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「怖い歌舞伎顔」は、なぜ目立つ

ホンダのバイクに見る“ジャパンクール”の本質

2007年1月29日(月)

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 「自動車や魚の絵を描いてみてください」――。こう言われたらどんな絵を描くでしょうか。読者の多くは、横から見た絵を描くでしょう。自動車だったらドアのある側面、魚ならば頭が左で尾びれが右にある絵です。

 実は、幼児に同じことをさせると違う結果になります。正面から見た絵を描くことが多いのです。自動車はまだしも、魚を真正面から見た表現は、大人の私たちにはなかなか新鮮ですね。でも、実はとても自然なことなのです。人間がモノを認識する時には、モノの顔が重要な役割を果たします。カルフォルニア州立大学で教授を務めたベティー・エドワーズの研究によると10歳くらいになると、モノを記号化して脳の情報処理の負荷を節約する機構が働き始め、特徴的な角度から見た図形として省エネで処理するようになるのだそうです。目に見えるものをすべてそのままの形状で認識していると頭の中での情報処理量が大変になってしまうのです。その結果が「横から見た絵」です。

 “理屈”ではなく“直感”でモノの顔を素直に表現する子供の世界観には、ものづくりの大事な要素が隠れています。大人になった私たちも、モノとつき合う時にはその顔を意識しているはずです。本来は無機的な存在であるモノをヒトに見立てることで、おつき合いしやすくしたいという心が働いているからでしょう。

 私は、こうした大人にもかすかに残る“子供心”の強さこそが日本のものづくりの特長であり、強みだと思っています。このコラムの目的は、日本メーカーが日々作り出している商品をしみじみ眺め、そこに秘められた日本らしさを再検証することです。日本人や日本文化が培ってきた気質や考え方を、ものづくりに生かしている事例を紹介していきます。今回のキーワードは「顔」です。

バイクを印象づける“憤怒の形相”の意味

 現代人は、様々な道具に囲まれて暮らしています。家具や食品、家電、衣類など、すべての工業製品は何らかの形で、人間とモノの接点となる「マン・マシンインターフェース」の課題を抱えています。商品の機能性や訴求点が多様になっているが故に、これまで以上に使いやすく分かりやすい商品の「顔」への要求は強まるばかり。これは、機械に限ったことではなく、日用品や食品の商品パッケージでも同じでしょう。

写真1
ホンダが安全性の向上を目的に試作したバイク「Honda ASV-3」の“顔”。「ASV-3」は、国土交通省の自動車安全技術プロジェクト (写真:山西 英二)

 自分が作る商品の「顔」というトピックに絞り込んで、エンジニアリングのメスを手に課題に切り込む研究者たちがいます。

 ホンダが、2005年9月に発表した試作バイク「Honda ASV-3」の「正面」の表情を見てください。どう感じたでしょうか。そう、とても怖い顔をしています。恐らく、日本人だけでなく、米国人でも、地球の裏側のアマゾンの人でも、チベットのお坊さんでも、怖い顔だと感じるでしょう。実は、このバイクの顔は、自動車の運転者にバイクの存在を瞬時に気づかせる認識性の向上を目的に、高度に計算された事故未然防止デザインなのです。

 バイクは、頑丈な4輪車に囲まれて道路上では弱い存在ですから、いち早くその存在を認識してもらうこと、つまり被視認性の向上が自らを守るための重要な要件になります。本田技術研究所の櫛田和光・主任研究員らのグループは10年ほど前にバイクの顔を憤怒の形相にすれば、この目的を達成できると思いつき、バイクの表情と被視認性の関連性を追い続けています。

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「川口盛之助の「ニッポン的ものづくりの起源」」のバックナンバー

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「「怖い歌舞伎顔」は、なぜ目立つ」の著者

川口 盛之助

川口 盛之助(かわぐち・もりのすけ)

盛之助 代表取締役社長

戦略コンサルティングファームのアーサー・D・リトル・ジャパンにてアソシエート・ディレクターを務めたのちに株式会社盛之助を設立。研究開発戦略や商品開発戦略などのコンサルティングを行う。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官