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研究者の飢餓感を奪う潤沢な国家予算

“産学分断”は、なぜ拡大し続けるのか

  • 宮田 秀明

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2006年10月13日(金)

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 東京大学の本郷キャンパスには、長さ86メートル、幅3.5メートルの細長い水槽がある。

 これは、船型試験水槽といって、1937(昭和12)年に海軍の外郭団体、海防義会の寄付で建設されたものだ。当時の工学部長は海軍から来た平賀譲先生だったので、その尽力が大きかった。

 船舶の研究のためには水槽が不可欠。だから世界中にたくさんの水槽がある。最も大きいのは米国海軍のものだ。ワシントン郊外にあって長さが1キロもある。東大のものは最も小さいものに属する。

メンテナンスに「200万円なり」

 この小さな水槽はたくさんの技術開発成果を生み出した。船の先端水面下についている丸い突起(船首バルブ)は戦前のドイツで開発され、戦艦大和にも採用された。戦後に、これを大型化して商船用に普及させたのは私の先輩だ。それを新しい理論で全く新しい形にして普及させたのは私の30代の仕事である。高速船の開発でも、アメリカズカップでも、この小さな水槽の貢献は計り知れない。この研究分野では、東大の水槽は世界のメッカだった。世界中の船が私たちの研究成果の恩恵を受けていると言ってもよい。

 水槽の両側には鉄道と同じレールが敷かれていて、その上を電車が水に浮かんだ模型船をつないで走る。こうして実験が行われるのだが、とてつもなく高い精度が要求される。だから、レールの高低差は86メートルの間でプラスマイナス0.25ミリ以下でなければならない。このためにレール調整という工事を外注すると、高低の調整だけでも最低200万円、フルセットで行うと1000万~2000万円かかる。2年に1回は行わなければならないメンテナンス作業だ。

 29歳で東大に移り、この水槽を管理することになった。ところが研究室の研究費の残高は300万円余りしかない。水槽をメンテナンスすることと、研究費を稼ぐことが最初の研究室経営のミッションになった。

 レール調整は、学生をアルバイトにして、自分たちで作業することにした。水面は地球の曲率で少し丸くなっているので、基準面は水面である。水をためた側溝からの高さをマイクロメーターで測り、プラスマイナス0.25ミリより外れている点の枕木の下に薄い真鋳の板を入れたり、抜いたりして調整していく。枕木の数は約120ある。

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