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「メディア費0円!」広告の、蜜と罠
ソフトバンクモバイルとユニリーバ

  • 須田 伸

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2006年11月7日(火)

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 携帯電話番号ポータビリティ制度(MNP)開始の10月24日の朝刊は、まるで選挙運動のような騒ぎでした。

MNP開始日朝刊で一番インパクトのあった「広告」

 主要朝刊紙にドーンと30段広告を出したのがNTTドコモ。朝青龍、津川雅彦、武豊、aiko、宮崎あおい、オセロ、劇団ひとりと、まぁ豪華というか、よく集めましたねというか、とにかく大勢出ていました(資生堂TSUBAKI以来、タレントを大勢動員するキャンペーンが以前に比べて明らかに増えました)。

 キャッチフレーズは「だから、私はドコモです」。この「日本国民全員がターゲットです」ということが明確に出たキャスティングとキャッチフレーズからも、「新規顧客獲得の攻め」ではなく「流出を防ぐ守り」の戦略であることがよく分かります。

 auも15段広告を出していましたが、こちらのタレントはおなじみの仲間由紀恵と速水もこみちの2人で、キャッチフレーズは「MNP本日スタート! 番号そのままauにおいで!」。いくつかの調査会社によるMNP開始前のリポートで「もし今、携帯キャリアを変えるならauがいい」という評判を受けてですから、大きな路線は変更せずのノーサプライズ。実際、出だしの週末でもauに乗り換えるユーザーが多く、スタートダッシュ時点での勝者はauと言ってよいでしょう。

 そして奇襲に出たのがソフトバンクモバイル(以下ソフトバンク)。繰り返してきた「大人になる」という言葉を翻してのサプライズが、今や流行語にすらなった感のある「予想外割」。

 ソフトバンクは「新聞広告」ではなく「新聞記事」になる仕掛けをこの日に合わせてつくってきたのです。前回の話にひっかければ、見事な「三尺玉の花火」が大空に上がりました。

 ソフトバンクにしてみれば「予想外割」の広告を出したくても入稿した広告原稿からマスコミに情報が漏れるのを恐れて出せなかったのかもしれないのですが、結果的にマスコミ各社での反響も大きく、「これはスゴイ! 見事な手口!」とこの日の朝は感心しました。しかしこの後の週末にはシステムがダウンするなど「予想外」の準備不足ぶりを露呈しまい、お世辞にも「成功」とは言えない結果になってしまいました。

 仮に、このCMがテレビや新聞ではなく、ネットを中心に行われていたらどうなっただろう。ちょっとそんなことを考えてしまいます。

「リーチこそが勝利」の常識は終わったのか

 「実はそんなに安くないし、ましてやゼロ円なんていうのは誇大広告じゃないか」という声が出始めたのは、テレビ、新聞といったマスメディアからではなく、ドコモ、auといった競合携帯電話事業社からでもなく、個人のブログや掲示板からだったように思います。

 「携帯電話料金スペシャリスト」という肩書きの人に直接会ったことはまだありませんが、ネット上で事細かにシミュレーションして読者からの質問にも答える人が、本当の仕事が何なのかは人によりさまざまでしょうが、かなりいることも知り、また「集合知(Collective Intelligence)」のパワーをあらためて感じました。

 この「予想外割」という言葉について自分の立場で考えてみますと、従来の「広告表現の中のインパクトあるキャッチフレーズ」という範囲では、広告コンクールでコピーライターが賞を授与されて「よかったね」となる「強い表現」には違いないのです。しかし個人間にネットワークが存在する今の社会では、「マスでリーチしてすぐれた表現イメージで刷り込んでしまう」という手法が単純には通用しなくなってきている。

 連載の第1回で「資生堂TSUBAKIのようにマスをつかって見事に成功したキャンペーンもある」と書いたところ、読者の方から「ビジネスとしてあれだけのマス広告投資に対するリターンが見合う結果だったのかは資生堂の決算発表まで分からない」という指摘を受けました。

 現時点でこれ以上の結論めいたことは差し控えますが、今回のソフトバンクと資生堂TSUBAKIは、「マス広告」の現在位置を見極める2つの重要なケースになるでしょう。「見事なクリエイティブと大量のメディア費でリーチする」という成功への広告ゴールデン・ルールが、本当に終わってしまったのか、まだ可能性があるのかどうかが分かる、そう思います。

スーパーボウルCMに勝ったメディア費ゼロの「広告」

 ここで海外の事例をひとつ紹介しましょう。AdvertisingAge誌によると、トイレタリー大手のユニリーバ のシャンプー関連ブランド「Dove(ダブ)」が、YouTubeで展開しているバイラル・ムービー「 Evolution 」が、ウェブサイト「 CampaignForRealBeauty.com 」への誘導効果で、今年2月のスーパーボウルで放送したCMの3倍以上の数字を叩きだしたということです。

 「Evolution 」は普通の女性が、メイクに加えてフォトショップなどの画像処理で「人工美人」に仕上がっていく様を描いた75秒の映像です。

 ダブは以前から「女性雑誌やファッションブランドが広告などを通じで社会に推奨する女性の美しさが、一般女性のセルフイメージを破壊している。ダブはそういった虚構の世界観とは違う現実の女性たちが本来一人ひとり持っている美を引き出し応援するブランドです」というメッセージを発信してきました。それが「Real Beauty」というウェブサイトの基本コンセプトになっています。

 日本でも巨大ビルボード等で「あれ? なんか他の広告と違うな・・・」と感じさせる、ファッションモデルとは明らかに違うごく普通の体型の女性が登場する広告を出稿しているので、お気づきの方も多いかもしれません。

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