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2007年2月26日(月)

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 手元に、2006年に発行された『The Origin of Wealth』という1冊の本がある(著者はマッキンゼー・グローバル・インスティテュートのエリック・バインホッカー)。この中に興味深い一節があるのでご紹介したい。

 ブラジルとベネズエラの国境を流れるオリノコ河の流域にヤノマモ族という小さな部族が住んでいる。生活の糧を得る中心は密林での食べ物の採集、野菜や果物の小規模な栽培、そして狩りである。また、カゴ、ハンモック、石器などの道具を手作りしたり、家族の間、村の間では簡単な交易も行われている。1人当たりの年間収入を換算すると90ドル程度と推測される。

 翻って世界一の大都会ニューヨークを住居にするニューヨーカー。ニューヨーク州とニュージャージー州の間を流れるハドソン川の近くに住み、現代生活を謳歌している。平均年収は約3万6000ドル、単純計算ではヤノマモ族の400倍である。ヤノマモ族とニューヨーカーの生活はどちらが豊かだろうか? 幸せに対する尺度は色々とあるが、物質的な豊かさのみに着目したとする。その場合、ニューヨーカーの生活はヤノマモ族の400倍と考えてよいのだろうか?

多様性と複雑性はどんどん増えていく

 ここでバインホッカーは「多様性」という考えに着目する。ニューヨーカーの生活を豊かにしているのは収入の絶対額が高いということもあるが、その収入によって購入できる財やサービスの種類の豊富さである。仮に3万6000ドルの収入があっても購入できるのがヤノマモ族の経済に閉じていては豊かな生活とは言えないであろう。

 小売・流通業の世界に「SKU(Stock Keeping Unit)」という言葉がある。店舗で取り扱い・販売される商品の種類数を数える単位である。例えば同じコカ・コーラでも350ミリリットル入りの缶と2リットル入りのペットボトルはSKUとしては別のものである。このSKUという概念をヤノマモ族の生活に当てはめてみると数百、せいぜいで1000といったところである。他方、ニューヨーカーの生活におけるSKUはいくつだろうか? ある推測によると10の10乗である。10の10乗とはどのくらいの数字か、地上に存在するすべての動植物の種類は10の8乗と言われているので、その多様性を想像できるだろう。

 つまり、ヤノマモ族の生活とニューヨーカーの生活の決定的な差は400倍の年収の差ではなく、百万から千万倍の購買可能商品の多様性である。ニューヨーカーが身を置く経済圏の方がはるかに複雑で、多様性に富んでいる。

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