「シリーズ「産学連携」」

「ベンチャー企業を立ち上げて共同研究を迅速に事業化します」

第5回 富士通、三井物産、東京大学

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2006年6月14日(水)

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 富士通(株価) と三井物産(株価) は、「量子ドットレーザー」と呼ばれる新しい光デバイスを事業化するベンチャー企業、QDレーザ(QDL、東京都千代田区)を2006年4月24日に設立した。「QD」は量子ドット(Quantum Dot)の頭文字であり、社名は量子ドットレーザーそのものに由来する。富士通が量子ドットレーザーを近未来の光通信のキーデバイスと読み、その事業化にいち早く挑むと世界に向けて宣言したのである。

 事業化する量子ドットレーザーは、東京大学先端科学技術研究センターの荒川泰彦教授との共同研究から生まれた成果である。荒川教授は文部科学省や経済産業省などの行政府が研究資金を提供する大型研究開発プログラム(国家プロジェクト)の研究開発リーダーを複数務める。このプログラムには富士通、東芝、NTT(株価) 、NEC(株価) 、日立製作所(株価) などの総合電機メーカーなどが参加し、産学連携の下に次世代の光・電子デバイスの研究開発を強力に進めている。

 荒川教授が研究開発リーダーとして率いる研究開発拠点は、日本の有力研究大学と総合電機メーカーのエリート研究者が集積し、近未来の基盤技術をつくり出す、日本の代表的な研究開発機関である。卓越した研究開発拠点から誕生した量子ドットレーザーの事業化は、次世代デバイスの第1号として産学連携の真価を問うものになる。日本の産学連携の下で研究開発された独創技術シーズを、日本企業が独創的な製品に仕上げて事業化し、新産業を興すという国家プロジェクトのシナリオ実現を目指すからだ。そのQDレーザを率いる菅原充代表取締役社長に事業化の勝算を聞いた。

――量子ドットレーザーは次世代光デバイスとしてどこが優れているのですか。

QDレーザの菅原代表取締役
QDレーザの菅原充代表取締役社長。富士通研究所ナノテクノロジ−研究センターのセンター長代理も兼務

菅原 量子ドットレーザーはビル内に張り巡らされる光LAN(光ファイバーによる構内情報通信網)の通信を高速化、大容量化、低コスト化するキーデバイスです。レーザー光の波長は1.3マイクロメートル(マイクロは100万分の1)です。

 米IEEE(電気電子学会)は2006年内に、毎秒10ギガビット(ギガは10億)という大容量伝送向けの光LANの通信規格を標準化する予定です。ビル構内のLANの高速化・大容量化のニーズが高まっているからです。この光LANに使う光源の大部分を量子ドットレーザーで占めたいと考えています。

 富士通と富士通研究所(川崎市)は、2006年3月に量子ドットレーザーを光源に利用したビルでの伝送実験で、300メートルの光ファイバー間を毎秒10ギガビットと従来の約10倍高速で伝送する実験に成功しました。現在多くのビルに敷設されているマルチモードの光ファイバー(MMF)網を利用し、大容量伝送が可能なことを実証しました。

 量子ドットレーザーの一番の特徴は、使用温度20〜70度という室温付近でレーザー出力が一定で、使いやすいことです。従来の半導体レーザーは温度が変化すると出力が変わってしまうため、レーザーを一定温度に維持する温度調整機器が必要となり、その分だけ装置が大型化・高コスト化していました。このため、量子ドットレーザーを光源に使うと、低コスト化も実現します。

――製品化はいつ頃になりますか。

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著者プロフィール

丸山 正明(まるやま・まさあき)

丸山 正明

日経BP産学連携事務局編集委員。東京工業大学と東海大学の大学院で、非常勤講師として「材料選択の仕方」「技術経営実践論」「産学連携事例」などを講義。経済産業省、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、産業技術総合研究所などの政策評価/技術評価/事業評価委員を務める。主な著書は「社長のためのTLO活用ブック」「東工大COE教育改革」「産業活性化を担うプロジェクトマネージャー養成講座」「九州大学COE大学改革」など


イノベーション・ジャパン2007



このコラムについて

シリーズ「産学連携」

大学と産業界との連携の仕方を主に取材している丸山正明が、産学連携によって生み出されるイノベーションの事例を紹介。基礎研究から事業化にいたるまで、産学連携が成功するための秘訣を探る。

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