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“プロフェッショナル”とは何か

本物を育て上げる現場の体験

  • 宮田 秀明

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2007年2月2日(金)

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 「バカヤロー! みっともないぞ」

 ラバーボートの上から山崎達光会長(日本セーリング連盟会長、エスビー食品・元会長)が叫んだ。

 1994年秋、世界最高峰のヨットレース「アメリカズカップ」の前哨戦であるワールドカップでの出来事だ。日本チームは、米国サンディエゴ沖でオーストラリア艇とのレースに出場していた。伴走するラバーボートの上にいたのは、山崎会長と、製造・総務担当の菊池誠マネジャー、そして私である。

 「バカヤロー!」の声が飛んだのは、私たちの目前でニッポンチームのレース艇「J30」のハリヤードが切れた時のこと。ハリヤードは、セール(ヨットの帆)を吊るロープで、これが切れたことでセールが見る見るうちに落ちていったのだ。

いったいこの海の上で何しているのだろう

 ハリヤードが切れた“事件”は、操船ミスで船を設計した私に責任はない。だが、快走するオーストラリア艇との船速の差は明らかだった。つまり、バカヤローの声は、私たちが設計したJ30の遅さに対する苦言でもあったのである。

 初めて引き受けたヨットの仕事は、当初から屈辱を味わう場面ばかりだった。サンディエゴ沖のレース海面は太平洋上なので、かなり波が大きい。この日は、波長50メートルくらいのうねりが2メートルくらいの高さで押し寄せてきた。水の進入を防ぐ機構のないラバーボートに乗った私たちの頭上には、ほぼ7秒ごとに滝のような水が降りかかってきた。

 顔はゴツイが少しだけ優しいところがある菊池マネジャーが私に言う。

 「先生、大丈夫ですか?」

 太平洋の海上だから「大丈夫じゃないよ」とぼやいてもどうしようもない。しばらくして、ふと心の中に疑念がわいてきた。

 「私はいったいこの海の上で何しているのだろう?」

 東京大学の教師でしっかりした成果も出しているのに、なぜこんな所で、こんな惨めな思いをしているのだろう…。

 サンディエゴで大波をかぶることになる1年ほど前。ある公益法人から電話がかかってきた。委員会の委員に就任してほしいという依頼だった。これは、よくあることである。

 ところが、この時は少し違っていた。通常の委員会形式なのだが、実は私をアメリカズカップの技術開発リーダーにするための“陰謀”だった。日本チーム「ニッポンチャレンジ」でレース艇の技術開発が決定的に遅れていて、急遽3億円の予算を用意して、私に押しつけようとしていたのだ。

 今となっては、アメリカズカップの経験をさせてもらったことに感謝しているが、当時はどうしてこんな時に私にお鉢が回ってくるのか、と思った。レースまではほとんど時間がない。急ごしらえの技術開発で成果を出すのは難しい。私は船の設計についてはプロ中のプロだと自負していたが、ヨットを設計するのは初めてだった。

コメント13件コメント/レビュー

宮田さんの論旨には直接は即していませんが、感覚的にどこかしら通じるものがある様な気がしてコメントいたします。(競艇選手の描写から想起しました。)アメリカの有人宇宙飛行計画:マーキュリー計画(1959~1963)のための宇宙飛行士候補として空軍,海軍より選抜された 7人の精鋭パイロットの活動を描いたノンフィクション・ノベルで『ライト・スタッフ』という作品が在ります。映画化もされています。彼ら 7人は、パイロットの職人気質を盾にロケットの開発技術者や計画の管理層との衝突を繰り返しながらも、ときにその対立を発展的に昇華し、計画を成功に導きます。作品中では大きくは言及されませんが、彼らは無意識の裡に ロケットではなく スペース・シャトルのようなものを希求(構想の第一歩?)していたように思います。ノベルではマーキュリー計画終了後の次世代の宇宙飛行士像として、メーカー(ボーイングだったか)のエンジニア兼任のテスト・パイロットであるアームストロング(アポロ11号船長)が象徴的に描かれます。一方、映画では人類史上初の超音速飛行を達成しながらマーキュリー計画の華やかさに背を向け従来型飛行機(F104等)のテスト飛行の現場に留まる第二次大戦からの古参パイロット、チャック・イェーガーが彼らに対比されます。全ての男がいずれも、カッコイイです。ひょっとしたら、前回のコラムの内容ともどこか遠いところで交差するかもしれません。signatured by shoppo(2007/02/04)

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いただいたコメント

宮田さんの論旨には直接は即していませんが、感覚的にどこかしら通じるものがある様な気がしてコメントいたします。(競艇選手の描写から想起しました。)アメリカの有人宇宙飛行計画:マーキュリー計画(1959~1963)のための宇宙飛行士候補として空軍,海軍より選抜された 7人の精鋭パイロットの活動を描いたノンフィクション・ノベルで『ライト・スタッフ』という作品が在ります。映画化もされています。彼ら 7人は、パイロットの職人気質を盾にロケットの開発技術者や計画の管理層との衝突を繰り返しながらも、ときにその対立を発展的に昇華し、計画を成功に導きます。作品中では大きくは言及されませんが、彼らは無意識の裡に ロケットではなく スペース・シャトルのようなものを希求(構想の第一歩?)していたように思います。ノベルではマーキュリー計画終了後の次世代の宇宙飛行士像として、メーカー(ボーイングだったか)のエンジニア兼任のテスト・パイロットであるアームストロング(アポロ11号船長)が象徴的に描かれます。一方、映画では人類史上初の超音速飛行を達成しながらマーキュリー計画の華やかさに背を向け従来型飛行機(F104等)のテスト飛行の現場に留まる第二次大戦からの古参パイロット、チャック・イェーガーが彼らに対比されます。全ての男がいずれも、カッコイイです。ひょっとしたら、前回のコラムの内容ともどこか遠いところで交差するかもしれません。signatured by shoppo(2007/02/04)

宮田先生単なる技術屋とは違うスケールの大きさには毎度刺激されます。自分もプロフェッショナルとして、持てる力を発揮したく考えてますが、羨ましい限りです。通常のサラリーマン人生の中では、自分を磨きあげることを疎かにすることが少なくありません。ワタシ自身は、自分なりに日頃研鑽に努めてはいるという自負はありますが、それがベストな方法でできているかというと、全く自信がありません。(2007/02/04)

プロフェッショナルとは、必ずしも結果を出すことではないと思います。また、プロフェショナルには、終わりはないと思います。これを完成させれば・これが終われば、プロになれるとか(評価・名声は得られるかも知れませんが)と言うものはないと思います。常に自分の仕事を振り返り、自身の技・自分を磨くことに専念することこそプロだと思います。芸術の世界では顕著です。多くの芸術家は死ぬまでそうだった(そうだ)と思います。そういう姿勢・生き方が人に感動や共鳴を与えるのだと思います。私も努力は日々怠らないよう心がけております。芸術は長く人生は短し、少年老い易く学成り難し<心して修行せよ>(最後の<>は私の付けたしです。失礼しました。)(2007/02/04)

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三品 和広 神戸大学教授