富士重工業は軽自動車の新しい価値観を提案すべく、「スバルR2/R1」を発売した。しかしこの個性的な車に対するマーケットの反応はにぶく、販売は伸び悩む。販売店からは、「もっと分かりやすい車が欲しい」という声が相次いだ。 巻き返し策は、軽自動車市場の“ど真ん中”に新車を投入することだ。こうしてスバル初の背高タイプ軽自動車「スバル・ステラ」が誕生した。絶対に「負け」が許されない勝負に挑んだ開発総責任者は何を考え、何をステラに込めたのか。 (日経ビジネスオンライン)
「単身寮に入りますか?」
パワートレイン(エンジンと駆動系)開発一筋だった宮脇基寿は、この1本の電話から、新型軽自動車「ステラ」開発PGM(プロジェクトゼネラルマネジャー=開発総責任者)としての生活に足を踏み入れた。
1978年入社の宮脇は、現在のスバル車に搭載されているすべてのエンジン開発にかかわった。オランダのファンドーナ社との提携による日本で初めてのCVT(連続無段自動変速機)開発には、立ち上がり当初からかかわった。しかし、車両開発PGMの経験はない。ステラが初仕事だった。辞令より先に入寮希望かどうかを問う電話が来たのは、2004年のことである。宮脇は三鷹のエンジン研究部門から群馬県太田市の車両開発部門へと異動した。
「R2/R1」開発時からステラの基本構想はあった
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「私がPGMに着任した時、既にステラの基本構想は社内にありました。『スバルR2』、『スバルR1』のプラットホーム(車両の基本骨格)を開発する時、背の高い大空間型ワゴンまでを視野に入れていたのです。どのくらいの室内高でどのようにシートを組むかというパッケージングの先行スタディは既に行われていました」と宮脇は語る。
R2は2003年12月、R1は2004年12月の発売。共に背の低いハッチバックスタイルの軽自動車であり、競合他社にはない独特の商品キャラクターを持つスバルらしい車種ではあるが、売れ行きはいま一つだ。「軽自動車規格いっぱいにボディが大きければいいということではない。小さいことがスマートなのだ」という提案だったが、軽市場の主流は相変わらず大空間背高ワゴンである。
販売店は「見た目の分かりやすさがほしい」
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「ディーラー店頭への集客につながる商品、お客さんから『指名買い』される商品を大至急つくってほしい」──。販売店側は富士重工本社にこう要望していた。実際、背高ワゴンの両雄スズキ「ワゴンR」とダイハツ工業「ムーヴ」の若年購入層は、グレードもオプション装備も自分で決めてくる。セールスマンが説明する必要がなく、説明を聞く耳を持たない。事前に徹底的に調べて「指名買い」する。ところが、「プレオ」にはそうした指名買いがなかなか入らないという。販売店からは「背高ワゴンのような、見た目の分かりやすさがないからだ」という声が多いという。
プレオの全高は1550ミリ。この高さに合わせて着座姿勢を決め、操作系をレイアウトしてある。身長180センチの乗員でも頭がつかえることはない。しかし、客にとっては「分かりにくい」のだという。「スバルには背高ワゴンがない」ということになり、背高支持層はハナからスバル店をディーラー巡りの候補に入れていない。「ユーザーの選択肢に入る商品」としての背高ワゴンを販売店は渇望していた。
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