもかかわらず、現状では前述のような単純な線形事象として需給バランスと価格の関係をとらえ、需要予測がなされることが多い。それは、単純なモデルを採用した方が、予測結果を導き出す作業が“楽”だからにほかならない。

 経済も経営も「人間」という時間変動の激しい複雑極まりないものを対象としていながら、その対象の理解が曖昧なままだ。経営書などでよく見かける、経営戦略や商品の市場性を2×2のマトリックスに分類して考える手法や、ゲーム理論なども、理系的観点から見るとその有効性は疑問である。現実社会はこうした単純なモデルで動いておらず、はるかに複雑だからだ。

 それでは、複雑な社会、経済、経営のシステムに対して、自然科学と同様の離散化モデルによる複雑なシミュレーションを取り入れることはできるのか。結論から言えば、私はできると考えている。

 ここからは、サービス業のシミュレーションを理系的観点で考えてみよう。

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