「経営の情識」

ITは出世の道具か、妨げか

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2006年8月21日(月)

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 「IT(情報技術)は出世に役立つ。このくらいはっきり言わないとダメじゃないでしょうか」

 「うーん、出世ですか。出世って最近あまり使わない言葉ですね。残念ながらITが出世の妨げになってしまうことが多いように思います」

 「そういう発想で報道しているから、ビジネスリーダーの人たちがますますITから遠ざかろうとするのですよ。もっと前向きに考えられませんか」

 「今年から前向きな姿勢で報道する、と決めたのですが、どうも習い性でつい」

「野心家」の人たちもITのそばには寄りたがらない

 「なぜ、こんなことを申し上げるかと言いますと、ある種の先送り主義が広がっているのではないかと危惧しているからです。情報化のコンサルタントという仕事柄、経営者の方、経営者予備軍の方、そして情報システム責任者の方、情報システム部門の方に、それぞれお目にかかります。ところが、ビジネス側、IT側を問わず、50歳を超えたマネジメントの中に、『景気も上向いてきたし、なんとかこのまま大過なく定年を迎えたい』と真顔でおっしゃる方がいるのです。そんなことを言わずに、ITでビジネスを変えましょう、と申し上げたいところなのですが」

 「現実にはビジネスを変えるどころか、内部統制とか、情報漏洩とか、情報システムの障害とか、リスクがらみのIT課題が多いですからね」

 「リスクマネジメントは重要ですが、それは攻めがあってこそ意味を持つわけです。とはいえ、大過なく過ごしたいという方に無理強いをするわけにもいかず、40代のビジネスリーダーに、ITを使って一勝負しませんかと働きかけています。ただし、いい意味で野心家の人も、ことITとなると、あまりそばに寄りたくないみたいです」

情報システム部門と連携して腕を振るってもらう

 「ビジネス側のエースを、情報システム部長に据える企業が出てきていますが」

 「それは1つの傾向です。単なる人事ローテーションではなく、将来の役員候補者には、ITを1回経験させておこうという、経営の意思が働いていますね。若いころITにかかわったということを評価して、昇進させる企業も出てきました。大変いいことですが、情報システム部門は今、内部統制の議論とセキュリティー対策で手いっぱいになっていて、せっかくビジネス側の人材が着任しても、ビジネスリーダーとしての腕をなかなか振るえないのです」

 「情報システム部門ではないとすると、どこで腕を振るうのですか」

 「何でもいいのです。新規事業でも、営業強化でも、品質改善でも、社員教育でも。IT万能論みたいなことを言うと、鼻白む人がいるかもしれませんが、ビジネスとITの両方を絡めて創意工夫をする余地はたくさんあります。自分の担当部署をよくするために、情報システム部門とうまく連携して、新しい試みをしてもらう。そして成功し、出世していただく」

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著者プロフィール

谷島 宣之(やじま・のぶゆき)

日経BP社 コンピュータ・ネットワーク局 編集委員
1985年に記者となって以来、情報システム関連のテーマを取材し続けている。システム開発プロジェクトについては、100件以上の実例を報道してきた。関わった媒体は「日経コンピュータ」「日経ウオッチャーIBM版」「日経ビズテック」「ITpro」「日経ビジネスEXPRESS」「経営とIT」など。「経営者とIT担当者の間にある溝」に最大の関心を寄せる。

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