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科学技術が生み出した人類のジレンマ

  • 宮田 秀明

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2006年7月14日(金)

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 先日、台湾で最大の技術研究所である工業技術研究院(ITRI)の副院長一行の来訪を受けた。ITRIは、1973年の設立以来、産官学の連携などを柱に半導体や液晶パネルといったハイテク産業の振興で重要な役割を果たしている。1時間ほどをかけて訪問団に説明したのは、私たちの研究グループの新しい研究の理念と具体例である。

 「これからの工学系の研究者は、製造業向けの技術開発の知見を生かしてサービス業などの社会システムも研究対象にすべきです。実際、私たちの研究グループはこの数年、社会システム分野の研究で成果を出しつつあります。世界には“アドホックなシステム”が多すぎるので、それを変えていかなければならないのです」

 こうした話をしたところ、大袈裟なくらいに感心された。「あなたはスマートな方だ」「説明がとても刺激的でした」。社交辞令のお世辞には照れるしかなかったが、私の説明に対する彼らの理解は早かった。そのことが印象的だった。

「局所最適」は「全体最適」につながらない

 「アドホック(ad-hoc)」というキーワード、読者の皆さんにとっては耳慣れない言葉かもしれない。アドホックは“その場限りの”という意味のラテン語である。訪問団への説明では、短い時間軸でしか考えない局所最適解の足し合わせという意味で使った。アドホックの対極にある言葉は、長い時間軸を見据えた「全体最適」である。

 例えば、家電量販店にずらりと並ぶ大画面の液晶テレビに使う液晶パネル。家電業界にとっては久しぶりの大型商品だけに、メーカー間の増産競争は激しい。メーカー各社は生産ラインに巨額の設備投資をして市場シェアを争うわけだが、それぞれのメーカーは独自の判断で将来を予測する。必ずしも市場全体の需要と供給のバランスを予測して経営判断を下しているわけではないので、液晶パネルは時として供給過剰になり、価格が暴落することがある。メーカーにおけるアドホックな局所最適解を足し合わせることが、必ずしも市場全体の最適解を生み出すわけではない。

 資源エネルギーや海運などの産業もそうである。石油は45年で枯渇すると言われて20年が経過している。海上で新しい油田が発見されて可採埋蔵量が増えているからなのだが、それはいつまで続くか分からない。不安定な中東情勢や投機的資金の流入などもあり、原油価格は1バレル当たり70ドルを超える水準に高騰した。

 それに伴い、昨年末は原油タンカーの運賃が最低価格の10倍という高水準になった。現在、すべての海運会社がタンカーを増産中である。需要が高まっていることから船の値段も2倍になった。5年後にはあまりの船腹過剰で業界全体としては大問題が発生するかもしれないにもかかわらず、今はともかく目先の利益を求めて増産ラッシュ。各企業の動向には長期的視野は感じられない。これも局所最適の積み重ねが全体最適へと向かわない例だ。

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