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押し寄せる返品の波と闘う

高さ520メートルの津波、想像できますか

  • 宮田 秀明

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2007年2月23日(金)

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 2004年末のスマトラ島沖地震では、津波の威力をまざまざと見せつけられた。津波の高さは30メートルにも達し、その被害は甚大なものだった。この地震に関する報道で海底での地震によって起きる波である“tsunami(ツナミ)”が国際語になっていることを知った方も少なくないだろう。

 地球上で観測された一番高い波は、520メートル(!)もの高さになる。アラスカのある湾内で起きた波だ。湾に流れ込む氷河が地震で崩れ、狭い湾内に落下してとんでもない高さの波を作った。もちろん、この湾内にいた漁船の乗組員などはすべて死亡したので、目撃証言は得られなかった。後で現地に入った調査団が、湾周辺の木の倒れ具合や傷跡から、高さが520メートルあったことを検証して、巨大な波の発生が分かったのである。ちなみに船を設計する時は、船の平均的な寿命である約20年の間に1回は高さ30メートルの波に遭遇することを想定して設計する。

 津波が、いわゆる高潮と違うのは、沖の方ではなだらかな海水面の盛り上がりが、陸地に近づいて浅い海の上で、高くて激しい波に変身することである。海岸に押し寄せた膨大な量の海水が海岸近くで急激に変形するため、何十メートルという高さに達するわけだ。こうした予測しにくい急激な変化を自然科学の世界では“非線形”な現象と呼ぶ。非線形とは、物事が起きる条件が複雑に絡み合っていて、構成要素を単に足し合わせただけでは正しい解が出てこないことを指す。

21世紀は社会科学の非線形問題に挑戦する時代

 自然科学の世界は非線形だらけである。自動車が走行すると周りに無数の空気の渦ができる。これが走行性能や燃費に大きな影響を及ぼす。台風を考えてもらえれば分かると思うが、空気の渦は非線形な現象なので、これをうまく御するのは難しい。非線形現象は、技術開発においてとてもやっかいな存在なのだ。

 自動車と同じように船の周りでも非線形な水の流れが生じる。例えば、船の先端や後端で生じる「自由表面衝撃波」という非線形現象がある。私が1979年に発見したのだが、この波を理解しないで船を設計すると燃費が10%くらい悪くなる。このほかにも身近なところでは道路渋滞がある。スムーズに流れている道の交通量が、ほんの1割増えただけで急に渋滞が発生する。これも自然科学の世界に近い非線形な現象だ。

 20世紀最後の30年ほどは、IT(情報技術)を武器に自然科学が非線形問題の解決に挑戦した時代だった。そして、たくさんの成果を上げた。次は「社会科学」の番である。今世紀最初の数十年は、人類が「社会科学」の非線形問題に本格的に挑戦する時代になるだろう。

 マクロ経済学が役に立たないと言われて久しい。その理由の1つは、経済が非線形な事象であると、しっかり認識していないことにある。為替や株、原油価格などの動きを見れば、経済が非線形だということを誰もが理解できる。複雑系の経済学のように非線形問題として経済活動をとらえる試みもあるが、多くは非線形な事象を無理矢理に単純なモデルで説明しようとする。このため、時代とともに経済環境の複雑さが増すにつれて、実社会との乖離が加速度的に進行してきた。

 経済の動向が非線形であるならば、その要素である企業活動も当然、非線形な事象である。

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