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東海道新幹線を生んだ
旧日本軍の「創造のプロセス」

科学的経営から見た「失敗学」と「成功学」

  • 宮田 秀明

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2006年6月23日(金)

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 1972年に大学院の修士課程を修了した私は、石川島播磨重工業(IHI)(株価)に入社し、本社の船舶基本設計部に勤務した。

 新入社員である私の机の上には、手回し計算機があった。ハンドルを回して内部の歯車を回転させることで、四則計算を行う当時の“コンピューター”である。それと一緒に、積み上げると30センチにもなろうかという分厚い2冊の冊子が机上に置かれていた。

1%数字がずれても納入できない

 1冊は、IHIが明治以来、設計建造してきた2000隻余りの商船の要目表である。世界の海で活躍してきた船の1隻1隻について、その全長や幅などの基本データに始まり、試運転の結果、特記事項に至るまで、船の設計に関する数多くの重要データが事細かに掲載されたA3判の冊子である。

 もう1冊は、設計ルール集。過去の実績に基づいた設計の経験則がルール化され、ぎっしりと詰まった冊子である。これらの冊子は、手回し計算機と計算尺、ソロバンとともに当時の船舶基本設計の基本的な道具だった。私が入社した70年代から徐々に、これらの冊子に書かれていた設計情報は科学的に解析され、新しい設計手法であるコンピューターシミュレーションへと継承されることになる。

 2冊のうち設計ルール集は、先輩技術者の数々の失敗から導かれた「べからず集」で、いわば「失敗学」の教科書だった。守らないと痛いしっぺ返しを食らうので、中に綴られたルールから逸脱することは絶対に許されない。冗談ではなく、ルールとして記述された設計基準からほんの1%ずれた設計をしただけで契約速力が出なくなり、建造しても発注者に納められないことだってあり得るのだ。実際、入社から数年後にこのルールをほんの少しだけ逸脱した船を担当して、たっぷりと苦労させられた経験がある。

 設計ルール集が失敗学の教科書ならば、もう1冊の要目表は「成功学」の事例集だった。発注者からの困難な要求を総合化し、商船として仕上げる一連の作業の結果が数値情報で記載されている。ただし、淡々と数字が並ぶだけで「どのようにプロジェクトを進めたらうまくいくか」という成功の秘訣はどこにも書かれていない。プロジェクトを成功に導く能力は、記載された数値情報を参考にしながら、技術者として設計の経験を重ねることで獲得していくことになっていたのである。

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