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世界共通語になった「カワイイ」の威力

ホンダのバイクに見る“ジャパンクール”の本質(その2)

2007年2月19日(月)

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 前回は、ホンダが研究しているバイクの安全性向上技術「FACE」を例に、商品の“顔”について考えてみました(前回の記事)。両目(ライト)がつり上がった憤怒の表情を持つ怖い顔のバイクが安全性の向上に役立つ。日本人が得意とする「擬人化」が、こうした先端技術を発想する原点にあるという話でした。今回は、前回に続いて「商品の顔」について、もう少し論を進めてみたいと思います。

 前回の記事に対する読者コメント欄に、鋭く、かつ興味深いツッコミがありました。

 「『目』のみならず『恐い顔』がミラー越しに迫ってくる状況は、要らぬ闘争心を煽りはしないか、と、ふと気になったりしました。後ろから迫ってくる『顔』、交差点で横から出てきた『顔』が心和むものであった方がいいような気もします…」

 「2輪に乗る時は4輪を、4輪に乗る時は逆に2輪を敵視するような感情が生まれることがあります。そうした感情のもつれによって起きる事故が少なからずあるとすれば、『怖い顔で目立つ』ことは『=安全』とは限らないのではないでしょうか?」

前回の読者コメント欄より

 「未来の車はみんな鬼の形相になるのか?」「ずいぶんと殺伐とした道路風景になるなあ」という読者の皆さんの声が聞こえてきそうです。

同時多発テロ以降、怖い顔が増えている

 実は、9.11米同時多発テロの後、米国で怖い顔の自動車デザインが増えていると指摘した学者がいます。心理学者であり、ダイムラークライスラーのマーケティングコンサルタントを務めたこともあるG・クロテール・ラパイユ氏です。彼は、9.11のテロ以降、米国人がサバイバル用の自動車を求める傾向がより顕著になったと、米メディアの取材に対して説明しています。

写真1-1
写真1-2
上はダッジのSUV「デュランゴ」の現行車種。下は、カスタムパーツなどに関する世界最大の展示会「SEMAショー」で2004年に出展された車両「デュランゴ・デュード」

 ラパイユ氏は、特に象徴的な事例として、ダッジのSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)、「デュランゴ」のデザインを取り上げ、フェンダーを大きくしてあるのは、動物の強い顎を意識したからだと指摘しています。デュランゴは爬虫類の生存本能を強く持つドライバー向けに開発されたもので「彼らは『衝突したら死ぬのは相手の方だ』と発想する」とさえ述べているのです。確かにデュランゴが後ろから近づいてきたら、ちょっとした威圧感を感じるかもしれません。

 運転する時に、普段気の弱い人でも強くなったような気になって凶暴化してしまう――こうした傾向を日常生活で体感したことがある方は少なくないでしょう。これは、インターネットの掲示板やブログが“炎上する”現象に近い構造に思えます。

 でも、道具とは本来、人間同士の関係性を取り持つべきものです。自らの生み出した道具が人と人の関係を荒立てる結果になってしまうのは、使う側も開発する側も、あまりうれしい話ではないでしょう。FACEを開発したホンダの研究者も、読者のコメントと同じことを課題として挙げていました。バイクを怖い顔にして視認性が向上しても、ドライバーが殺伐とした気持ちを抱いてしまうのだとすると、事故が逆に増えてしまう可能性があります。

理想は自然界の姿かもしれない

 FACEという技術には「バイクは車道では弱者である」という前提があります。自動車と衝突した時、負けるのは明らかにバイクです。大事なのは、弱者を強く見せかけることで救済するという考え方です。ですから、強者の自動車まで怖い顔になると安全性を確保できなくなる可能性があります。被視認性の向上による安全技術の効果は相対的なものなのです。本田技術研究所の丸山幸一研究員も「トラックのように強い車両はむしろ柔和な表情になることが望ましいかもしれません」と指摘していました。

 衝突した時に勝つ可能性が高い車両は、できるだけ威圧感を減らす努力をし、負ける車両は精いっぱいの自己主張をする。理想的な交通というのは、大きく強い動物は悠然とした姿、小さな動物は威嚇のための道具を持つという自然界の姿に近いのかもしれません。

 ここから、商品の顔について次の研究テーマが見えてきます。それは「全体調和」です。周囲に配慮しながらバイクだけでなく、乗用車、トラック、自転車、歩行者など、道路の利用者全体で安全性を高めるにはどうすればいいか。こうした全体調和や、周囲への配慮という発想も、日本人が比較的得意とする分野でしょう。

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「世界共通語になった「カワイイ」の威力」の著者

川口 盛之助

川口 盛之助(かわぐち・もりのすけ)

盛之助 代表取締役社長

戦略コンサルティングファームのアーサー・D・リトル・ジャパンにてアソシエート・ディレクターを務めたのちに株式会社盛之助を設立。研究開発戦略や商品開発戦略などのコンサルティングを行う。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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