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ダ・ヴィンチの飛行機に足りなかったもの

“ビジョン”を“コンセプト”に変える難しさ

  • 宮田 秀明

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2006年12月1日(金)

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 私の家からそう遠くないところに源泉かけ流しの温泉が誕生した。自宅から車を運転すること15分ばかり。利根川を越えて茨城県に少し入った場所なのだが、なかなか繁盛している。温泉は日本に数え切れないほどたくさんあるが、源泉かけ流しは意外なほど少なく、貴重な存在と言っててもいいくらいらしい。

 温泉なら“かけ流し”が価値があるのだが、経営や行政をはじめ、すべての組織的な活動ではかけ流しよりむしろ“循環(circulation)”に価値がある。企業であれば、顧客に喜ばれる商品やサービスを提供して顧客から対価を得るという循環を作ることで利益が生まれる。この利益を研究開発に回してさらに素晴らしい商品やサービスを創造する。これもまた価値の循環だ。

 行政サービスも同じである。税金を集めて様々な行政サービスを提供し、広く社会に役立てることで社会が豊かになる。そこで生まれた利益が税金となって還流していく。すべての経営とは、このような価値の循環(バリューチェーン)を成立させることである。バリューチェーンは民間でも、公共部門でも共通に重要な必要条件なのだ。これが築けなければ、その取り組みは失敗になる。

 しかし、研究開発から新しい価値の循環を作るのは大変難しい。安倍政権はイノベーションの進展を政策として掲げているが、イノベーションという言葉を語るのは易く、行うのは難しい。これは、読者の皆さんが日々実感していることだろう。

研究者と経営者の間に生じる溝

 企業の研究開発費は、エレクトロニクス業界で売り上げの6~7%、鉄鋼業が1.5%前後、造船業は1%以下である。まず第1近似として、研究開発費の売り上げに対する割合は、産業の成長率と相関が高い。ただし、研究開発費とそこから生まれる価値を効率という観点で考えると、そう簡単ではない。個別のテーマにかけた研究開発費と成果の相関関係はとても複雑だからである。

 例えば、エレクトロニクス業界では、研究開発費の70%が既にある商品の改良や新設計のためのもので、いわば継続発展的な研究に使われている。本当の革新的な研究開発に割くリソースは30%ということだ。この比率がほかの業界にも当てはまるとすると、研究開発費が売上高の1%未満になった企業では、革新的な技術開発はもはや不可能かもしれない。

 研究開発に投入したリソースと成果の相関関係は一般に非線形である。どんなに多く研究開発費を投じても、必ず優れた成果が生まれるわけではない。逆に、とても少ない研究開発費から大ヒット商品が生まれる可能性もある。だから、経営者と研究開発の担当者は互いに不満をぶつけ合うことになりがちだ。

 経営者からは「こんなに研究開発費を使っているのに成果が低いではないか。製品化にたどり着くことも少ないし、ヒット商品などほとんど生まれてこない」という声が聞こえてくる。一方、研究現場では「こんなに優れた成果を出しているのに、なぜ製品化にゴーサインが出ないのか。今すぐに製品化すれば、他社に先駆けることができるのに」という不満がくすぶる。

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