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「安くて速い船」の開発で体験した生みの苦しみ

成功の条件は「コンセプト」から「実証」までの短期化

  • 宮田 秀明

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2006年8月4日(金)

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 1990年7月27日。私は、学生たちと一緒に広島県の尾道にいた。宿泊した民宿「大元荘」は海辺に建っている。この日は、民宿の石垣に当たる波の音を聞きながら、まんじりともしない夜を過ごした。

 「この船には、何か重大な欠陥があるのだろうか?」

 「このプロジェクトは失敗か?」

 前日、中部瀬戸内海で、私たちが設計した水中翼実験船「エクセラー」が初航海を終えた。予定速度の27ノットは達成できた。だが、帰港するために進路を北に向けた頃から、徐々に波や風が高くなった。すると、いきなり“ガクン”とヒザを折られるような衝撃を受けた。船首が急に沈み、船に急ブレーキがかかったのである。同じように速力を上げていくと、同じ挙動が繰り返される。帰港まで重苦しい雰囲気が、狭い船内に充満した。

 前方の水中翼回りの水流を観察するため船首に取り付けたビデオカメラが状況を収録していた。帰港して、すぐにビデオを見ると船体が持ち上がりすぎている。結果、前方の水中翼が空中に露出して、失速の原因になっていた。もし、これが飛行機の試験飛行だったら、この失速は大事故につながったに違いない。そう思うと背筋を冷たいものが流れた。

不惑を目前に水中翼船の開発に挑戦

 「水中翼船」は、その名の通り「水中翼」と呼ばれる構造を備えた高速船である。水中翼は、船腹よりも下に取り付けられていて、これが高速での航行を可能にする。高速で航行する時には水中翼で得た揚力で船体が持ち上がり、水からの抵抗を小さくするのである。

 恐らく、水中翼船に乗ったことのある読者はそう多くないだろう。日本では現在、瀬戸内海の西部(松山、広島、小倉航路)や、佐渡島、種子島、日韓航路で使われている。もしかすると、むしろ香港で乗船した方が多いかもしれない。

 水中翼船の開発は難しい。

 私が水中翼船の開発プロジェクトを始めたのは、実験船の初航海からさかのぼること4年前の86年。「不惑」を目前にした時のことだ。

 水中翼という考え方はかなり以前からあった。ただし、私が開発に着手した時点で実際に商用サービスで使われる水準の船は、旧ドイツ海軍と米国海軍が開発した技術を基本にしたものだけだった。

 ドイツ海軍は、第1次世界大戦後に水中翼船の開発を始めたものの、10隻以上の試作艇を造ったが成功には至らなかった。実用技術は、戦後にスイスのシュプラマルという造船会社に引き継がれてようやく完成した。60年代に、日本国内のいくつかの造船会社が、シュプラマル製と類似型式の水中翼船の自主開発に取り組んだが、商品化にまでは至っていない。

 ビジネスとして成功したのは、シュプラマルから技術導入した日立造船だけだった。この日立造船の水中翼船は50隻以上が建造され、輸出もされ、様々な場所で活躍したが、波に弱いという欠点があった。

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