In the future, everyone will be world-famous for 15 minutes. Andy Warhol
未来においては、誰もが15分間有名になることができる。(アンディ・ウォーホール)
YouTubeの本来の目的は「自分を放送しちゃおう!」
YouTube(ユーチューブ)のサイトにあるキャッチフレーズは「Broadcast Yourself」です。「自分を放送しちゃおう!」という実に能天気と言えば能天気なキャッチフレーズですが、創業者の2人も今回の買収についてのコメントを自ら投稿。くったくのない陽気な笑顔を見て「なるほどこの明るさがサービスにも表れているな」と妙に納得してしまいました。
自分を放送したことで有名になり、リターンを得たのはYouTube創業者の2人だけではありません。
中国の大学生の2人組「Back Dorm Boys」はその典型かもしれません。自分たちの大学の寮(英語でDormと言います)の一室で、アメリカのポップグループ「Back Street Boys」の曲「I want it that way」に合わせて口パクで歌う、エアギターならぬ“エアボーカル”の映像をYouTubeで公開したところ、たちまち人気になり、携帯電話のモトローラや、清涼飲料ペプシの中国での広告キャンペーンに起用までされました。動画共有サイトが生んだ中国のシンデレラストーリーです。
他にもヒューマンビートボックス、 Tシャツ重ね着世界記録に挑戦、などなど動画共有サイトで「自分を放送」して、有名になる人がどんどん出てきました。かつてのウォーホールの予言が現実になりつつあるという気がします。
「Famous First, Paid Later」(まず有名になれば、リターンは後からついてくる)というメンタリティは、YouTubeの運営者と利用者の双方に通ずる真理なのかもしれません。
日本では「みんなのHDDレコーダー」化したYouTube
ところが、これと全く状況が異なるのが日本です。
以前の本稿でYouTubeを取り上げた時にも書きましたが、日本のネットユーザーが見ているYouTubeコンテンツの多くは、主にテレビ局が作成した番組コンテンツを勝手に投稿したもの。つまり日本人はYouTubeを「みんなでつくるハードディスクレコーダー」として活用しているのです。
具体的に実際に話題になりアクセスを集めたのも、「亀田パパVSやくみつる」「24時間テレビマラソン」「極楽トンボ加藤謝罪」といったテレビ局制作の映像です。
つまりアメリカにおいてYouTubeは、もちろんテレビや映画の映像もたくさん上がっていますが、同時に「俺様放送局」としても機能しています。ところが日本からのYouTube視聴は圧倒的に「テレビ局増幅器」になっている。少なくとも僕にはそう見えます。
それだけではありません。YouTubeに対しては、ユーザー側だけでなく、制作者側にも日米では大きな意識の違いがあるようです。
日本テレビの土屋敏男エグゼクティブ・ディレクターはYouTubeに対して「ナップスターの時と同様、アメリカの3大ネットワークなどがつぶしてくれると思っていましたが、彼らがYouTubeと次々に提携を始めたのでびっくりしました。どうやらYouTubeに非合法にアップロードされた動画がフックになって、テレビ番組の視聴率が上がったというデータもあり、うまく適応した方がいいぞという結論に達したようです。アメリカでは事実上、半分認められたような印象がある」と語っています。(2006東京国際デジタル会議フォーカスセッションより)
「そこそこの知名度」がある人がブレークする
YouTubeで個人が有名になりリターンを得ていく構図を見て、アメリカのテレビ局や映画制作者たちが、自分たちのコンテンツもこの流れに乗せればリターンが得られると思ったのに対し、日本の著作権利保持者がYouTubeを見た時には「俺たちが制作したコンテンツを勝手にアップロードして皆で見ているだけじゃないか」と考えた。いわば、田んぼの水路から勝手に水を引き込む「単なる水泥棒」にしか思えなかったのです。
さらに言えば、こうした日米の差異はYouTubeに限りません。ネットで人気を集めるコンテンツ全般にこの傾向があります。
最初に挙げたように、米国ではネット「だけ」で有名になった人がたくさん出てきました。一方、日本のネット上の有名人は、例えば真鍋かをりさんのように「ネットで発見された」のではなく、既にテレビや雑誌、映画である一定の知名度を持っている人が、ブログを書いたことで別の一面が見いだされ、ブーストされて人気が爆発するといった流れがあるように思います。
皮肉に聞こえるかもしれませんが、ネットを見ていると日本社会における「マスメディアの力」を改めて実感するのです。なぜなのでしょうか?
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