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特許無法地帯に出でよ「特許白バイ」

2006年9月4日(月)

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 「中小企業は特許を取れ!」とよく言われる。

 しかし、どうもその手の議論をする学者や、ジャーナリストには特許に関して、誤解が多いように思う。

 まず第1に、特許は決してタダではない。

 特許申請料自体はそれほど高いものではないが、弁理士に特許の申請書を書いてもらう費用は非常に高い。むろん自分で書けばタダだが、特許の申請に使用される言葉は、意味が曖昧にならないよう、言葉の使い方に特許申請独特の特殊ルールがあり、一般の文書と表現の仕方が違っているので、素人には難しい。また「権利の範囲」の設定の仕方で、特許が有効になったり、無意味になったりするから、弁理士に任せる方が得な場合が多い。この弁理士費用が高い。

海外の特許も取れば維持費は1000万円をオーバー

 次に特許が成立しても審査請求をしなければ、侵害者に対して対抗力を持たない。この審査請求の費用が馬鹿にならない。

 さらにその後、毎年特許維持費用がかかる。特許成立後、最初の3年間は毎年約2万円だ。その次の3年間(4年目から6年目)は毎年約3万円必要だ。その次の3年間は6万円、その次の3年間はさらにその倍、というふうに倍倍で増えてゆく。日本の場合権利範囲が狭いので、権利を保護するためにはいくつかの応用特許、周辺特許も押さえるのが普通だから、毎年何十万円が必要になる。

 さらに海外の特許も取るとなれば、(今なら、最低でも米独仏中韓くらいは必要だろう…)軽く千万円単位の話になる。

 多くの中小企業にとって、そのような費用は負担が大きすぎるし、後に述べるような理由で、仮に侵害されても裁判で勝利をするのは非常に難しいし、面倒くさいから、結局特許は「持ち腐れ」になる。

 だから、そもそも取らない、あるいは、特許を申請しても審査請求もせずに放置する。(特許を申請しておけば、もし第三者が同じ技術で特許を申請した時に、元々その技術を持っていたことを証明する証拠になる。つまり防衛的な意味で申請する)

相手の工場に立ち入って特許侵害を調べるのは困難

 第2に、「特許料をわざわざ払いにいく人は稀だ」、ということだ。

 自分のアイデアが他人の特許に抵触すると分かったら、次は「何とかこの特許から逃げる工夫はないかな」と考えるのが常識だ。そしてちょっとした抜け道や欠陥を見つけて、「元の特許に抵触しない」という理屈づけをする。どうやっても逃げられない場合もあるが、その時には「まあ、文句を言ってきてから考えよう」と思う。それを「けしからん」と思う人は、研究開発をやった経験のない人だ。研究の現場では当然の発想だ。

 従って特許は、侵害された時に「貴社のXXは、私の特許権を侵害している。特許料を払え」とガンガン文句を言って初めて効力を発揮する。

 ところが特許を侵害しているかどうかを調べるのが非常に大変だ。製品特許であればまだマシで、「相手の製品を買ってきて分解する」という手段があるのだが、侵害した製品が500円、1000円ならともかく、何千万円、何億円という値段になってくると、相手の製品を買うことすら容易ではない。もし分解して「侵害していない」ことが分かったら、全く無駄になってしまうのだ。

 製法特許であればさらにやっかいで、製造工程を調べてみなければ分からない。相手の工場に立ち入って、製造工程を調べることなどできようはずもない。

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「特許無法地帯に出でよ「特許白バイ」」の著者

橋本 久義

橋本 久義(はしもと・ひさよし)

政策研究大学院大学名誉教授

政策研究大学院大学名誉教授。東大卒後、通産省入省、製造業担当。1994年埼玉大教授。97年政策研究大学院大学教授、2011年から現職。現場に近いところで行政を・学問を!をモットーに多数の工場を訪問。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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