• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

技術の創造性を取り戻すために

“技術コンサルタント”にまつわる大きな誤解

  • 宮田 秀明

バックナンバー

2007年2月16日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 私が大学で管理運営を任されている講座は、かつて船舶工学第1講座と呼ばれていた。1989(明治22)年に東京大学工学部が創設されて以来の由緒正しい講座である。主な担当分野は「船型学」、つまり船の抵抗と推進のメカニズムを研究して、船の形の設計に役立てることだった。70年前に旧日本海軍(正確には外郭団体の海防義会)が寄付した長さ90メートルの実験水槽を管理運営しているので、研究室は、別名「水槽」と呼ばれている。

 戦前は、富国強兵の流れに乗って、軍学共同は当たり前だった。だが、戦艦大和の船型に大学の研究成果が役に立ったかというと、それは全くない。当時、花形だった航空工学でも船舶工学でも、大学や軍における基礎研究のレベルは極めて低かったからである。国際的な学術論文もほとんどなかった。たまに国際的な評価を受けることがあっても、実艦を使った大掛かりな実験をしたことが評価されるようなもので、創造的な研究ではなかった。大学院もなかったから、当時の大学は教育機能に専念していたのだ。

「失敗したからやめる」では技術マネジャーが育たない

 戦艦大和は、今風に言えば“マーケティングに失敗した製品”ではあったが、設計と製造のレベルは世界一流の水準を超えていた。設計建造のための要素技術は、ほとんどが輸入品か、海外のものまねだった。例えば、私の専門分野「船型学」の例である、戦艦大和の球状船首(船首水面下の突起)については、本コラムの最初の回で取り上げた(記事はこちら)。新技術ではあったが、基礎研究や商船での実証はドイツで行われたものだ。その結果を日本海軍の研究所が取り込み、海軍の水槽でたくさんの模型で実験して設計に移した。だから、大和の小さな球状船首は米国の戦艦ミズリー級のものとも似ている。米国でも同じようなことを行っていたのだ。戦艦大和で優れているのは、世界最大のシステムをまとめ上げた設計力と建造力である。

 当時は、40歳くらいまでの技術将校たちが開発を担った。戦後は軍事研究と航空産業への取り組みが許されなかったので、彼らは鉄道や商船、自動車などの産業で活躍することになった。鉄道技術研究所に移った三木忠直さんや松平精さんらが、新幹線プロジェクトで成果を上げたことは以前、このコラムで紹介した通りだ。2人は船舶工学科のそれぞれ1933(昭和8)年と1934(同9)年の卒業生だった。国内の自動車メーカーや造船会社の設計と製造を世界レベルにまで引っ張っていったのは、こうした方々だった。軍のプロジェクトが技術マネジャーを育てたのである。彼らは40歳という若さで技術マネジャーとして実績を重ねていたので、戦後になって民間で能力を十分に発揮する時間があった

 自動車や造船と違って技術マネジメント力の継承に失敗した業界もある。国内の航空産業だ。戦争が終わって10年余りの間、GHQ(連合国軍総司令部)に航空技術研究や産業活動が禁止された後遺症が大きかった。戦後最初の航空機産業は国策会社である日本航空機製造が開発した「YS-11」でスタートしたが、既に日本と米国の技術力は大きく差が開いていた。主力はジェット機に移りつつある時代に、ターボプロップ機に取り組んだので、商品の国際競争力は高くなかった。

 そもそも、一般に最初の商品で大ヒットを飛ばすのは難しいものである。だから、本来は早く次の商品開発へと歩を進めるべきだった。しかし、結局、赤字を理由に企業活動を中止し、後に国が進めた短距離離着陸機「飛鳥」プロジェクトも、現在進行中の中型旅客機開発プロジェクトも、研究開発をやめたり始めたりを繰り返している。こうした中途半端な取り組みでは成功を手に入れることは難しいことに加えて、経験を積んだ技術開発マネジャーが育たない。

コメント7

「宮田秀明の「経営の設計学」」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

私の仕事は経営することではなく、リーダーであることです。

ジェンスン・フアン エヌビディア創設者兼CEO