「Web2.0(笑)の広告学」

「自己表現もラクじゃない」

BBCとNHKから学ぶ、これからの広告の手がかり

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2006年10月17日(火)

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 いきなりですが、「自己表現」、と言われても、なかなか難しいことですよね。

 個人の情報発信が手間もコストも非常に楽にできるようになった。これがWeb2.0を支えている、と言われますが、それはあくまで手段であって、表現や発信の中身まで面倒見てくれるわけじゃない。詩人のように言葉を紡ぐことができればいいのですが、それができないからプロが存在するのでしょう。簡単にはいかない。デジカメやケータイ電話で撮影した写真や動画を使う手もありますが、他の人と違いの出るものを撮影するのはカンタンではありません。

本、映画、リンク、アバター…

 そこまで大げさに考えなくても、自分という存在を、一度も会ったことのない他人に(できるだけ)正しく伝わるように表現する、くらいは考えますよね。ニーズを反映して、いろいろな手段がブログやSNSに現れています。共感する他のブロガーの記事を紹介したり、リンクを張る。自分が所属するコミュニティをアクセサリーのように並べる。アバターのような分身キャラクターで表現する方法もあります。

 私個人の場合、ブログで「こんな本を読みました」「こんな映画を見ました」と感想と一緒に本やDVDの表紙やパッケージ画像をネット書店のAmazonのツールを使って表示させていることが、一番の自分語りかもしれません。

 というのも、服装や時計といったものに対しては「それが原因で損をしない程度にマトモ」ならいいやというぐらいの興味しか正直ないので、それであまり自分語りをしたいとは思いません。ちょっと前に『人は見た目が9割』という本が話題になりましたが、ブログやSNS上のさまざまなツールを使った表現も重要な「見た目」要素であるように思います。

 さて、これは企業にとってみれば大きなチャンスです。自社の商品やサービスが、「僕はこうですよ」という表現をする消費者の行動にうまく寄り添うことができれば、自己表現のツールとして活用してもらえる可能性があるわけです。

 今日のユーザーに選ばれるということは、なにがしかのカタチで消費者の自分語りに参加・貢献しているわけであり、やがて花が咲く芽はきっとあるはずです。

イギリスBBCの「音楽立方体」

 しかし、自分語りの道具ってどうやったらうまく作れるんだろう? と企業側の目線で考えていたら、英国のBBCが始めたサービスが見つかりました。これがなかなか面白い。

 BBCは日本のNHKと同じく、テレビとラジオの公共放送ですが、インターネットへも積極的に展開しています。そこで見つけたのがBBCのラジオ放送Radio 1の「ミュージキューブ(musicubes)」。日本語にそのまま翻訳すれば「音楽立方体」。

 サイトにアクセスして、自分の好きな音楽ジャンルを選び、さらにそれぞれのジャンルの嗜好度合いを選択することで、各自の音楽の好みが一目で分かる立方体「cube」が完成するというものです。例えば、ロック40%、レゲエ30%、ハウス20%、ジャズ10%といったように、選択した各ジャンルの合計が100%になるように構成して、自分の音楽の好みの割合をキューブで表現する事ができるのです。完成したキューブは、自分のブログに貼り付ける「ブログパーツ」としても活用できます。

 さらにミュージキューブの各ジャンルをクリックして進むと、radio1のラジオ番組のアーカイブ(過去に放送した素材)からそのジャンルにマッチした音楽を聴くことができます。  ちなみに、私が作成したミュージキューブは、コチラです。

NHKから出たブログツール「NHK時計」

 日本の公共放送NHKも負けてはいません。先日配布を開始したブログツールが「NHK時計」です。昭和43年頃から平成3年頃まで、午前7時、正午、午後7時に、テレビの画面に登場していた「あの時計」ということで、多くのブロガーからさっそく反響があり話題になっています。

 今や腕時計が機能以上に装飾的意味合いが強いのと同様、ブログ上のNHK時計も、自分のブログのファッションアイテムとして使われているように思います。

 一連の不祥事で風当たりの強いNHKですが、「NHK時計」へのポジティブなリアクションは、多くの人の心の中に慣れ親しんだ映像という、貴重なコミュニケーションの種がちゃんと残っていることを証明していると言えるのではないでしょうか。

「俺ってこういう人」…それって、ブランド?

 最初に紹介したBBCのミュージキューブには、自社のサービスにつながる導線がきちんと設計されているわけですが、それ以前に利用する人の自己表現ツールとして活用できるようになっていることにまず注目すべきです。

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著者プロフィール

スダシン(須田 伸 すだ・しん)

須田 伸

サイバーエージェント ネットトレンド研究室長/コミュニケーションディレクター。1992年株式会社博報堂入社。CMプランナー/コピーライターとして「ACC賞」「日経広告賞」「消費者のためになった広告コンクール」などの広告賞を受賞。 1998年カンヌ国際広告祭ヤングクリエイティブ・コンペティションに日本代表コピーライターとして出場。2000年にYahoo! Japanに転じてコミュニティサービス担当プロデューサーとして「ヤフー・チャット」を立ちあげ「ライブチャットイベント」では初代「Y! Chat MC」として活躍。2002年より株式会社サイバーエージェントに勤務。同社の企業ブランドを一新する。現在は同社ネットトレンド研究室長。ブログとインターネット広告に関する著書として『時代はブログる!』(アメーバブックス)がある 。「サイバーエージェント/アメーバ」は、2008年度グッドデザイン賞を受賞。



このコラムについて

Web2.0(笑)の広告学

ブログやSNSのように、普通の人がインターネットで気軽に情報を発信するようになったことが「Web2.0」という流行語(バズワード)を生みました。Web2.0の切り口には、技術も、商売も、哲学もありますが、このコラムでは、基本的に「広告」という視点で考えていきます。筆者はテレビ広告業界を経験後、サイバーエージェントに転じ、ネット広告の世界で活躍している須田 伸氏です。

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