「Web2.0(笑)の広告学」

Web2.0(笑)の広告学

2006年10月24日(火)

マスコミがないと成立しない日本の「YouTube」

「俺の話を聞け社会」と「そうだよね社会」の違い

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In the future, everyone will be world-famous for 15 minutes. Andy Warhol
未来においては、誰もが15分間有名になることができる。(アンディ・ウォーホール)

YouTubeの本来の目的は「自分を放送しちゃおう!」

 YouTube(ユーチューブ)のサイトにあるキャッチフレーズは「Broadcast Yourself」です。「自分を放送しちゃおう!」という実に能天気と言えば能天気なキャッチフレーズですが、創業者の2人も今回の買収についてのコメントを自ら投稿。くったくのない陽気な笑顔を見て「なるほどこの明るさがサービスにも表れているな」と妙に納得してしまいました。

 自分を放送したことで有名になり、リターンを得たのはYouTube創業者の2人だけではありません。

 中国の大学生の2人組「Back Dorm Boys」はその典型かもしれません。自分たちの大学の寮(英語でDormと言います)の一室で、アメリカのポップグループ「Back Street Boys」の曲「I want it that way」に合わせて口パクで歌う、エアギターならぬ“エアボーカル”の映像をYouTubeで公開したところ、たちまち人気になり、携帯電話のモトローラや、清涼飲料ペプシの中国での広告キャンペーンに起用までされました。動画共有サイトが生んだ中国のシンデレラストーリーです。

 他にもヒューマンビートボックス Tシャツ重ね着世界記録に挑戦、などなど動画共有サイトで「自分を放送」して、有名になる人がどんどん出てきました。かつてのウォーホールの予言が現実になりつつあるという気がします。

 「Famous First, Paid Later」(まず有名になれば、リターンは後からついてくる)というメンタリティは、YouTubeの運営者と利用者の双方に通ずる真理なのかもしれません。

日本では「みんなのHDDレコーダー」化したYouTube

 ところが、これと全く状況が異なるのが日本です。

 以前の本稿でYouTubeを取り上げた時にも書きましたが、日本のネットユーザーが見ているYouTubeコンテンツの多くは、主にテレビ局が作成した番組コンテンツを勝手に投稿したもの。つまり日本人はYouTubeを「みんなでつくるハードディスクレコーダー」として活用しているのです。

 具体的に実際に話題になりアクセスを集めたのも、「亀田パパVSやくみつる」「24時間テレビマラソン」「極楽トンボ加藤謝罪」といったテレビ局制作の映像です。

 つまりアメリカにおいてYouTubeは、もちろんテレビや映画の映像もたくさん上がっていますが、同時に「俺様放送局」としても機能しています。ところが日本からのYouTube視聴は圧倒的に「テレビ局増幅器」になっている。少なくとも僕にはそう見えます。

 それだけではありません。YouTubeに対しては、ユーザー側だけでなく、制作者側にも日米では大きな意識の違いがあるようです。

 日本テレビの土屋敏男エグゼクティブ・ディレクターはYouTubeに対して「ナップスターの時と同様、アメリカの3大ネットワークなどがつぶしてくれると思っていましたが、彼らがYouTubeと次々に提携を始めたのでびっくりしました。どうやらYouTubeに非合法にアップロードされた動画がフックになって、テレビ番組の視聴率が上がったというデータもあり、うまく適応した方がいいぞという結論に達したようです。アメリカでは事実上、半分認められたような印象がある」と語っています。(2006東京国際デジタル会議フォーカスセッションより

「そこそこの知名度」がある人がブレークする

 YouTubeで個人が有名になりリターンを得ていく構図を見て、アメリカのテレビ局や映画制作者たちが、自分たちのコンテンツもこの流れに乗せればリターンが得られると思ったのに対し、日本の著作権利保持者がYouTubeを見た時には「俺たちが制作したコンテンツを勝手にアップロードして皆で見ているだけじゃないか」と考えた。いわば、田んぼの水路から勝手に水を引き込む「単なる水泥棒」にしか思えなかったのです。

 さらに言えば、こうした日米の差異はYouTubeに限りません。ネットで人気を集めるコンテンツ全般にこの傾向があります。

 最初に挙げたように、米国ではネット「だけ」で有名になった人がたくさん出てきました。一方、日本のネット上の有名人は、例えば真鍋かをりさんのように「ネットで発見された」のではなく、既にテレビや雑誌、映画である一定の知名度を持っている人が、ブログを書いたことで別の一面が見いだされ、ブーストされて人気が爆発するといった流れがあるように思います。

 皮肉に聞こえるかもしれませんが、ネットを見ていると日本社会における「マスメディアの力」を改めて実感するのです。なぜなのでしょうか?

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著者プロフィール

スダシン(須田 伸 すだ・しん)

須田 伸

サイバーエージェント ネットトレンド研究室長/コミュニケーションディレクター。1992年株式会社博報堂入社。CMプランナー/コピーライターとして「ACC賞」「日経広告賞」「消費者のためになった広告コンクール」などの広告賞を受賞。 1998年カンヌ国際広告祭ヤングクリエイティブ・コンペティションに日本代表コピーライターとして出場。2000年にYahoo! Japanに転じてコミュニティサービス担当プロデューサーとして「ヤフー・チャット」を立ちあげ「ライブチャットイベント」では初代「Y! Chat MC」として活躍。2002年より株式会社サイバーエージェントに勤務。同社の企業ブランドを一新する。現在は同社ネットトレンド研究室長。ブログとインターネット広告に関する著書として『時代はブログる!』(アメーバブックス)がある 。「サイバーエージェント/アメーバ」は、2008年度グッドデザイン賞を受賞。


このコラムについて

Web2.0(笑)の広告学

ブログやSNSのように、普通の人がインターネットで気軽に情報を発信するようになったことが「Web2.0」という流行語(バズワード)を生みました。Web2.0の切り口には、技術も、商売も、哲学もありますが、このコラムでは、基本的に「広告」という視点で考えていきます。筆者はテレビ広告業界を経験後、サイバーエージェントに転じ、ネット広告の世界で活躍している須田 伸氏です。

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