• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

スタジアムは眼に見える市場なのだ

  • 石山修武

バックナンバー

2006年10月5日(木)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 もの・つくる人に会いたいと考えた。会って、そのつくる現場で話を聞き、つくっている空気や、その匂いも嗅ぎたいと考えた。何故ならば、その事が今の自分にはどうしても必要なように思うからだ。

 自分だって、ものつくる人の片割れである。建築デザインを業としているので、直接にものを手でつくり出しているわけではない。間接的にやっている。しかし、厳密に、原理的に考えようとするならば、今の日本で自分の手でものをつくり出している人は皆無に近い。陶芸等の伝統的手工芸の世界にそれらしきはあるやも知れぬ。しかし、その世界の現代的な意味合いは実に小さい。価値が無いとは言わぬが、歴然として小さい。

 やっぱり、今は組織社会である。個人の尊厳をどうしても表現したいという類の人間は確かに存在する。しかしながら、その働きの意味合いは純粋芸術的なものか、あるいは文化的批評のそれに限定される。高い価値を持つものもないわけではないが、広範な力は持ちづらい。

今の職人はどこにいるのか

 かく言う自分が何故ものつくる人にどうしても会いたいと思うに至ったかをまず述べる。建築デザイン・教師・銅版画家・著述業が職業である。多面的であると我ながら言えなくも無いが、実体は支離滅裂で、まとまりがつかぬだけだ。まだ、この道一筋が賞される日本社会では少しばかり枠外者でもある。教師として大学という時代遅れの組織に属してはいるが、中途採用者でもあり、明らかに大学人ではない。詳細を述べるのは無意味であるからよすが、要するにどの業界にも居心地の悪い、言わばホームレスである。だから、俺は自由だと小さくつぶやきながらも、その実、不安の最中にある。これまでもそうであったし、今もまさにその只中にある。

 自分の先行きが不安になると、あっさりと他力に頼ることにしている。即物的人間であるから他力と言っても仏教的観念とは程遠い。今の社会で、もの・つくる人達の知恵に学ぼう、インタビューしてみようという他力である。1980年代にもそんなことがあって、その時には毎月1人の、ものつくる人に会って、それが100人を超えた。10年がかりの仕事になった。コラムづくりの大名人であった山本夏彦翁の教えを受けながらの仕事だった。山本さんは「現代の職人」なるタイトルを考えて下さった。

 「今の職人らしきは、人里離れた工房にはいない。大きな会社のビルの中にいるはずだ」と青くさい息を吹き上げたら、「それは、良い。是非やってみろ」とのことであった。

 それで、超高層ビルをつくる職人として、日建設計という大組織事務所の副社長・林昌二を取り上げたりした。着眼点は良かったが、まだ充分に書き切れたとは言えなかった。やはり、残念ながら、結果として組織内の人と言うよりも、個性豊かな名のある個人が対象となることが多いのであった。

 「本当はね、そこらの名もない普通の生活者を職人として書くのが一番なんだが──」と山本翁の言葉が身にしみた。非力さをつくづくと思い知ったのであった。それ故に、現代の職人に学ぶ、再チャレンジの今度、「もの・つくる人に聞く」では、そこから始めたいと考えたのである。

コメント0

「石山修武の「もの・つくる人賛歌」」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

トランプ政権のここまでの動きはスロー。

ジョセフ・ナイ 米ハーバード大学特別功労教授